流される骸18

初めて彼を見たとき私の中で何かが弾けた。それはもう鬱蒼と茂る草が半袖の腕にちくちく刺さるのなんて気にならないくらい突然に。


最近こっそりとどこかへ出掛けて行くことの多くなった正ちゃん。どこに行ってるのかいくら問い詰めてもはぐらかしてばっかりでちゃんと教えてくれない。
これは浮気してるんじゃないか、と勘繰ってしまうのは仕方ないじゃない。
だからその日もコソコソ出掛けて行く正ちゃんの後をつけることにした。

でも正ちゃんが辿り着いた先はデートなんてものとは無縁なボロボロの廃墟だった。
昼間だというのにどこか薄暗くて虫とか蛇とか、お、お化けとか出そうな雰囲気に入るのを躊躇したけど、どんどん奥に進んで小さくなっていく正ちゃんの姿に慌てて着いていった。

こんなところに一体どんな用事があるんだろう。
不思議に思いながら様子を窺っているとあるひとつの部屋の前で正ちゃんは立ち止まった。ためらいがちにノックをして相手が出て来るのを待っているみたいだ。こんなところで逢い引き?疑惑がどんどん膨らんで自然と顔も強張っていく。暫くしてドアがそっと開いた。浮気相手の顔を拝んでやろうと身を乗り出していると中から出てきたのは今まで見たこともないくらい綺麗な男の子だった。

その時だ。

私の中で何かが弾けた。

弾けるなんて可愛いものなんかじゃない、大爆発だった。今まで私を築いてきたもの全てを吹き飛ばして、その平地に彼はドーンと居座った。

長年幼なじみで許嫁の正ちゃんと一緒に居たというのにその男の子から目が離せなかった。

それから私はその男の子のことを夢中で調べた。


まるで童話にでも出てくる囚われのお姫さまみたいな境遇に、王子さま役立候補の私が助けないわけにはいかない。本気でそう思っていたし、実行しようとした。
私の熱くたぎる決意を伝えると正ちゃんの顔がひきつったような気がしたけど、大丈夫いつだってお姫さまは王子さまのキスで目覚めたり呪いが解けたりするものだし上手くいく。
なんの根拠もないその自信だけを大事に抱えて私は行動を起こした。

ごめんなさい正ちゃん。正ちゃんのお嫁さんになれなくなっちゃった。

そう言うと正ちゃんは優しいから「それは全然問題ないんだけど、」と素っ気ない返事が返ってきた。多分、私が気にしないように掛けてくれた最後の気遣いだっ「いやホントに全然大丈夫だし」気遣いだったに違いない。
そして私はその正ちゃんの優しさや気遣いに甘んじて最後のお願いをしてみることにした。

すごく嫌がったけど、一生懸命誠意を持って説得したら渋々だったけど協力するって言ってくれた。やっぱり正ちゃんはいつだって私の味方だ。私だって正ちゃんの大事にしていたレコードやアイドルのポスターなんか破きたくなかったから引き受けるって言ってくれた時はすごく助かった。


*

「採用」

正ちゃんの知り合いの偉い人の前で志望動機をスピーチしたら肩を震わせてすごく感激してくれた。






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