王者の敗戦
おは朝占い☆
「…一位の蟹座のアナタは絶好調!!ラッキーアイテムの[狸の信楽焼き]を持てば、向かう所敵無し!!!
ただし、獅子座の方とだけは相性最悪!出会ったら要注意!…」
※※※
今日は、IH。秀徳は準決勝は銀望、決勝戦は正邦又は誠凛と戦う。
私は試合会場に少し遅れて入った。
空いている席を探していると、脇から声がかかった。
「名前ちゃんじゃないっスか!?」
『黄瀬君、こんにちは』
黄瀬君は、海常のキャプテン…笠松さんと一緒に来ていた。
笠松さんは、以前海常の練習試合の時に見かけてはいるが、お互いに初対面だった。
「秀徳の試合を観に来たんスよね? 良かったら、隣空いているので座らないっスか?」
『あの…でも』
隣の笠松さんは落ち着かない様子だった。
確か…記憶だと、海常の笠松さんって、女の子が苦手だと思ったのだけど…?
「先輩、彼女は秀徳の…緑間っちの友達っス。一緒に観ても良いっスよね?」
「……ああ…」
『こんにちは、初めまして。秀徳高校一年の苗字名前です』
私は深々と礼をした。
「…海常高校三年、笠松幸男だ。よろしく」
顔を赤くして、目を逸らしながら挨拶された。女嫌いはガチかww
私は黄瀬君の横に座った。
私は、基本的にバスケは素人なので、彼等の説明や分析の話を聞きながら、試合を観戦出来たのは、とても興味深くてありがたかった。
銀望戦は、緑間君は3Pを少し打っただけで、すぐ引っ込んだ。
調整だけして、次の試合の為に温存する事にしたらしい。
実際、銀望戦は、秀徳は危なげなく勝ち進んだ。
荒れたのは、正邦・誠凛戦だった。
エースの火神君が、4ファウル取られて退場寸前になったが、2年生達+黒子君の奮闘で、何とか下した。
次の決勝戦は、誠凛が相手となる。
次の対戦までかなり時間があるので、私は差し入れを持って、秀徳の控室に向かう。
※※※
ガッッ
「うわっっ!?」
ノックしようとしたら、中から悲鳴が聞こえた。
『あの…』
恐る恐るノックをしてドアを開けたら、狸の信楽焼きと、額に青筋立てた木村先輩とが見えた。
「緑間ぁ!!!こんな所にこんな物、置くなっっ!!しかも二つも!!!邪魔だろーが!!!」
あちゃー…お取込み中かな? 出直した方がいいかな…??
一歩下がろうとしたら、すぐ後ろから声が聞こえた。
「あっれー?名前ちゃんじゃん。来てくれたんだー♪」
後ろから高尾君にがっちりと肩を組まれ、控室の中に入らされた。
「どーした?苗字、来てたのか」
大坪先輩が振り向いた。
『あの、部外者がすみません。差し入れ持って来ましたので、良かったら皆さんでどうぞ』
私はレモンのはちみつ漬けの入ったタッパーを3つ差し出した。
「おお、ありがとう!」大坪先輩は礼を言って、受け取ってくれた。
『では、皆さん、頑張ってくださいね!』と言って、控室を出ようとしたら、緑間君に呼び止められた。
「苗字、待つのだよ!」
『?』
緑間君は、狸の信楽焼きを持って、私の前に来た。
「苗字、これを持って行くのだよ」
………
狸の信楽焼きを渡された。
………うん、これって、確か今日の蟹座のラッキーアイテムなんだよね…
でも、これ、私にどーしろと言うの?
しかも持ってみると意外とでかいwww
『あの…これって、緑間君のラッキーアイテムでしょ?』
緑間君はドヤ顔で、眼鏡を上げる。
「心配ないのだよ。苗字の分まで二つ用意してある。遠慮せずに持って行くといいのだよ」と言われた。
そう言えば、私も蟹座だっけ? 今まで忘れてたよ。
つか、わざわざ2つ持って来たのかよ!?
『あ、ありがとう…』
折角の彼の好意を無碍にするわけにはいかない。
けど、笑顔が少々引きつるのは勘弁して欲しい…
高尾君は、もう腹抱えて大爆笑。
「ぎゃはは!!真ちゃん、名前ちゃんの分まで狸の信楽焼き持って来てたなんて、どんだけなんだよ!?
道理で荷物の量が半端ないと思っていたわwwwww」
先輩達は、もう呆れ顔だ。
「ピンクのウーパールーパーの礼なのだよ」
緑間君が大真面目な顔で説明しているけど、もうこれ、知らない人が聞いたら意味不明だからwww!!!
私はきっと先輩達に、緑間君と同類の変人の烙印を押されてしまったに違いない…orz
※※※
私は仕方無しに、しょっぱい気持ちと狸の信楽焼きを抱えて、黄瀬君達のいる席に戻った。
黄瀬君と笠松先輩は、私の抱えている狸の信楽焼きを見て、ぽかんとした。
「…お前…何持って来ているんだ!?」
笠松先輩が女嫌いも忘れて、唖然とした顔をしながら聞いてくる。
『あ…えーと、わらしべ長者…?
レモンのはちみつ漬けと引き換えに、狸の信楽焼きを貰いマシタ』
「(棒読みっスね)…もしかして、緑間っちっスか?」
さすがに黄瀬君は、緑間君と付き合いがあったことだけあって、理解が早かった。
『…これを持っていれば、今日の蟹座は向かう所敵無しなんだって』
「名前ちゃんは蟹座っスか…? 緑間っちと同じ星座なんスね…」
なに黄瀬君?、その残念なものを見る様な目はやめろ。
何かもう、早くも疲れた様な気がする…
この狸の信楽焼き、良く見ると頭に小さなリボンが付いていたり、バスケットボールを持ってたりで、中々に芸が細かい。
…もしかして、特注品なのだろうか?
※※※
秀徳と誠凛の試合は、のっけから荒れた。
緑間君が3Pを入れたかと思うと、黒子君のコートを縦断する超ロングパスから火神君のダンク。
観客達は、固唾を飲んで、展開の早い試合を見つめる。
これは凄い。目が離せない。
高尾君が黒子君のマークに付いた時から、誠凛の旗色が徐々に悪くなっていった。
火神君は、緑間君のマークに付いている。
緑間君のセンターどころか、自軍ゴールの手前からの超弾道3Pシュートには、度肝を抜かれた。
あんなんで入るなんて!?
緑間君が「キセキ」と呼ばれている意味が、やっと分かった気がした。
後半、火神君が無茶な暴走したり、タイムアウト中にベンチで黒子君と火神君が殴り合う騒ぎがあったり。
その後は、火神君は冷静になり、黒子君は高尾君のマークを外して、ボールをぶん殴るパスを出したり。
火神君は、緑間君のブロックを吹っ飛ばしたり。
点数差が広がらない。誠凛も粘り強く追いすがる。
3Pで緑間君が入れると、誠凛の日向先輩も3Pを返す。
点差が縮まり、ついに一点逆転された。
最後の3秒、緑間君に全てが託された。
最後は一瞬なのに、スローモーションを見ている様だった。
3Pを打つ緑間君、ブロックに飛ぶ火神君…冷静にフェイクで外したボールを再び構える緑間君…あと一秒。
最後のボールはネットを潜ることはなかった。
黒子君がスティールして、緑間君のボールを叩き落としたのだ。
王者秀徳は、81対82で誠凛に負けた。