盗まれたのは、
夕食の食器を洗っている時、そういえば昨日旅行だかなんだかで会社の人に貰ってきたお土産のチョコレートが鞄の中に入れっぱなしだったと思い出して洗い終わった水道の蛇口を捻る。
部屋に戻りバックを開くとひっそりと横たわっている薄いピンク色をした箱。
紅茶を入れて包みと一緒にリビングへ持って行きソファに座る。包装を解くと可愛らしい形のチョコレートが並んでいた。
ひとつ摘まんで口に運ぼうとしていた時に何処から嗅ぎ付けたのか骸が部屋に入ってきた。なまえの手にしているものに目を止めるとにこりと笑いながら隣に腰を下ろす。
「美味しそうですね、僕にもひとつください」
『やだ』
砂糖に群がる蟻のようにベタベタくっついてくる骸を無視して止めていた手を再び動かそうとしたら、自分の意思とは無関係に骸の口に消えていくチョコレート。
『あ、馬鹿!』
「美味しいですね」
くわえたままのなまえの指を美味しそうにペロペロ舐めている。
『せめて普通に食べてよね…』
骸の口から引き抜き唾液でベトベトになった指をティッシュで拭いながら軽く睨むと、ふむと考える素振りをする。
「そうですね、では普通に頂きますね」
そう言いながらゆっくりソファに押し付けられた。
『ちょっと、何すんの!』
にっこり嫌な笑顔を見せながら近づく顔。
「だから、普通に頂くんですよ」
奴の言わんとする事に気付いた時は既に遅かった。欲を孕んだ目が細められ腹を撫でる手がゆるゆると動き出す。それに諦めを含ませた深い溜め息をつき目を閉じた。