ああなんでどうして私はいつもこうなんだ。泣きじゃくっていた私を手際よく洗濯物と共に回収した骸はこれまた手際よく自宅まで連れ帰ってあれよあれよという間に服を脱がされめでたくベットイン。まあとってもスマート。こんなスマートな展開スマートフォンも真っ青だね。なんて言ってる場合じゃない。久々に感じる骸の匂いとか体温とかアレの具合とか懐かしくてそりゃもう燃え上がったよ。気持ち良かったよ。蕩けそうだったよ。でもね、いったんコトが終わってしまったらもう気まずいのなんのって。今だって怖くて目が開けれない。ど、どうしよう…!身動きどころかまばたきすら躊躇われるこの空間で、じっと直立不動で寝転んでいると前髪をそっとかき分ける長い指の感触が額に触れた。くすぐったくて思わず瞼を少しだけあげると優しく微笑んでいる骸の顔があった。その顔は大好きだったけどやっぱり気まずくてまともに見れなくて目を反らしてしまう。
「お腹空いてませんか?」
『あ、うん。少しだけ…』
だからばかぁあああ!何が少しだけだ。がっつり飢えてるだろうが!昨日の夜チーちく食べてビール飲んだたけだからそりゃ腹も減りますわ!運動した後だしな!!って違う、そっちじゃなくて。「なにか作って来ます」と言い残し部屋を出ていった骸を薄目で確認してからベットから飛び起きた。
とにかく帰ろう。お家に帰ろう。このままここに居たら流されてうやむやになってまた元の木阿弥だ。ちゃんと自分の事は自分で出来るようになったよって骸に胸を張って会えるように……頑張ってたんだけどなぁ。初っぱなから出鼻は挫かれたけど。流されまくりだけど。今のままじゃまだ自信を持って骸の前に出ることができないや。部屋の隅に置き去りにされていた洗濯物を掴んでそっと廊下に出た。
いつも料理をしている時はキッチンから出てくることはないから物音を立てないように慎重に玄関へ向かう。食欲をくすぐるいい匂いが部屋中に溢れていた。またいつかここに戻って来たいなぁなんて淡い期待を膨らませつつ、サンダルに右足を滑らせたところで背後から凍えるような声が投げかけられた。
「どこに行くんです?」
うん。振り返りたくない。早くサンダルを履いてこのドアを開いて帰らなきゃいけないのに身体が動かない。スタスタと近づいてくる足音にいちいち反応している自分が嫌だ。
「お腹空いているんでしょう?」
『…ちょっと急用が入って、食べれなくなっちゃった』
とっさに口をついて出た嘘。出任せの割にこれ意外といけんじゃないの?
「急用ねぇ…。ちなみに君の携帯はずっと僕のポケットの中にありましたが、そんな連絡は入って来ませんでしたよ」
『なっ、いつの間に…!』
慌てて上着のポケットを探ってみると、いつもある固いプラスティックの塊がない。
『返してよ!』
振り返ると包丁を片手に立っている骸がいた。包丁の刃がギラリと反射して顔を照らす。なんというか笑顔なのが逆に怖い。ええい、今は包丁なんか問題じゃない。それより何より重要なのは骸のポケットに納まっているらしい私の真っ赤な携帯だ。
『………も、ももももしかして携帯の中みた?』
胸ポケットの辺りをちらちら気にしながら骸の顔色を窺うとにっこり満面の笑みを浮かべている。
「相変わらず君は僕を好きなことはわかりましたよ」
『なんで見るの!プライバシーの侵害だよ』
「、そんなことより」
そんなこと?!私のプライバシーは骸にとってそんなことなの?信じらんない。しばらく離れている間に随分冷たい人間になって。あの優しかった骸はどこに行ったの?
「ご飯、もうすぐ出来ますよ。食べないんですか?」
特別に君の好きな国旗でもつけましょうか?なんて言うもんだから私の貪欲な胃袋が小さく呻いた。本当にもう信じらんない。