骸さんの言葉がどこか遠くで通り過ぎていく。ひとつひとつの唇の動き、手の動き、瞬きでさえ全てスローモーションのようにはっきりと目に写しているのに反応が出来ない。自分の身体が自分のものではないみたいに鈍くなってゆく。
ゆっくり骸さんに腕を掴まれてソファに倒され仰向けに寝転がるとアイボリーのクロスが張られた天井が見えた。
覗きこんでくる骸さんの顔はやっぱり綺麗で細められた瞳に吸い込まれてしまいそうだ。
『や、です…』
震えながら口をついて出た言葉に近づいていた骸さんの顔が止まって、怪訝そうに眉をひそめる。
『骸さんとこういう関係になるのは嫌なんです』
胸板を押し返して身体を起こそうとしたけどびくともしなくて、それどころかより強く掴まれた。
「…僕では駄目ですか?」
悲しげに下げられた眉に首をふる。
『ごめんなさい。お友達のままでいたかった』
しばらく沈黙が続いてそれからそっと身体が離れていく。
ふ、と短く息を吐いた後、私が身体を起こすのを手伝ってくれた。
「怖がらせてしまってすみません」
『いえ、』
「…どうやら僕の勘違いだったみたいですね」
『え?』
乱れてしまった髪を直してもらいながらぽつりともらされた言葉に顔をあげると困ったように肩をすくめている。
「君が僕のことをそういう目で見ていた事が何度かあったと思っていたんですが、」
ドキリと心臓が跳ねる。だって、それは…。
「だからてっきり君も同じ気持ちだと。まあ今となってはただの自惚れだったみたいですが」
自嘲気味に笑う骸さんにお腹の中にずっと押し殺していたものが膨らんでいく。
『だって、連絡くれなかったじゃないですか』
気づけばそんな風に口を滑らせていた。