真っ赤なパッケージに合格の文字。
いつ始まったのかもはや思い出せないくらいすっかり定着しているこの時期限定の合格お菓子。
今日も私は棚の中からひとつ手に取り、レジへと向かう。
財布を開くと「あんたの将来の為の貯金」というなんとも疑わしい名目で7割方お母さんに搾取されたお年玉は随分寂しくなってきたが私の財布と心をほんの少し潤してくれるほどには残っている。
いつもより少しだけ多い財布の残高に満足し、小銭を取り出して会計を済ませてやる気のない店員の声を背中で受けながら外へ出ると、びゅうっと辛い現実に引き戻すかのように風がひと吹きした。
『いやぁ、今年はこんなに毎日食べてるんだからもう合格してるような気がする』
「何を馬鹿なことを」
いつの間にか隣にいた六道が呆れたように声をかけてきたがいつもの事だ。気になる筈もない。
「買い食いもいいですけど、ちゃんと合格してくださいよ」
『大丈夫、毎日足しげく通って私のお年玉とお小遣いを費やしてるんだから受かるに決まってるでしょ!』
「全く…受かってもらわないと困ります。君が居ないなら僕だって高校なんか行くつもりなんてないんですよ」
『なにそれ。』
「言葉のままの意味ですよ」
私が行くから行くってどうなの?でもみんなそんな感じだからあまり六道を責める気にもならない。私だって将来のことなんてまだまだ考えられないし特にやりたいこともないから近場の高校に行くのが当たり前みたいに思っていたけど、六道は違うのかな?私が行かないって言ったら本当に行かないのかな。それとも他にやりたい事とかあるのかも。だったら私なんか気にせずやりたい事を優先してほしい。人の人生を左右するなんて大それた事、とは考えすぎなのかもしれないけどでも六道に無理させるのは嫌だよ。
「どうしたんですか、君らしくもなく考え込んだ難しい顔をして」
『失礼だな。私だって考えることくらいあるよ』
そうですか、とさして興味もなさそうな六道を尻目に赤色の箱を開ける。中から現れた銀色のアルミ箔の割れ目に沿ってそっと爪をたて、少し力を加えればとパキッと小気味いい音がして真っぷたつに割れた。そのまま片方を六道に差し出す。
『はい』
「くれるんですか?」
目を丸くしてチョコと私を交互に見ている。
『いつも奢ってもらってるしね。たまにはお返ししないと。チョコ大丈夫だったよね?』
「ええ。ありがとうございます」
『それに同じところ受けるなら一緒に受かりたいじゃん!』
「…僕と一緒に高校へ行きたいんですか?」
『どうせなら知ってる人が一人でも多い方がいいでしょ!』
にっこり笑ってみせると力なく項垂れた六道に首を傾げる。
「そうですよね。君なんか所詮その程度くらいにしか僕の事なんて考えていませんよね」
どういう意味だと問おうとしたところで、切なそうに笑う六道に口を塞がれた。