ひつまぶし

「いや、鰻なんてゲテモノよく食えたもんだと思っていたが、」
「美味しいでしょ!」

確かに生きているうなぎを想像しちゃうとちょっとウッてなる気持ちはわかるよ。にょろにょろぬるぬるだもんね。しかしこれが美味しいんだ。最初にうなぎを食そうとした人は偉大である。それとこの蒲焼という調理方法を考えた人も。このたれが美味しいんだよね。私も大好きな料理のひとつだ。
今回はひつまぶし。ひつまぶしのいいところは途中で食べ方を変えることが出来るというところ。普通にうな丼として食べたあとは薬味を乗せて食べる。またそのあとはお茶漬けにして。自分の好きな食べ方が出来るというのもいい。まあ欲張りな私は毎回全部やっちゃうんだけど。

「おいしー!」
「ああ、美味えな」

スクアーロも美味しそうにうなぎを頬張っている。箸の使い方も上手。しゃんと伸びた背筋。いつもうるさく騒ぎ立てている人が、放送禁止用語で人を罵る口が、静かに綺麗にご飯を食べている。眼福眼福。いっぱい見ておこう。
こうして目の前の人が美味しそうにご飯を食べているのを見ながら食べるごはんはより一層美味しく感じるよね。特にそれがスクアーロという整った顔の人であれば尚更。好きな人であれば尚更だ。このイケメンがひつまぶしを食している、それだけでもう絵面が整っているというかひつまぶしが聖なる食べ物に見えてくるというか。一種の芸術というか。この場面を写真に撮って店先に貼っておけばみんなひつまぶしを食べに来ると思う。元々人気な食べ物ではあるけれどより一層売れると思うんだ。私だったらその写真見ながらひつまぶし軽く3杯はいける気がする。

「それにひつまぶし…うなぎにはとても素敵な効力がありまして」
「ほう?」
「いっぱい栄養がある!ビタミンがいっぱいだし美容にもいい!疲労回復にもいいんだって。精がつくと言うか」
「……なるほど、なぁ?」

うわあいやらしい顔。余計なこと言っちゃったかな。いやでも精がつくってそういう意味じゃないというか。

「そういう意味だろぉ」
「まあ、精力増強としてうなぎを食べるというのもあるか…」


――という訳で数時間後。私は無事ベッドの上に押し倒されています。
おかしい。全然無事ではない。うなぎってそんな即効性あります?まだ消化もされてないのでは?スクアーロはご機嫌そうに私の上に覆い被さってさわさわと頬を撫でてくる。零れ落ちてくる長い髪を耳に掛けてあげるとそのまま手を取られて握られてしまった。熱い手、それと同じくらいに視線も熱っぽい。その冷たい銀色に熱い光が灯るのを見るのはとても好き。いつだってスクアーロは私に対する気持ちを隠さないでいてくれる。そんな風に見つめてくれるのが大好きで、私も黙って見つめ返してしまう。だけども。だけどもだ。

「おかしいな…私たちっていつもこんな風にしてばっかり…」
「とか言ってお前も結構乗り気なんだろ、知ってんだぜぇ」
「今回はうなぎのせいにする感じ?」
「ああそうだ。鰻のおかげで今晩は眠れねえと思えよぉ!」

これからすることはいやらしいことなのに、楽しそうに笑うスクアーロの顔は少年のよう。私の腰を撫でる手も、重なる熱い身体も少年なんてかわいいものではないのに。こうしてこの人を下から見下ろすのにも慣れてしまった。どの方向から見てもこいつは格好がついている。ご飯をおいしそうに食べる顔も好きだけど、こうやって私を食べようとする時の顔も好きなんだ。困ったな。私もちょっと乗り気なのはとっくにばれてるか。うん、これはきっとうなぎのせい。ひつまぶしのせいだ。だけどね、私だってスクアーロと同じものを食べたんだから。今日は私ばっかりが攻め立てられていると思わないでよね。


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