お弁当
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だらんと伸ばされた足を踏まないように気をつけながらテーブルまで移動する。
散らばったままだった下着を身につけクッションの上に胡座をかいてふっと肩から力を抜いて息を吐き出した。
偶然が重なって出会ったような彼だったが居心地の良さは健在ですっかりその虜になってしまった私はまたベットに逆戻りしてもいいような気になってしまうから困る。
今日は買い物に行く予定なのに。
気だるい身体を奮い立たせて脱ぎ捨てていた洋服に手を伸ばした。
着替えている間も起きる気配はなく気持ち良さそうに呼吸を繰り返す胸元を眺めているともう一寝入りしたいなぁなんて思ってしまう。眠る直前までドクドクと脈打っていたそれに触れればぴくりと小さな反応をみせた。
「ん、」
『起きてー』
軽く揺すると瞼を震わせてうっすらと持ち上げられた瞳ににっこりと笑って見せると、眠りを中断させられたのが不満なのか眉をしかめてぼんやりとしたまま睨まれた。
「…起こす時は普通にお願いします」
『普通に起こしても起きないくせに』
「………」
ムッと眉間のシワを深くして観念したのかのろのろとベットから身体を起こして伸びをしている。
窓から射しこむ日差しに訝しげに目を細めて、枕元に転がっていた携帯を手繰りよせ時間を確認するとピクリと目の下が小さく痙攣した。
「こんな時間に……どこかへ出かけるんですか?」
携帯から顔をあげたところでようやく着替え終えた私に気づいたみたいでぱちぱちと瞬きを繰り返している。
『スーパーまで買い物に行ってくる。まだここに居る?』
「スーパー?」
自他共に認める不健康不健全な私から聞こえてきた不釣り合いな単語に驚いたのかしきりに首を傾げている。
「何しに行くんです?」
お前がスーパー?(笑)
という副音声が聞こえてきそうではあるが気のせいだと思うことにして、実は、と少しもったいぶって口を開いた。
『明日からお弁当なの』
「お弁当…」
くっ、と堪えきれないとばかりに持ち上げられた口角に少しだけカチンとしたけど、心の広い私は見逃してあげ…
「君が作れるんですか?」
見逃してあげ…
「それと消し炭は食べ物にはカウントされませんから」
見逃してあげ………れなかった!
『あったり前でしょー!最近の冷凍食品は種類も多くておいしいの!!』
そういうと盛大に吹き出して咳き込みながら笑い続ける彼を睨みつけながら鞄から財布と部屋の鍵を取り出してポケットにねじ込んだ。
「クフフフ。僕はもう少し寝ます」
『ん。じゃ、行ってきます』
「行ってらっしゃい」
ずるずると再び布団の中に戻っていく彼が憎らしくも羨ましく思ってしまうのは仕方がないじゃないか。
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