頬:親愛、厚意、満足感

本当にお前は最後まで一人前になれませんでしたね。今までの弟子の中には問題児もいましたが、まさかそれ以前の問題だったとは…。お前は術師には向いていません。諦めなさい。努力と意欲だけでは埋められないものもこの世にはあります。それと残念ながらこういった場合はワセリンごときじゃ止血の意味をなしません。でも以前言っていたことをちゃんと覚えていたんですね、いいこです。お前が鼻血を出した時にでも使いなさい。ほう、胸を揉めと?…一生懸命考えたんでしょうが、僕の息子を元気にしてどうするんですか。いえ、離せとは言っていません。手はこのままで……温かいですね。ああ、それにしても今回はしくじりましたねえ。まさかこうなるとは…。まあ、いいでしょう。いいですか、これからお前は一度アジトに戻って用意していた荷物を持ってボンゴレに行きなさい。そうです、以前お前がワイドショーに感化されて用意していた防災グッズの詰まった鞄のことです。それから後のことはクロームに任せなさい。僕の方からもクロームに今後のことを伝えておきます。それから……いえ、いいです。お前の要領の少ない頭では到底覚えられないでしょうから。とにかくお前は荷物を持ってボンゴレに行く。わかりましたね?全く返事だけはいいんですから。さて、そろそろここにいるのも限界でしょう。お前は先に行きなさい。クハハ、愚かにも僕の心配をしているんですか?僕を誰だと思っているんですか。六道骸ですよ?自分の身くらい自分で守れます。むしろお前がいては足手まといです。ボンゴレに僕のことを聞かれたら野垂れ死んだとでも伝えなさい。その血の量を見ればボンゴレも納得するでしょうから。僕は暫く身を隠して自由にやります。わかりましたね、では先程から流れているその煩わしい涙と鼻水をポケットに入れているハンカチで拭ってここから出ていきなさい。来たときと同じルートを使えば見つからないでしょう。

頬にくちづけると驚いたように目を丸くさせた。それにクスリと笑うとぱちぱちと瞬きを繰り返している。

「さあ、行きなさい」

こくりと頷いてポケットからハンカチを取り出し下品な音を立てて鼻をかんで立ち上がった。数歩歩くごとに気遣わしげに何度かこちらを振り返ったが早く行けと促すとのろのろと走り出した。
しかし逃走ひとつまともに出来ないとは…。こうも使えないとは本当に誤算だった。
ひとまず憂いのひとつは解消したことで動きやすくなった。
荒々しく近づいてくる足音に三又槍を握り直しこれからここへ踏み込んで来るであろう連中と対峙すべく力の入りずらくなった身体を起こして立ち上がった。

前へ次へ
戻る
ALICE+