瞼:憧憬*

※塾講師と生徒


困った顔をした先生の上にのそりと覆い被さってぎっと睨んでいると、お尻の辺りに伸びてきた手をばちんと叩いた。好きでこんな態勢でいる訳じゃない。ひとりじゃ動けないからだ。

『何か弁解することはありますか?』
「ありません」

*

会う約束をしていた訳ではないけど、昨日はずっと先生の帰りを待っていた。
仕事に行った先生と入れ違いになったみたいで、夕方くらいに先生の部屋にいることを伝えるメールを送ってテレビや雑誌を見ながら時間を潰していた。でもいくら待っても返事は来ないし、いつも帰ってくる筈の時間になっても戻ってくる気配がない。会議か打合せが長引いてるのか、先生同士でご飯でも食べに行ってるのか。もしかして、事故に巻き込まれた、とか?いいようのない不安に駆られてメールをもう一度送ってみたけどやっぱり返事は返ってこない。どうしよう。

テレビをみていても集中できずそわそわと落ち着きなく合間に携帯の画面を何度もタッチしても一向に返事は来ない。
待ちくたびれてソファーの上でウトウトしていると、がたんと玄関から物音が聞こえた。帰ってきたんだと思って玄関に行くとふらふらに酔っぱらった先生が靴を脱いでいた。良かった、事故とかじゃなくて。先生、と背中に向かって声をかけるとゆっくり振り向いた。

「なまえじゃないですか!」

大きな声でにこにこと笑いながら抱き締められた。

『お酒くさい。ご飯食べに行ったんですか?』
「んー、可愛いですね」

ぐりぐりと頬ずりをされてされるがまま先生のシャツをぎゅ、と握りしめた。会話が成り立ってないってことはかなり呑んでいるのかな?
とりあえずベットに連れていって、お水を出して…と頭の中でやることを組み立てているとするりとお尻を撫でられた。

『え?あっ、』
「どうしてこんなところになまえがいるんでしょう?」
『あの、先生をずっと待ってて…って、え?あれ?』

ぐにぐにと別の意思を持って触れてくる手を慌てて引き剥がそうとしても場所を変えてすりすりと触ってくる。

『やっ、ここ、玄関ですっ!』
「そうですねー。困っちゃいますねえ」

言葉とは裏腹に全然困ってなさそうに、むしろどこか楽しそうに触り始めた。いやいやと首を振っても逆効果のようで遂には廊下に組み敷かれてしまった。

『んっ、あっ、やぁ…!』
「いやらしいですねー」
『や、やだっ、せんせ、…っ!』

慌てて離れようとしてはみたけど、お酒が入っているせいか先生の抱きつく力が強くてびくともしない。

「そんなに興奮して、いけない子ですね」
『…んっ』
「寂しかったんでしょう?僕が居なくて」
『違っ…あっ…やぁ!』
「わざわざ僕に抱かれに来たのに?」

くつくつと可笑しそうに笑う先生にカッと頭に血がのぼる。会いたくて来たのに、そんな風に言われると否定も出来ないでいる自分がいてぐるぐるとお腹のなかも熱くなった。

『か、える…』
「もう遅いですし危ないですよ。明日送りますから今日は泊まりなさい」

ちゅと瞼に落とされたキスはいつもみたいに優しいのに、でも今日の先生の口からはアルコールの香りがしてまるで知らない男の人のように見えた。

『やだ、』
「なまえ、」
『せんせい、やだ…』
「………」

じっと見ていた先生がこくりと喉を鳴らして深くくちづけてきた。どうしよう。このままここで済ませるつもりだ。

『ね、先生。玄関じゃ痛いからベッドにいきましょう?』

そう言っている間にもどんどん行為は進んでいく。ぐしゃぐしゃになった洋服は脱ぎ捨てられて廊下に丸めて置かれていく。ああ、本気だ。先生は本気でここでするつもりなんだ。
ずりずりと後退りして逃げようとしたけど、すぐに先生の腕の中に連れ戻されてしまう。

「どうして逃げようとするんですか?」

落ち着いた口調とは裏腹に目はギラギラとした光を宿し逃さまいと押さえつけてくる。
痛いからってさっき言ったのに全然聞いてない。悔しくてポロポロ涙が零れてくるとそっと親指の腹で撫でて拭われた。
それにやっと先生も落ち着いてくれたんだ、とほっと胸を撫で下ろしてぐずぐす鼻を鳴らしながら笑おうとしたところでぴしりと顔が強張る。下半身にぷつりと指が挿し入れられた感覚がして反射的に足を閉じようとした。でも先生の身体が邪魔をして閉じれない…というより先生の方から丸見えになってる……ええ?いつの間に?!

『やだ…!先生、本当にやぁっ…!』

いやって言ってるのに先生はやめてくれなくて、というより指の本数を増やしてきて動きが激しくなっていく。だめです、先生。ほんとうに、もう…。先生の腕にしがみついていっぱい声をあげて、早くここから逃げないといけない、というのと気持ちいいのが交互に頭の中に浮かんできて、でもどんどん気持ちいい方に傾いていってる気がする。指の腹でぷっくりと主張を始めていた突起を強く押されてあっけなく私は達してしまった。ああ、こんな筈じゃあなかったのに。でもようやく終わった。これで解放される。
肩で息をながら先生を見るとのそりと不審な動きをしていた。ズボンから取り出した先生の先端を入り口に擦り付けている。刺激されると物足りなさからむずむずと奥深くが疼きそうになった。でも、

『先生、ベッドに…』
「そうですね、とりあえず僕も気持ちよくしてもらってから移動しましょうね」

にこりと笑ってずぷりと容赦なく入ってきた先生のに『ひゃあ!』なんて間の抜けた声をあげてはしたく喜んでしまう自分の身体を恨めしく思った。



前へ次へ
戻る
ALICE+