額:祝福、友情
祝福なんていらない。
シャンデリアのまばゆい光にいっそのことこのままのみ込まれて消えてしまえればいいのにと思ってしまう。綺麗なドレスに上品なネックレス、いつもより少しヒールの高いパンプスを身に纏った私は隣にいる男の人に肩を抱かれて笑顔を張りつけ絶望のまま立ち尽くしていた。望んでこんな場所にいる訳ではない。
本当はこんなよく知らない人と一緒になんてなりたくなかった。みんなは私のためにパパが一生懸命探してくれた素敵な人だっていうけれど、ちっとも嬉しくない。だって私はあの人の事が…。
シャンデリアの光を一身に受けてこの日の為にと仕立てられたきらきらと輝く指輪が左手の薬指をちぎり落ちてしまうんじゃないかというくらいずしりと重くのしかかってくる。
自分の想いを伝えることも出来ずに私の恋が終わっていく。パパも薄々気づいていたんでしょう?私があの人のことを好きだってこと。でもそれは口にしてはいけないってことくらい私だってわかっている。わかっていたから今まで胸の奥の奥の方に閉じ込めて時折見せる彼の気まぐれな優しさに絆されて綻んでしまわないように厳重に気をつけていた。それなのにこの仕打ち。泣きたい。このままメイクが崩れるのも気にせず子どもみたいに大きな声をあげて泣き叫びたい。
そんな私の気も知らず周りの人達は口々に祝いの言葉と笑顔を贈ってくる。やめて。聞きたくない。そして優しくて残酷なあの人も祝福の言葉を私に向かって放つ。ああ、心臓が痛い。このまま止まってしまえばいいのに。そんな往生際の悪い馬鹿なことを考えている私を嘲笑うかのように彼はゆるりと笑って私の額にくちづけた。違うの。本当はそんなところに欲しくないの。声に出せないまま私は彼からの祝福のキスを受け入れた。
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