Rhapsody in Green


青色との邂逅


ある日、誠凛高校の近くの公園の横を通りがかった。
ストバスで一人、見覚えのある人がバスケをしている…

『こんにちはー☆火神君!』
「苗字っ!?」
シュートしたボールは、リングを潜った。

あれ…?
私は彼の動きに、微かな違和感を感じた。

『…火神君、もしかして…足を痛めてる?』
「なっ!?」
あれま、図星だった?
「…秀徳とやった時のがまだ残ってんだよ。無理したからな…でも、緑間達には言うなよ?」

私は軽く火神君を睨んだ。
『つーか、またすぐに試合あるんじゃん。エースなのに無理して悪化したらどうするの? 監督(リコ)さんは、この練習の事は承知してるの?』
「…うっ……!」
あーあ、内緒なんだな…ったく。

私はため息を吐いた。
『秀徳を下したんだから、簡単に負ける事は許さないよ? 分かったら、さっさと休む!』

※※※

「おーお、マジでいるよ。さつきの情報網って、やっぱすげーわ」
いきなり後ろから低い声がした。
私はぎょっとして振り返る。…あれは!!

青峰大輝!!!

帝光で見かけた時より、獰猛で荒んだ雰囲気になってる…
私は、恐ろしさに思わず一歩後ずさった。

青峰君は、そんな私をちらりと見た。
「火神大我…だろ? 女連れとは良い身分だな。 相手しろ、試してやるから」
「…あ?誰だテメー。名乗りもしないで相手しろとか、気に入らねーな」

「お前の気分とか聞いてねーよ。やれっつったらやるんだよ。
…まー、名前ぐらいは言ってやるよ。青峰大輝だ」

火神君は目を瞠った。
「名前は聞いてるぜ。けど、そんな上から物言われて、素直にハイなんて言うわけ…」
「ハハハ、オイ!オイ!だから聞いてねーんだよ。グタグダ言ってねーでやれ」

青峰君は、私の腕を掴むと、無理矢理引き寄せた。
『わっ!?何するの!?』
「青峰っ!!?」
青峰君は、私の肩に腕をかけると、火神君に向かって挑発的な物言いをした。
「誰も勝負になるなんて思ってねーよ。言ったろ、試してやるって。
オレより強い奴とか、存在してねえもん探してる訳じゃねーんだよ」

「…それとも、やる気にならないなら、こいつを賞品にしてやろうか?」
『…は!?』何で私が!?
「俺に勝てたらとは言わねえよ。俺の退屈をお前が楽しませられたら、それで返してやるさ」

火神君は長く息を吐いて、青峰君を睨んだ。
「黄瀬といい、緑間といい…「キセキの世代」ってのはカンに触る奴ばっかだけど、テメーはそん中でも格別だな!
ブッ倒してやるよ!!」

※※※

火神君と青峰君の1on1。
火神君は、全く歯が立たなかった。

「話になんねーな。お前、本当に緑間に勝ったのか?」
「テメェ…!!」
「あ、そうかテツがいるのか。だとしたら、不憫だぜ全く。
あいつは影だ。影は光が強い程濃くなる。つまり、輝き次第で、アイツは強くも弱くもなる」

青峰君は、火神君を抜かしざまに一言放った。
「お前の光は淡過ぎる」

火神君は一歩も動けなかった。

※※※

「じゃあな、お前の彼女、貰って行くぜ?」
『はあ!??』
私、火神君の彼女だと思われていたの!?
「青峰、待てっっ!!…そいつは!!」
火神君の抗議を最後まで聞かずに、青峰君は私を強引に引っ張って外へ出た。

青峰君は、私が振り解けない力で、強く腕を掴んで歩いて行く。
『やだ、離して!』
「お前は賞品なんだから、大人しく俺に付き合え」

だから嫌だったんだ。
帝光時代、こいつと関わらなくて、マジ正解だったんだな。
…それも、今となっては虚しいだけだけど。

途中、遊歩道に差し掛かる道で、青峰君は、一人歩いて来る人物に目を止めた。
「…あれ? なんだ、さつきじゃん。なんでいんだ、こんなとこ」

桃井さつき。
青峰君とは幼馴染、私とは中学の時の元クラスメートだった。

「ちょっ…!?それはこっちのセリフよ! 今日練習でしょ? …それに、その子…苗字さんじゃない、どうしたの!?」
「あ…?さつき、こいつの事知ってんのか? 何でも火神と一緒にいたから、1on1ついでに連れて来たんだが」

「苗字さんは帝光中での同級生よ。まさか無理矢理連れて来たんじゃないでしょうね?
それに火神君と一緒って? 行くなって散々言ったじゃん! それに多分彼の足はまだ…」

「っせーなーわってるよ。つか悲しいのは俺の方だぜ? これから少しは楽しめるかと思っていたのに、ガッツ萎えたぜ。このまま練習フケる」

青峰君の意識が、桃井さんに逸れていた。
私の腕を掴む力が弱まっている。

今だ!!!
私は渾身の力を振り絞ると、思いっ切り彼の腕を振り払った。
「おい!待て!!!」
私は、全速力で逃げた。

とは言っても、相手は「キセキの世代」エース、青峰大輝。
私の鈍足では、どんなに頑張っても追いつかれてしまう。

私は、道が分からなくなる程、滅茶苦茶に走った。
目に付いた路地を曲がり、撒く事だけを考えて。

そして、その勢いのまま、私は歩いていたチャラい男達にぶつかった。

『すみません!』
慌てて謝って、彼等の横をすり抜けようとした。
「おーっと待った!」腕を掴まれる。
『何ですか?』
「君、可愛いね〜!俺達と遊ぼうよ?」

一難去って、また一難かよ!?
内心で毒づきながら、表面上はにこやかな表情を取り繕う。
『…すみませんけど、今は急いでいまして…取り込み中なので無理です』
「そんな事言わずにさぁ〜」

あー、マジ超うぜえ。いい加減にしろよ、クソ餓鬼共!!
『離してください!!』
無理矢理引きずりやがって! うわ、ヤバい!! 車に乗せられたらアウトだ!!!
思い切り息を吸い込んで、金切り声で対抗しようとしたその時だった。

「…おっさん達、手を離せよ。そいつは俺のもんだぜ?」
先程から私を追っかけていたであろう、青峰君が、私の後ろに立っていた。
あれだけ無茶苦茶に走ったのに、全然撒けてなかったのか。
それどころか息も切らしていない。彼我の運動能力の差に愕然とする。

私は、腕を掴んでいる男の股座を思い切り蹴り上げ、顎に頭突きを食らわせた。
「〜〜〜!!!」

腕を振り解いた私は、青峰君の後ろに避難する。
我が身に危険が迫っているのだ。利用できるものなら何でも利用してやる。

男の一人が青峰君に掴みかかった。
青峰君は、軽く身体を捻り、躱し様に足を蹴り上げた。
男は悶絶する。

キセキの世代のエースは、喧嘩の強さも伊達ではなかった。
私を庇いながらも、4人の男達全員を地に這わせていた。

青峰君は、再び私の腕を掴んで歩き出す。
今は、最初の時ほど強く掴んではいない。私も大人しくついて行く。

「ここらは時々変な奴らが出没するからな。家まで送って行ってやるよ」
『…ありがとう…? でも、桃井さんの方は大丈夫なの?』
「なんで疑問形なんだよ? さつきはそのまま桐皇に戻るから大丈夫だろ。お前はここの道、分かるんだよな?」

私はふるふると首を横に振る。
「はぁ!?」
『そんなにここいらの地理は詳しくないし、さっき撒こうとして無茶苦茶に走ったから』
「何だそれ……ったく…くっ、お前、面白いわ!」
最初は呆れ顔だった青峰君が笑い出した。
青峰君、笑うと荒んだ雰囲気が消えて、少年っぽく、あどけない感じになる。

「お前、その制服は秀徳だろ? 名前は何てーの?」
『苗字名前』

「名前…お前、それにしても良い度胸してるよな。男一人沈めちまうなんて、見かけに寄らず気が強え。
気に入ったぜ…全く、火神の彼女にしとくのが惜しいわ」
『あのー…誤解してるみたいだけど、私は火神君の彼女じゃないよ? 友達だよ』

「マジかよ!?なら、俺と付き合え!」
ちょっ…いやいや…ストレートだな、オイ。

『気持ちは嬉しいけど、私、今好きな人がいるから。友達としてならいいけど』
「ちっ!…でも、まだデキてないんだろ?」
『デキてって……まぁ、そうですね…』
デキるとも思えないけどね。
こっそり胸の内で呟いてみる。

「なら、俺に惚れさせてやっから、携番とアドレス教えろ」
何 故 そ う な る ?


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