Rhapsody in Green


flying!!お好み焼き


緑間君と秀徳の控室に戻ると、先輩達は帰った後だった。
残っていたのは高尾君だけ。

「お二人さーん、先輩、先に帰っちゃったよ?」
「…俺たちも帰るのだよ」
「帰り、ご飯でも食べてく? 名前ちゃんも一緒にどう?」
『私も一緒でいいの?』
「構わない。送って行くのだよ」

※※※

風雨が激しさを増していく中、チャリアカーを引きながら、高尾君が運転する。
リヤカーの中には、狸の信楽焼き二体と私と緑間君が乗っているから、狭い事この上ない。

…雨降っているのに、重いだろうなぁ…試合で疲れているのに…ゴメンね…
内心で高尾君に謝る。

途中でお好み焼き屋を見付けたので、風雨の避難がてらそこに入る事にする。

「すまっせーん」
高尾君が扉を開ける。
「おっちゃん、三人空いて…ん?」

高尾君が固まった。
「…げ…!!」
緑間君もフリーズした。
「…なっ…!?」

たった今、戦っていた誠凛高校のメンバーが祝杯を挙げる所だった。
「何でオマエらここに!? つか他は!?」
「いやー、真ちゃんが泣き崩れている間に、先輩達とはぐれちゃってー」
「オイ!!」
「ついでに飯でもーみたいな?」
「…店を変えるぞ!高尾!」
「あっオイ!!」

店を出た途端、壮絶な暴風雨が吹き荒れた。
…何か…猫まで飛んで行ってた様な…?
おかげで、全員びしょ濡れになってしまった。
堪らず、また店の中に戻る破目になる。

緑間君は、びしょ濡れになった私を見て、いきなり肩を抱き込んだ。
『なに…!?』とっさの事にびっくりする。
「高尾、替えのジャージを貸すのだよ」
「へ…?真ちゃん、なんで??」
「俺のでは大き過ぎるのだよ。いいから貸すのだよ!」
高尾君から借りたジャージを私に被せた。
「名前…これを着ているのだよ」
『???』
「あー…そーゆー事ね。名前ちゃん、家に着くまで脱いじゃダメだよー」(濡れて透けちゃったのねw)
高尾君のでも、私には十分大きい。

高尾君は、店内の一人の人物を目に止める。
「あれっ!?、もしかして海常の笠松さん?」
「何で知ってるんだ?」
「月バスで見たんで!!全国でも好PGとして有名じゃないすか」
「ちょっ…うおー!!同じポジションとして、話聞きてーなぁ!!ちょっと混ざってもいっすか?
あっ、こっちの席で話しましょうよ!!」
高尾君は、笠松さんを引っ張って座敷席に連れて行ってしまった。

…それで、あぶれた私と緑間君は、笠松さんのいた席に座ることに。

黄瀬君と黒子君と向かい合って、私は緑間君と火神君に挟まれる格好で座席に着いた。
…にしても、何だよこの席の面子…凄すぎだろ。私は場違いもいい所だ。

後ろから声が聞こえる。
「あの席、パネェ!!!」
「ちょっとちょっと、チョーワクワクするわね!?」
「お前、これ、狙ってたろ」
「えー!?、まっさかーwww♪」
…高尾君め…覚えてろ。

黒「…取りあえず、何か頼みませんか?」
黄「オレもう、結構いっぱいだから、今食べてるもんじゃだけでいっスわ」
緑「よくそんなゲ*のような物が食えるのだよ」
黄「なんでそーゆーこと言うっスか!?」
火「イカ玉豚玉ミックス玉たこ玉豚キムチ玉…」
黄「何の呪文っスかそれ!?」
緑「頼み過ぎなのだよ!!」
黒「大丈夫、火神君一人で食べますから」
黄「本当に人間スか!?」

「…苗字さん」
『なに?黒子君』
「苗字さんは、秀徳のマネージャーではないですよね? なんで緑間君達と一緒なのですか?」
「そー言えば、俺達と一緒に試合観てたっスよね!あの後どうしたのか気になっていたっスよ」

『…あー…』
あの後の事を思い出すと、顔が赤くなってしまう。
『ああ…うん、緑間君達と偶然に会ってね。送ってくれると言ってくれたから』
嘘ではない。
色々と、その間にあった事を飛ばしているだけで。

「苗字さん、顔が赤いです。緑間君も」
黒子君の指摘にぎょっとして、隣の緑間君を見てしまう。
「そっ…!そんな事はないのだよ!!」
…緑間君、耳が真っ赤…
私まで恥ずかしくなってしまう。

『…鉄板が熱いからねー』
私は目を逸らして、苦しい言い訳をする。
「何かあったんスね…」
「…そう言う事にしておきます」
黄瀬君と黒子君の視線が痛い。

火神君は、頼んだ全てを合わせて、大きなお好み焼きを焼いていた。
『…うわ大っき…!?火神君、お好み焼き焼くの上手いね!』
「お好み焼きなんだから、好きに適当に焼いておけばいーんだよ」
私も注文したお好み焼きを、緑間君のと一緒に焼いていく。

『料理得意なの?』
「一人暮らしをしていれば、イヤでも上手くなるぜ」
『そっかー、毎日家事やってんだ…大変だよね。得意料理とかあるの?』
「何でも作るけど…炒飯とかかな」
最初は拳骨をもらったけど、意外と話しやすいな、火神君は。

緑間君は、不機嫌に黙り込んでいた。
『緑間君、焼けたよー』
「緑間っち、焦げるっスよ?」
「食べる様な気分ではないが…名前…シェアするのだよ」
『うん、じゃ半分交換するね』
「緑間君が…苗字さんとシェア…?」
「…仲、いいっスよね」

彼等が色々と話しているのを聞きながら、私は黙々とお好み焼きを食べている。

火神君と緑間君は火花を散らすから、間にいる私は気が気ではない。
たったさっき、負かされた相手だから、緑間君が不穏な反応するのも当然なんだけどね。

…それにしても、後ろの座敷煩いなぁ…
高尾君、何やってるんだろ?

「お前等マジゴチャゴチャ考え過ぎなんじゃねーの? 楽しいからやってるに決まってんだろ、バスケ」
「何だと…!……何も知らんくせに、知ったような事言わないでもらおうか?」
火神君と緑間君が、私を挟んで頭の上で言い合いをしている。

その時不意に座敷席から、お好み焼きが飛んで来て緑間君の頭にヒットした!

べっしゃあ!!

『…あっ!!?』
「あ」
お好み焼きを投げた高尾君は、しまった!と言う顔をして固まった。
ああ…緑間君、激おこです…頭に怒りマークが見える…
席を立った緑間君「…取りあえず、その話は後だ。高尾、ちょっと来い」
高尾君を店の外に引っ張って行く。

『………』(-人-)チーン
私は思わず合掌した。高尾君、冥福を祈る。

「わりーわりー、ってちょっスイマッ… なんでお好み焼き振りかぶってんだギャーーー!!」

※※※

私は濡らしたタオルを絞って、戻って来た緑間君の頭を丁寧に拭いてやる。
あまり触れる機会は少ないけど、綺麗なサラサラの髪してるな。
指先で弄んでいると、気持ちが良い。
緑間君は特に嫌がる素振りもなく、大人しくされるがままだ。

一通り食べ終わる頃には、雨は止んでいた。
…火神君…マジあの量を一人で食べたんだ…恐るべし。

帰り際に、緑間君は火神君に向かって言う。
「火神、一つ忠告してやるのだよ。東京にいるキセキの世代は二人、俺ともう一人は青峰大輝と言う男だ。決勝リーグで当たるだろう。
そして、奴はお前と同種の選手だ」

青峰大輝…
帝光の頃は、有名人だから顔は知っていたけど、特に接触はしなかった…と思う。
青峰君の幼馴染の桃井さんとは、同じクラスになった事はあるけど。

立ちながら、緑間君は、明らかに自分の食べた金額の3倍のお金を置いていってる。
『…?緑間君、お金多いよ?』
「…多くない。3/1はお前の分なのだよ」
『ええっっ!?ちょっ…』
私は鞄を二つ持った緑間君を追いかける。
結局、半ば緑間君に押し切られる形で、奢ってもらってしまった。

「フン、まぁ、せいぜい頑張るのだよ」
「…緑間君! また…やりましょう」
緑間君は、黒子君の言葉に、扉の前で足を止めた。
「……当たり前だ。次は勝つ!」

外では、高尾君が自転車に跨って待っていた。
「今日はジャンケン無しでいーぜ?」
緑間君は軽く目を見開いた。
でも、すぐいつもの調子で軽く憎まれ口を叩く。
「…フン、しても漕ぐのはいつも高尾だろう?」
「にゃにおう!?」

※※※

「ただ、おは朝のラッキーアイテムはなぁ…」
「次からは抜からないのだよ。今度はもっと大きい信楽焼きを買うのだから。名前の分もな」
『えっっ!?…私のも!?』

これでも手に余っているのに、更にでかくなるのかよ!?つか、またくれるつもりなんだ?
「楽しみにしておくのだよ」
「サイズの話じゃねぇよ!!」

「つか真ちゃん、名前ちゃんの事、いつから名前で呼ぶ様になったの?」
「…いつからでもいいだろう。……名前も、呼びたければ俺の事も名前で呼んでいいのだよ」
「また…ツンデレなんだから。名前ちゃん、真ちゃんは名前の方で呼んで欲しいってさw」

いきなりそんな事言われても…
『えっと…じゃあ、真太郎君…でいいの?』
「…!ああ、それでいいのだよ!」
「真ちゃん、凄く嬉しそうなんだけど?」
「バカな事を言うな!高尾」
「真ちゃん、赤い顔で言っても説得力0なんだけどー?」

私は、いつの間にか笑っていた。
[次は勝つ!]
そんな彼等の、新たな誓いを聞きながら。


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