Rhapsody in Green


誠凛VS桐皇戦


立ち寄った本屋で何気なく目にしたバスケ雑誌。
それには、高校男子のバスケ特集が組まれていた。

パラパラとページをめくったら、夏のIHの対戦表が載っていた。
次は誠凛高校と桐皇学園…

私は、胸の奥にチリっとした痛みを感じた。
本来、秀徳高校が勝っていたなら、当たる筈だった所だ。

これが漫画の通りなら、誠凛は桐皇に歯が立たない。
結果は既に分かってはいたけど…私は桐皇学園を見てみたくなった。
『この対戦表によれば、もうすぐ試合日程になる…』

※※※

休み時間に教室で、私は二人に話しかけた。
『ねー、真太郎君と和成君は、明日の決勝リーグ観に行くの?』
「俺達は学校が終わってから、バスケ部のレギュラー全員で観に行く事になってんよ」
「俺は、気が進まないのだよ」
『そっかー…』
彼等がクラブで行くのなら、私は一人で行かなくてはならない。

高尾君は私の顔を覗き込んだ。
「名前ちゃん、どったの??難しい顔して」
『んー?…いや…ね…』
私は言葉を濁した。

「ぶっはっっ!!!方向音痴ーっっ!?www」
高尾君は大爆笑した。
『何よっっ!?そこまで笑わなくてもいいじゃんっっ!!』

前の海常高校は友人と一緒だったし、秀徳-誠凛戦も、時間多めに取って散々迷った挙句、やっと時間ギリギリで辿り付いたのだ。
『でも、初めての場所だけだからね!?二度目以降は大丈夫だから…多分!』

「地図を持っては行かないのか?」
緑間君の問いに、私はがっくりと肩を落とす。
「…持っていても、方向が把握出来ないんだって…」
そんなんで辿り付けたら、既にそれは方向音痴とは言わないのだよ…

※※※

そして、決勝リーグ戦当日。

今日は平日で、普通に授業がある。
リーグ戦は夕方からだから、授業を終えた後でも悠々と間に合う。
私は、前もって用意しておいた地図を見返して溜息を吐いた。
…本当に、何故自分が迷うのか、よく分からない。
迷うのが前提なら、出来るだけ早目に出なくては。

駅から私は、地図を出して歩いていた。
『えーっと…こっちか』
角を曲がった途端、後ろから腕を掴まれた。

「名前、方向が違うのだよ。こっちだ」
突然、後ろに引き寄せられる。

えっ!?

聞き覚えのある声に、私は振り向いた。
『真太郎君!?何で??』
確かクラブで行く筈では?

彼は私の質問に答えず、私の腕を引きながら会場に向かった。
「全く…世話が焼けるのだよ。名前、これを持っていろ」
と、緑間君が私に渡したのは、一見何の変哲もない小さな箱。

『…何?これ』
「今日の蟹座のラッキーアイテムなのだよ」
『…この…箱、が??』
良く見ると、緑間君も同じ箱を持っている。

私は何気なく蓋を開けた。

ゴンッ!!

『んがっ!?』
不意に何かが眉間を直撃した。
『〜〜〜ったーっ!?』
「びっくり箱なのだよ」
確かに吃驚したわ!つか、説明遅せーよ!!

開いた箱には、ばね仕掛けでアッカンベー顔のボールが仕込まれていた。
これがラッキーアイテムって何なんだよ!!?おは朝!!
ラッキーアイテム関連は緑間君に突っ込んでも無駄だから、おは朝に内心で突っ込む。

緑間君は、眉間を押さえて涙目になってる私を覗き込んだ。
彼の顔が近付いて、私の心臓は音を立てて跳ねた。
「診せてみるのだよ…赤くなってるな」
彼は、途中にある児童公園の水飲み場で、ハンカチを濡らして私の眉間に当てた。
「しばらく冷やしておくのだよ」
『う…うん。ありがとう』
私は眉間だけじゃなくて、顔全体が赤くなっているかもしれない。

※※※

会場の体育館に着いた。
決勝リーグだけあって、既に席は満杯になっている。
緑間君と私は、後ろで立ち見をする事にした。

そして、緑間君は私にサングラスを渡した。
『…は?何でサングラス???』
ラッキーアイテム…はびっくり箱だから違うよね?

緑間君は、自身もサングラスを装着した。
頼むから、学生服でサングラスはやめろ。これではただの変な人だ。…変な人かw

「部の連中に見付かると面倒なのだよ。お前の分まで用意しておいたから付けるのだよ」
『やだよ!真太郎君だって違和感バリバリだけど、私はセーラー服なんだよ!?
ただでさえ童顔でサングラスなんか超似合わないのに、セーラー服にサングラスの女子高生とか有り得ないから!!!』

つか、何で私の分まで用意したし!??
「…付けるのだよ!」
緑間君は私からサングラスを取り上げると、私の顎を支えて上向かせ、顔を近付けた。
サングラス越しに、彼の鋭い視線が私を射抜く。
『うっっ!?』
これは反則だろ!?

狼狽えた一瞬の隙を逃さず、彼は私にサングラスを装着させた。
「これでよし」
緑間君は会心の笑みを浮かべた。
『…全くもう…』
私は諦めの溜息を吐いた。
一瞬見惚れてしまった私の負けだ。
もう、相当に絆されているな…私も。

そうこうしている内に、試合が始まった。
青峰君は遅刻してまだ出てないが、始めから誠凛の旗色は悪かった。
それでも、日向さんの3Pや火神君の活躍で何とかギリギリ保っていた。

「緑間っち!…に名前ちゃん!?」
後ろから聞いた事ある声が… もしやこの声って…?
私と緑間君は弾かれた様に振り返った。
「黄瀬っ!?何故気付いたのだよ!?」

そして同時に、私と緑間君がそれぞれ手にしたびっくり箱が二つ一緒に開いた。
ビヨョ〜ンと顔の付いたボールが揃って揺れる。

「アホスか!?二人してグラサンって!ツッコミどころが満載過ぎて、どこから突っ込んで良いか分からないっス!!
恥ずかしいからソッコー外して欲しいっス!! 特に、セーラー服女子にグラサンとかアホ過ぎっス!!!」

と、モデルにダメ出しされてしまった…w

…やっぱり悪目立ちしているんだろうなぁ…
突っ込んでくれて、ある意味助かったw…これでサングラスが外せるwww

「なにィ!?」
でも、緑間君には心外だった様で。
更に黄瀬君の追求は続く。
「しかも何スか、その箱?」
「今日のラッキーアイテムに決まっているのだよ」

黄瀬君は、暫し目を瞬いて、呆れた様に言った。
「あれスか?"見たくない"とか周りには言ったけど、結局名前ちゃんと来ちゃったんスか?」
「テキトーな事を言うな!近くを通っただけなのだよ!」
「家、真逆じゃないっスか…つか、何で名前ちゃんまで付き合っているんスか…?
家の方角も、緑間っちと同じでこっちじゃないし!?」
「…!!!付き合ってはいないのだよ!! てか黄瀬、何で名前の家を、知ってるのだよ!?」
「そんな事は聞いてねぇっスよ!?
以前、名前ちゃんを、家まで送って行った事があるっス」

私に続いて、緑間君もサングラスを外して、眼鏡にかけ替えた。
ああ…良かった。

「それはいつの話だ?」
「海常の練習試合の後、黒子っちと火神っちとストバスした後の時っス!」

緑間君は、忌々しそうに溜め息を吐いた。
「全く…油断も隙も、あったものではないのだよ…」

「何か…酷い事を言われてる様な気がするっス!」
確かに…w
油断って。

『ただ送って貰っただけだって…』
「会ったばかりの男、しかも黄瀬に送らせるとは、無用心にも程があるのだよ」
「しかもって何スか!? 緑間っち、男の嫉妬は醜いっスよ?」
「誰が嫉妬だと!?」

『試合中だよ?二人とも、言い合いしないの!』


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