※標的354ネタバレ
うふふと機嫌よく笑いながら雑誌にハサミをいれていくなまえにペンを持つ手を止める。
「何か良いことでもあったんですか?」
『よくぞ聞いてくれました!』
にまぁと頬をだらしなく弛緩させてハサミを動かす手を早める。日本人は手先が器用だと聞いていたが驚いたことになまえも例外ではなかったらしくチョキチョキとリズムよく動かされていく指。その様子をぼんやりとみつめていたら『出来た!』という雄叫びを発してテーブルにやや乱暴気味に置かれたハサミがガチャンと悲鳴をあげた。
『見てくださいよ、これ!』
じゃん!と効果音つきで前に掲げられたのはいつ撮ったのかも忘れてしまうくらい遠い昔の自分が写っていた。
「だから毎回毎回どこから手に入れてくるんですか」
『極秘ルートです。そんなことより見てくださいよ、この骸さん!!キリっとしてもわもわしててカッコいい!』
果たして個人情報流出問題をそんなこと呼ばわりされてもいいものか。悩める頭に更に追い討ちをかけるようになまえの声が続く。
『この時の骸さんに会っていたらもう毎日つけ回してデートに誘うのに、もったいなーい』
「…嘘つき」
『え?』
「何でもありません」
そうですか?と一瞬首を傾げたが、それ以上気に止めることもなく音もなくすすすすっと近づいてきて、と言うわけでと前置きをして口元をゆるく上げた。
『デートしに行きましょうよ。ナミモリーヌの新作チョコレートケーキが絶品らしいですよ』
「それはそれは。この書類が終わったらいいですよ」
『やったぁ!』
嬉しそうに笑った後、切ったばかりの紙切れに唇を押しつけるなまえの姿に目を丸くする。悪い気はしないが…
「そういうのは本人のいないところでやりなさい」
『思わず唇を吸い寄せられたんです』
「…だったら本人がいるんだから僕にしなさい」
『いいんですか?でもキスだけじゃ済まなくなっちゃうかも』
にやりと下卑た笑いを浮かべるなまえにやれやれと肩をすくめた。
「それこそ今更ですよ。もう慣れました」
『青天の霹靂ですね』
「どういう意味です?」
それには答えようとせず更に距離を縮めてきたなまえを引き寄せれば難なくすっぽりとおさまった。にこりと笑いながら唇が近づいてくる。
「あの頃の君もこんなに素直だったら良かったんですけどねえ…」
『?』
名残惜しそうに唇を離して覗いてくる瞳に「なんでもありません」と言うと分かっているのいないのか『ふぅん』と呟いてゆるく首に腕が廻された。