彼とおばけとわたし6
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「ふふ。いいえ諸事情でなまえの元へ行けなかったんです」
苦笑しつつもあの日みたいに優しく頭を撫でられた。そんなお化けを見ていたら目から涙がじわじわ溢れてきた。
『…ふっ…っ』
「泣かないでください」
涙は止まるどころか次から次へ溢れ出してくる。嗚咽交じりに泣く私にお化けは困ったような顔をしつつも背中を擦る手はやっぱり優しい。
ああ、そうかやっと解った。解ってしまった。私はずっと寂しかったんだ。お化けと会わなくなるよりも、骸さんが他の女の人のところへ行くようになった時よりも、もっとずっと前から。
たぶん骸さんと結婚してあの家に来た時からずっとだ。
ひとりであの大きな家で延々と骸さんの帰りを待つのが寂しかった。
年端もいかない子どもではないのだから本当は何処へでも行けたし、何でも出来た。でもそれをしなかったのは自分だ。嘆いて相手にしてくれない骸さんのせいにしてお化けに慰めてもらって自分では何もせず閉じ籠っていただけ。
ただそれだけの事なのにそんな事にも気づかず今まであの家にすがりついて、いつか骸さんが童話の王子様みたいに自分の元に来てくれるだろうなんて淡い期待をしていた。なんてばかなんだろう。
泣き腫らしてぐちゃぐちゃになった顔をハンカチで拭う。
『やっと、決心がついた』
お化けは何をとも聞かずただ「そうですか」とだけ言った。
『やっと自分がどうしたいのかに気がついた。だからもう大丈夫』
そう言って笑ってみせるとちょっと驚いたようだ。
「寂しくなりますねえ」
『うん』
「私も置いていってしまうんですね…」
『うん。今までありがとう』
不安もあるけどもう大丈夫。
気づいた私はどうとでも変われる。
お化けに別れを告げて私は会場を後にした。
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