ソファに悠然と座り煙草をふかしているなまえ。
その様子を「煙が嫌なので吸わないでください」とも言えず遠巻きに眺めているしか出来なかった。
僕がヘタレなんかじゃないんです。煙草を吸う人の人権を尊重した結果なんです。決してなまえが怖いとかじゃありませんからね。
仕方なく椅子を持ってきてなるべく距離を取って窓際で本を読んでいると突然目の前から本が消えた。
「え、」
顔をあげると目の前になまえが立っていた。
なまえの手には今まで僕が読んでいた筈の本が握られている。
「…なんですか?」
恐る恐る聞くと、なまえの手にある本がぽーんと孤を描いて遥か遠くドアのところまで投げられた。
唖然とその様子を見ていたがはっとなまえの存在を思い出し視線を彼女に戻す。
「あの、僕何かしましたか?」
怖々と口を開くと今度は髪をわし掴みされて無理矢理上を向かされる。
「い゛…っ…」
小さくぶちぶちと嫌な音を立て犠牲になった可哀想な僕の髪の毛達。
痛みに泣きそうになりながらなまえを見ていると段々顔が近づいてくるではないか。頭突きか。理不尽な暴力に耐えるべくぎゅと目を閉じると予想に反して柔らかい感触が僕を襲った。
「、……んぅ…」
くちゅくちゅと音を立てて蹂躙される僕の口内。
犯される。
僕の口が犯されている。
なまえの腕をぎゅうと掴み耐えているとようやく解放された。
「はっ、なんで…?」
未だ整わない呼吸に口から酸素を取り込みそう呟くと聞こえていたらしい。
『骸が物欲しそうな顔して本なんか読んでたからでしょ』
にやにやと笑いながら部屋から出ていった。
タバコ味の余韻が残る口元に手を当ててなまえが消えていったドアを見つめていた。