色違いの目を僅かに見開いて驚いたように私を見た。それはそうだろう。いつもは出会い頭に互いを罵り合うような間柄なのだから。
ぽとりぽとりとこぼれ落ちる雫が煩わしくて、でも止めることなんて出来そうもなくて覆った掌の指の間から睨み付けた。
気をきかせてさっさとこの場から立ち去りなさいよ。という念を込めるのも忘れずに。
みぎ、ひだり、とゆっくり眼球を動かして周りを確認した後、めんどくさそうに溜め息をついて腕を掴まれずるずると引きずられていく。
しゃくりあげながらも言葉には出来ず相も変わらず私は罵詈雑言を前を歩く奴の背中に吐き続けた。
そして今、私の目の前で奴は困ったように眉を下げていた。いや待て。困っているのは私の方だ。
そっと髪に触れてくる手は思いのほか優しくて勘違いしてしまいそうになるほど。
成る程こいつが女に人気があるのはわかった。しかしだ。それを私にするのはどうなのか。
お陰さまで煩わしい雫なんてものはどこかに吹き飛んだ。
『なに考えてるのよ』
あられもない声をあげ続けて枯れてしまった声で呟くと渋い顔をして横に寝転んでくる。
「仕方がないでしょう」
『何が?』
「女性を慰める術なんて僕はこれしか知りませんから」
あーあ。私は最悪のタイミングでこいつに会っちゃった訳か。脱ぎ捨てて散らばったままの洋服を目の端に止めて浅く息をつく。
『へえ。一応女にカウントしてくれてんだ』
「ギリギリですけどね」
『そりゃどうも』
頬から首筋にかけて滑る掌の温度に若干癒されながら口を開く。
『でも、今日だけはありがとう』
「おや。今日だけで良いんですか?」
意地悪く細められる瞳を苦々しく睨み返しながら今日の不運を嘆いた。