それは有幻覚

『また来たんですか?』
「何度でも来ますよ、恋人同士なんですから」

相変わらず骸さまの妄言は本日も良好なようでどうしたものかと頭を悩ませている。
決して私達は恋人同士などといった間柄ではない。ただの主従関係だ。時にはいき過ぎた行為をしてしまったこともあるが、恋人ではない。
何度も説明した筈なのだが、聞き入れようとはしない骸さまに頭を悩ませている。悩みすぎてそのうち禿げそうだ。

『大体、他の女の人とも関係を持っているんでしょう?だったらその人のところにいけばいいじゃないですか』

人の恋路の邪魔なんてしていないで。あれから彼とは連絡が取れなくなった。ま、あんな場面に出くわしたのなら仕方のないことかもしれないが、せめて私の言い分を聞いて欲しかった。説得力もあったもんじゃないが。

「おや、まだ拗ねているんですか?」

拗ねる拗ねないの話ではない。機嫌をとるようにすり寄ってくる骸さまの何と憎たらしいことよ。身体を離そうとすればすぐに距離を詰められる。一体どうしてしまったんだ、私達の骸さまは。

「僕、気づいたんです。君が他の男のものになると知って胸を掻き乱される感情に」

出来れば一生気づかないで欲しかった。

「君もそんな気持ちだったんでしょう?いえ、口にするのすら辛いのはわかります。例え相手を殺めてしまってもおさまりのつかないこの感情はなかなかどうして、厄介ですよね」
『どんだけ自分に自信があるんですか!』
「でも僕が居なくなって代わりを求めて居たんでしょう?」

ちらりと流し目で見られて言葉に詰まる。確かに骸さまの訃報を受けて私は一度絶望を味わった。今まで生きていく上での指針となるものがなくなったのだ。そのぽっかりと空いた穴の隙間を埋めるように何かを求めていた。それがたまたま身近に居た彼であったということは否定できない。しかし、骸さまに向けていたそれは恋愛感情とかそんなあやふやなものではなくて忠誠心とかもっと……んん?ちょっと自分が何を言いたいのかわからなくなってきたな。落ち着こう。
大人しくなった私に肯定と捉えたのかくすりと笑い髪にくちづけてくる。

「まあ今となってはそんなことどうでもいいんですよ」

いや、よくないだろう。ここで否定しなかったら私はどうなってしまうんだ。ぶるりと身震いをしながら骸さまを見るとにこりと微笑まれた。うん、違いますからね。

「さて。前置きも終わりましたし仲直りしましょうか」

こてんとソファに押し付けられて上に跨がってくる。どうしてこうも急性なんだ。

『あの、』
「ああ、大丈夫ですよ。ちゃんと用意しています」

すっと取り出されたそれに、ああ良かったこれで一安心……ってなるか!いや、とても大事な事だとは思いますがそもそもこの行為こそおかしいわけで…。

「本当に君がどこかの誰かと肌をあわせていると知ったときには気が狂うかと思いましたよ」
『骸さま…』

絞り出すように吐き出された言葉は私を縛りつける。本当に私はこの人を受け入れてもいいんだろうか。骸さまがこういう風に他の女の人にも同じように触れていると思うと……うーん、ちょっと嫌かな。でも拒むなら今ここでないといけないとはわかっている。

しかし私の腕は考えるより先に骸さまに伸びていた。骸さまの頬を両手で包んで唇をくっつけるとちゅちゅと啄むように軽く触れたあとぺろりと唇を舐められた。それを皮切りにはむっと食まれたと思えば唇を割って熱を持った舌が滑り込んでくる。柔らかな舌が絡み合い、呼吸もうまくできなくて逃げようともがいても呆気なく捕まってしまう。歯列をなぞられ息があがりはじめたところでようやく解放された。でも苦しかった筈のそれが離れていくのが少し残念に思えるのはどうしてだろう。

『私、初めてキスしました…』

僅かに目を開いて「あの彼とはしなかったんですか?」と瞬かせている。

『あの日、初デートの予定だったんですが見事に邪魔にあいまして…』

それは良かった、と喉を震わせ嬉しそうに抱き寄せられた。

「一応これでも気は遣っていたんですよ」

だいぶ気遣うポイントが違うと思う。

『どうして今までキスはしなかったんですか?』
「……キスを拒まれたら嫌じゃないですか」

随分と自分本意で乙女な理由を口にして臆面もなく笑える骸さまが本当にもう…。

「…実は僕もキスは初めてでしてね」
『絶対、嘘ですよね?!』

あんなのが初心者に出来るか!
ちゅちゅと会話の間にもキスは続いていく。恥ずかしいやらこそばゆいやら。でも嫌じゃないことは確かだ。
ぼんやりしていると身体をラインを確かめるように撫でられ、もどかしそうに服を剥ぎ取られていく。
初めてではないのにまるで初めて触れられた時のようにドキドキと鼓動が早くなる。
ひとつひとつ丁寧に愛撫されこのまま溶かされてしまいそうで、こんなに大事に扱われたのは初めてだと思えるほど。しっとりと湿り気を帯びてきたそこを指で掻き回されれば静かな部屋に響く水音とすすり泣くように声をあげる自分に聴覚まで犯されているみたいでふらふらと脳の中の酸素がだんだん薄くなっていくみたいだ。
すっかり準備の整ったそこにひたりとあてがわれた質量を増した骸さまのもの。こくりと息を飲むとふっと笑った骸さまの唇がまた近づいてきた。

*

心を通わせて行う行為がこんなにも特別なもののように感じるだなんて思いもしなかった。
下腹部に熱が広がり私の胸にもじわじわ伝わっていくようでとても満ち足りた気持ちになっ………んん?いや、おかしい。胸が熱くなるのはいいだろう。しかし、その前の下腹部に熱が広がるのが解せない。骸さまを見るとぎゅうと腰を掴み深く繋がっているところを執拗にくっつけている。

『あの、骸さま…?』
「…っ……!」
『いやいやお取り込み中申し訳ないんですが、ちょっと離れてください』
「………何ですか?」

少し身体が離れた隙に腰を引くとどろりとした白濁のものが太股を伝いこぽっと小さな泡を作っている。

「……ああ、破れてしまったのかもしれませんねぇ」

いやいや。いやいやいや…これは……

『どう見ても最初からついてなかったように見えるんですが、え?骸さま確かさっきつけてましたよね……?』
「もしかしたらナカにまだ残っているのかもしれません。これは大変だ、早く出さないと」
『えっ、ちょっ…んんっ…!!!や、』

足を大きく開かれ身体を横に押さえつけられた。おい…これは違うだろ!!

『だ、出すのに突っ込んでどうするんですか?バカですか?!っあ…やぁっ…っ』
「おや、ついうっかり」

吐き出したばかりの筈なのに骸さまの骸さまは勢いを取り戻したかのように再び大きく膨らんでいった。

本当にバカですか、骸さま。

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