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骸さん、と戸惑いを含んだ瞳に見つめられる。

気がつけば数ヶ月ほど音信不通だった彼女が、あの別れた日と同じように何食わぬ顔をして今日僕の前に現れた。
驚いた。嬉しさと同時にこの数ヶ月間の不在などまるでなかったかのように接してくる彼女がはっきり言えば不満でしかない。
どうして連絡が取れなかったのかを聞けば『精神修行中だったので』という不可解な返答が返されただけでそれに詳細が加わることはなかった。

それからいつも通り彼女に食事を振る舞った後、お互いの近況報告をしていたがそれもすぐに尽きて会話が途切れた。
元より共有する話題がない僕達だから仕方がないのかもしれない。
それに彼女も気まずく思ったのか時計を気にしながら、グラスを忙しなく口に運んでいる。
そのグラスの中身もなくなったところで『そろそろ…』とバックを手にして席を立とうとした。
咄嗟に手を掴んで引き寄せると驚いたように顔をあげて固まっている。

『あ、あの、』
「もう少しゆっくりしていってもいいじゃないですか」
『でも…』

視線を落とした彼女の腰に腕を回すと大袈裟に肩が跳ねた。

『…こんなの友達にしないです』

やんわりと腕から逃れようとしていたが、力を込めれば戸惑ったように見上げてくる瞳。


『どうして?』

どうして、はこちらのセリフだ。
どうして電話に出なかった。どうしてメールを返さなかった。どうして連絡が取れなくなった。どうして今まで会いに来なかった。どうして、どうして、どうして。たくさんのどうしてが僕の中にたまっていって今日彼女が玄関にいるのを見つけたとき爆発してしまった。

「僕は一度も君のことを友達だなんて思ったことありません」

そう言うと強張っていた彼女の身体から力が抜けて悲しそうに顔を歪めた。




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