かき氷

先端に小さなスプーンが付いている専用のストローで、目の前にそびえ立つ綺麗なみどり色で色づけされた氷山に突き刺す。ザクザクと音を立て崩れながらシロップと一体化していく氷の塊をすくいあげて目の前で座る人物をじろりと睨む。

『で、六道くん。何か弁解は?』

頬杖をついて貼り紙を眺めていた六道はその中のひとつを指差してにっこり笑う。

「ここもんじゃもやってるみたいですよ。君も食べます?」
『うん!もんじゃ大好き!!』

反射的にあふれてくる涎を拭いながらかき氷を一口頬張る。んー!冷たくて幸せ!!定番のイチゴと魅惑のブルーハワイに目を奪われつつ、いつも選ぶのとは違うメロン味を頼んだのはちょっとした気持ちの変化だ。
二口目を食べようと視線を発泡スチロールのカップに落とした所でハッと気づいた。

『今もんじゃで誤魔化そうとしたでしょ?』
「おや気づきましたか」

クフフと愉快そうに笑って駄菓子屋のおばちゃんに声をかけている。

『あ、こら!ちゃんと質問に答えてよ』
「はいはい。で、何でしたっけ?」
『だからお祭りの時の…』

ごにょごにょ語尾を濁すと ああ、と途端につまらなそうな顔をしてメニュー表とは名ばかりの油まみれの紙切れを広げて眺めはじめた。

「あの時は仕方なかったんです。もう君に会えなくなると思ってたんですから」
『そんなので納得出来る訳ないでしょ!』

バンッとテーブルを叩くと「他のお客さんのご迷惑になるでしょう」という冷静な六道の言葉に思わずごめんと謝りそうになった。が、何か違うと思い直してもう一度バンッとテーブルを叩いて身を乗り出した。

『なんで私が謝んなきゃいけないの!謝るのは六道の方でしょ』
「どうして?」
『どうしてって…自分が何したか覚えてないの?!信じらんない』

ガタンと荒々しく椅子に座ると「女性なんですからもっと静かに座りなさい」とか注意してくる。
『こっちはあれから変な夢はみるし…』
「夢?」

興味を惹かれたのかメニュー表から視線を外してじっと見つめられた。

『10年いか焼きが食べれなくなっちゃう夢!』
「へぇ…」
『六道が居なくなっていか焼きを買って貰えなかった可哀想な私が延々と六道のいか焼きを待ってるっていうまるでロミオとジュリエットみたいな悲劇。引き裂かれた私といか焼き!10年の歳月を経て再開を果たすのか…?!待て次号!!みたいな夢だったよ』
「そうですね、シェイクスピアもまさか死後いか焼きの例えにされるなんて夢にも思わなかったでしょうね。まさに喜劇を通り越した悲劇ですね」

溶けかけたかき氷をかき回しながら再び口に運ぼうとしたら「それで?」という無粋な六道の声に邪魔された。いか焼きだけでなくかき氷との仲も引き裂くつもりか。

『なによ?』
「その続きは?」
『へ?』
「あるでしょう。その話の続きが」
『そ、れは…』

その後、六道に連れられた私は六道と…。思い出して、かぁああっと頬に熱が集まっていく。いやいや恥ずかしがってる場合じゃない。大体夢だし。にやにや笑っている六道に気づいて首を捻っているととんでもないことを言い出した。

「その夢、僕も見ましたよ」
『はぁ?!』
「僕ととても楽しいことをする夢でしたよねえ?」
『し、知らない!』

おおお落ち着け。大丈夫、夢なんだから。六道だって適当なこと言って私の反応をみて楽しんでるだけなんだから。

「やっぱり君は可愛いですね」
『なっ…!』

ポロリとストローが手から滑り落ちた。

顔が熱く火照っていくのは熱された鉄板のせいだ。



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