ざわめく左胸
「ご機嫌ようなまえさん」
『ご、ご機嫌よう、六道くん』
獄寺さんから預かった書類を抱えてボスの部屋へ歩いていると珍しく上機嫌な六道くんとばったり廊下で遭遇した。
朗らかな笑顔を向ける六道くんにひくりと私の口元が引きつる。というのも私は六道くんが苦手だ。いつもいつもいつもいつも(以下エンドレス)事あるごとに突っ掛かってきて無理難題を吹っ掛けるのだ。
「清々しい秋晴れですね。ところで知ってました?乳首って千切れても再生するらしいですよ!貴女の貧弱な胸で試してあげます」
人好きのする良い笑顔でグリッと長い指を捻る動作。
『ひ、ひぃいいいっ!めっ滅相もごさいません』
思わず想像してしまい、痛む筈のない胸を押さえながら六道くんからズサッと後退り距離をとる。しかしずいっと距離を縮められてプラマイゼロ。
「嘘ですよ。ちゃんと優しく弄ってあげますから、ほら出しなさい」
ペタリと胸に張り付いた手にバサリと散乱する書類。
『い、いやぁああああ!』
泣きながらボスの部屋へ走る私に「なまえさんはシャイですねぇ」なんて呟きながら書類を拾う六道くんの姿なんて知るよしもなかった。
(ボ、ボスゥー!)(あれ?どうしたの?)(ろ、六道くんがっ、六道くんが…っ!)(忘れ物ですよ)(ひぃ…!)(おや、気を失ってしまいました)(骸、お前なぁ…)