ブローチ
セバスチャンからブローチを貰った。ちなみに今日は私の誕生日でも何かの行事ごとでもない。部屋に来ていきなり「このような安物はお嬢様にはお似合いになりませんが……」と神妙な顔をして半ば押しつけるように手渡された。
包装もなく直に渡されたそれはセバスチャンの瞳のような血を思わせるような深い赤色の石が填められている。

「まあ…綺麗なブローチ…ありがとうございます!」

とは言ってはみたものの急にどうしたんだろう。まさか呪いのブローチとか?目を凝らしてブローチを観察してみたが、元より霊感などというものを持ち合わせていない私に解る筈もない。特に嫌な感じや禍々しいものも感じられない、と思う。
もしかしたら、万が一…いいや億が一にもあり得ないことだとはわかってはいるが、このブローチを目にして私のことを思い出してくれて贈ってくれたのだとしたら……!先走ってはいけない。そんなことはないとはわかっている。でも、ちょっと想像してみるくらいいいではないか。
そっとブラウスにつけて鏡で確認してみる。ゆるむ口許を引き締めるよう努めるがなかなか難しい。

「…大切にしよう」

執事の嘲笑になぞ気づかぬまま愚かな私は今日もセバスチャンから貰ったブローチを胸元につける。



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