校門の前に立ってじっと相手が出てくるのを待つ。
うちの近所ではあんまりいないタイプの人達が私の前を通り過ぎていく。
校区が違うとこうも人種まで違うのか。じろじろと物珍しそうに向けられる視線に急に心細くなって地面に視線を落とす。今までこんな風に一人で行動することなんてなかった。遠くに行くときはいつだって正ちゃんと一緒に手を繋いで歩いてきたのに。
私は何にも不安になることなくずっと手を引かれるがまま正ちゃんの後をついていくだけだった。
でもその正ちゃんも今はいない。
ひとりでどうにかしないといけないのだ。
でもやっぱり知らない人達の中でひとりぼっちでいるのはつらい。早まったかなあ、と弱気になっている自分に気づいて慌てて首をふる。だめだめ。ここまで来たんだから。
猫背気味になる背中をしゃんと伸ばして目的の人物が出てくるのを待った。
*
「どうしたんですか、こんなところに君が来るなんて」
聞きなれた声が聞こえてきた。その声の方を向くと、あの男の子が戸惑ったような顔をして立っていた。人生初のカツアゲ体験中だった私は目の前に立っていた人を押し退けて颯爽と待ち人の前に出た!
ううん、正確には出ようとした。けど出れなかった。それは押し退けるどころか相手がビクともしなかったからだ。
仕方なく人の隙間からひょこひょこ顔を覗かせて男の子に向かって叫んだ。
『正ちゃんを返して!』
「…また入江正一ですか?」
呆れたようにため息をついた後、ところで、と表情を鋭くして睨まれた。どんなに怖い顔したって負けないんだから!
ぎろりと男の子を睨み返すと男の子の視線は私の遥か上を見ていた。
「貴方達は何をしてるんです?」
男の子の声にカツアゲ犯が一瞬怯んだような気がした。その隙に腕を振り払って男の子の影に隠れる。別に敵に寝返った訳じゃない。これは戦略なのよ。この男の子と対決するためにもまずはこのカツアゲ犯をどうにかしないといけないから。だから決してカツアゲ犯が怖くて男の子の影に逃げたとかそんなんじゃない。
男の子の背からそっとカツアゲ犯を覗くとたじろいだように仲間内でぼそぼそと小声で話している。
視線はカツアゲ犯の方へと向けたままゆっくりと頭を撫でられた。
「このまま立ち去るのなら今回は見逃してあげます。次は無いと思え」
いつもより低めの声でそう言うとカツアゲ犯達はバタバタと走り去っていった。
「大丈夫でしたか?」
『もうなんであんなにしつこいの?!もう!もう!!』
悔しくてぎゅうと男の子の背中を抱き締めると擽ったそうに肩を竦める。
それから振り向いてそっと私の腰の辺りに手を落ち着けた。
「もっと早く気づいていれば良かったですね。すみません怖い思いをさせて」
頬を撫でられ申し訳なさそうな顔で謝られ「何か食べに行きますか?」と言われて頷きかけたところで我に返った。こんなことをしに来たんじゃなかった。
『正ちゃんが…』
「入江正一がどうかしたんですか?」
『正ちゃんがいないの。おばさん達は部活で泊まり込みしてるんだろうって言うんだけど違うの。全然連絡がとれないの』
「それでわざわざ僕のところに?」
『何か知ってるんじゃないかと思って…』
ふむ、と考える素振りをしたが首を横に振る。
「残念ですが僕には分かりません」
『そっか…』
しゅんと項垂れていると「何か分かったら連絡します」と言って携帯の番号を教えてくれた。
待ってて正ちゃん。絶対助けるから!