『骸さん!』
背後から呼ばれ条件反射でピクリと肩が跳ねる。
『はい、バレンタインのチョコです』
はにかみながら差し出されたのは綺麗にラッピングされた小さな包み。
「あ、ありがとうございます」
なんだ今日は普通の用件だったのかと安堵の息をつく。
『これ私の好きなチョコなんですよ』
包みを開けるとキノコ○山の文字。
「懐かしいですね、日本に居たとき食べた事ありますよ」
『おいしいですよね』
ニコニコ笑いながら相槌をうつ。
「ありがとうございます、後で頂きますね」
『(ニコニコニコ)』
「…あの、まだ何か?」
一向に去る様子のないなまえに不思議に思い問うと驚いたように目を丸くしている。
『え?骸さん言わないんですか?』
「何をですか?」
礼の言葉なら先程述べた筈だが、まだ何か足りなかったのかと首を捻る。しかし思い浮かばない。
「…あの、すみません。分かりません」
するとなまえは骸の声色を真似てノリノリで話始めた。
『クフフどうですついでに僕の幻のビックキノコも味見してみませんか?一舐で輪廻転生しまくりですよ、クッハハハ…とか言わないんですか?』
「誰が言うか!貴女は僕を何だと思ってるんですか」
『え、本当に言わないんですか?…嘘ですよね?』
みるみる悲しそうに目に涙を浮かべていく。
「そんな泣きそうな顔をしないでください」
宥めるように頭を撫でる。が、イヤイヤと首を振りぐずる。
『だって…骸さんが言ってくれるって信じてたのに…』
「諦めなさい」
『……じゃあ勝手に頂きますね』
先程までの悲しそうな顔とは打って変わってにこりと笑い骸のベルトへと手をかけた。
「嘘泣きだったんですか?!…止めなさい!」
慌てて引き剥がそうとするが僅かになまえがベルトを外し取り出すのが早かった。
『…んっ、…おいひぃれふ』
「……ッ……!」
骸は口を抑え声が出ないように押し殺すのに必死だった。
ハッピーバレンタイン!
(なにがハッピーバレンタインですか!ふざけるな!)(まぁまぁ落ち着いてください)(納得出来ません)