Rhapsody in Green


Let's study!-2-


緑間君の席には、彼が持って来た缶ビールが置いてある。
「緑間、何で学校に酒なんか持って来ているんだよ、寄越せ!」
「緑間君、未成年の飲酒は禁止やで?」

「これは酒ではないのだよ! 蟹座のラッキーアイテムなのだよ。触るな!」
取り上げようとした青峰君が、ぎゃあと叫んで仰け反った。
「なんだこれ!?動くぞ!!?」

その缶ビールは、クネクネと踊り出した。
「今日の蟹座のラッキーアイテムは[音で動くもの]なのだよ。名前、お前にはこれを貸そう」
『あ…ありがとう、真太郎君』
わざわざ二つも持って来たんかい…

…そして、私の机の上には、ダンシングフラワーがクネクネと踊ることになった……

「だぁぁぁぁぁっっっっ!!!!気が散るんだよ!!!」
青峰君は、教科書を放り投げた。

「集中力が足りない証拠なのだよ!大体、静かにしてれば、これは動かないただの置物なのだよ!!」
「緑間も酒踊らしているんじゃねーよ!紛らわしいんだよ!!」
「缶だけで、酒は入っていないのだよ!」

高尾君は、横で大爆笑している。
「ぎゃはは!!真ちゃん、ケッサクだわーwいや、確かに音で動くものだけどさー、アイテムのチョイスがまた最高なんだよなwww」
高尾君が賑やかなお陰で、余計にこの[置物]は、クネクネと踊りまくっている。

「大ちゃん、せっかくミドリンが教えてくれるんだから、缶ビールが踊るくらい我慢してよ!」
桃井さんは、青峰君を窘めている。
「すいません!!缶ビールのように踊れなくて、すいません!!!」
…なぜそこで桜井君が謝る??

「けっ!青峰なんか赤点取ったら、補習時間に、そこの缶ビールと一緒に踊るといいんじゃね? お似合いだぜww」
若松さんは、何故か絡む。
「ンだと若松!? お前、試合の時に俺より点取ったことあるのかよ!?」
「その前にテストの点取る方が先だろ!? 次の試合、補習で出られなかったら取れる点なんか0点だろが!」尤もな反論だ。
青峰君は、椅子を蹴って席を立ち、若松さんに突っかかる。
図書室は騒然となった。

「まあまあ。若松もそのくらいにしときや。青峰、ここは図書室やで。静かにしいや」
今吉さんの鶴の一声で、騒ぎは一旦収まった。

※※※

青峰君が、私の右隣に座っている。
私の左隣には、若松さんが座っている。
緑間君は、青峰君の右隣に座っていて、私を心配そうに見ている。

私は、若松さんにもレクチャーしている。
『古典は、文法を覚える事が肝要です。活用表の音読を繰り返せば、かなり力がつくと思います。試験前の数日やるだけでも、かなり効果的です』
「そ…そうか。それで、ここの文なんだが…」
『ええと、そこはですね、品詞分解すると…』

「…二年にも対応出来るなんて、さすがやな。俺も教えてもらおかな?」
…ご冗談を。今吉さんは、多分すごく成績は良い方だと思う。私が教えて欲しいくらいですわ。

若松さんに教えていると、いきなり反対側に腕を引かれた。
「名前、元々俺に教えに来たんだろ? 若松なんか構ってんじゃねーよ」
「青峰! 苗字さんは、今は俺に説明してんだ、邪魔するんじゃねーよ!」

二人は私を挟んで睨み合った。
そんな青峰君を緑間君が窘める。
「青峰、止めるのだよ!」
「緑間は、すっこんでろ!!」

ぶち。

私は、青峰君を睨み上げた。
青峰君は一瞬怯んだ。

『ここは喧嘩をする所じゃないのよ? 試合にも出れずに補習受けたければ、外で喧嘩しなよ。私は止めないからさ』
いつもよりも低い声で、静かに本気の怒りを表してみる。

若松さんも、ぎょっとしている。
「苗字さん、すまねぇ。…俺が大人げなかった」
素直に謝ってくれた。

『分かってくれたなら、良いんです。勉強しましょ』
私はにっこり微笑って返す。
「…お、おう」
あれ…? 若松さんの顔が何だか赤いような…?

私は、青峰君を黙って見上げた。
「…わ…悪かったよ。…もうしねぇよ…」
消え入るような、小さな声で謝罪の言葉を口にしてくれた。
『…うん。…で、どこが分からないの?』
私は一転して、優しい口調に戻して聞く。

青峰君は、ぼそりと一言。
「……全部…」

って、全 部 か よ ! ! !

桃井さんと今吉さんがそんな私達を見て、小声で話している。
「ほらね、大ちゃん、苗字さんの言う事は聞くでしょ?」
「本当や。いや〜すげーわ! あの青峰を黙らして言う事聞かすなんて。
桃井ちゃん、苗字さんを、うちのマネージャーに勧誘してくれへんか?青峰専用の…」

…何だか不穏なやり取りが聞こえるのですけど…

若松さんは、「苗字さんって…見た目可愛いのに気が強いのな…」等と呟いている。
青峰君がそれに応じる。
「こいつを怒らすと怖えーぞ? 何せ大の男を一人、タマ蹴りして沈めた女なんだからな!」

ちょっと!!何てことをバラすんだ?この男はっっ!!?
つか、若松さんも桜井君も緑間君も高尾君も、そんな怯えた目で人を見るな!!
『……正当防衛ですっ!!故なき場合にはしませんよ。人聞きの悪い』

せっかく秀徳では、(少しだけど)猫被っていたのに!! 大輝のヤロー…覚えてろ。

青峰君は、私に教えられながらも
「なぁ名前、試験が終わったら俺とデートしねぇ?」等と口説いて来る。

そこに緑間君が乱入した。
「名前は、頭の悪い男が嫌いなのだよ」

…は? 私、そんな事を一言も言った覚えがないのだけど?

「なに!? 緑間、それは本当か!?」
「…名前と付き合いたかったら、少なくとも平均点以上は取れないと、お話にならないのだよ」
『…そりゃ…頭が悪いよりは、良い方がいいに決まってるけど』

「そうなのか?……なら、俺が平均点以上取れば、デートしてくれるんだな!?」
「全科目でだぞ。一科目でも平均点以下なら、付き合いなぞさせられんのだよ」

私は小声で緑間君に抗議する。
『ちょっと、真太郎君、なんでそんな事言ってるのよ!?』

緑間君は平然と返す
「方便だ。考えてもみろ、青峰が全科目平均点以上取れると思うか?」
…いや…思わないけど…

「少なくとも、鼻面に人参でもぶら下げておけば、少しはやる気になる筈なのだよ」
『……私は馬人参かい…』

緑間君に競走馬扱いされた青峰君は、俄然やる気になった様だ。

※※※

合同勉強会がお開きになった時、やたらと今吉さんと桃井さんには感謝されていた。
「名前ちゃん、ミドリン、またやろーね!!」
「おおきにな、苗字ちゃん。またお願いしてええか?」

桜井君は「苗字さん、すいません! またお願いします、すいません!!」と、また謝られた。
若松さんは、何故か照れながら「…ありがとな、苗字。助かったぜ…また教えてくれな」と、両手で握手してくれた。

そんな若松さんを見た緑間君がため息を一つ。
「…またライバルが一人、増えたようなのだよ……」

そして青峰君は、私のそばに歩み寄った。
すかさず緑間君が私の前に、守る様に立ちふさがる。
「…緑間、どけよ」
「どくことは出来ないのだよ。…お前の事だから名前に、また悪さでもするつもりなんだろう」
「……ちっっ!…俺は危険物扱いかよ!」
「名前にとっては危険物なのだよ!」

そんなやり取りを聞きながら身を引いていた私に、青峰君は、緑間君の前から声をかける。
「平均点以上取ったら、デートな!…口説いてやるから…忘れるなよ?」

※※※

高尾君は楽しそうに感想を述べた。
「いやー、面白かったなぁー 勉強会で大爆笑とか、中々出来るこっちゃないわーwww」
緑間君は、私の横でぼそりと呟いた。
「…もう、勉強会は懲り懲りなのだよ…」

そんな緑間君に高尾君が茶々を入れる。
「でも、名前ちゃんが行くなら、結局また付いて来ちゃうんでしょ〜?」
「青峰の元に、一人で行かせられる訳はないだろう! …名前も、青峰に合う時は俺達に知らせるのだよ」
『心配してくれて…ありがとう。真太郎君』

「…いや……」
(ああは言ったが、青峰が平均点以上取れない事を願うのだよ…)
緑間君は、聞き取れない声で、一人そっと呟いた。


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