Rhapsody in Green


帰り道


桐皇で勉強会した帰りは、高尾君の漕ぐチャリアカーに乗って、緑間君と一緒に揺られていた。

…もう、街中での驚いた視線にも、とうに慣れました。(苦笑)
……慣れるのも、我ながらどうかとは思うのだけど。

ある意味、彼等と付き合いだしてから、色々と感覚が麻痺してる部分があるのかも…しれない。

しかし、ただ余所で勉強会しただけなのに、この疲労感は何なんだろう?
普通に勉強するよりも…凄く…疲れたんだけど…

私は、つらつらと勉強会の時の事を思い出していた。
ああ…疲労の第一要因は青峰君だな、やっぱり。

本当に、赤点免れられるのかなぁ…つか、平均点以上取ったら、マジでデート付き合わされそうだな。
緑間君は、無理だと言い切ったけど…

青峰君がマジでやる気になったら、苦手な勉強でも克服するかもしれないし。
何たって、彼はキセキの世代のエースだ。完全に有り得ない話でもないんじゃ…?

先の事だし、自分では及ばない所を考えても仕方ないけど、こと自分が関わってしまう部分なんで、どうしても気にかかってしまう。

ぼーっとリヤカーの上で揺られている内に、意識が朦朧としてきた。
…眠い……
どうやら、自分で思っているより、疲れが溜まっているみたいだ。

私は、いつの間にか意識を手放していた。

※※※

「……名前、名前!」
私を優しく呼ぶ声がする。
この声は……
『……真太郎…くん…?…何…?』

ここは温かくて…気持ちいい。
まだ、寝てたいよ。
『あと…5分……』
微睡んでいたら、優しく揺さぶられた。

「着いたのだよ。起きるのだよ」
んぁ…着いたって、何処に?

私は重い瞼を嫌々開けた。
…えっ!?

私の視界には、緑間君の顔のどアップが占めていた。

私は一気に覚醒した。
『わっっ!?真太郎…!?…ご、ごめん!! 私、寝てた!?』

「ぐっすり眠ってたのだよ」
「真ちゃんに寄りかかって、ぐーっすり寝てたもんなぁ。一回も起きる気配なし。
…おかげで、じゃんけんも出来なかったんだぜ?」

うわぁ!!
『〜〜ごめんなさい!!和成君!!!』
「…いいけどね。その代り、名前ちゃんの可愛い寝顔はたーっぷり拝ませてもらったし?」
うう…恥ずかしい…

「真ちゃん、役得だよなぁ。…俺も、今度からおは朝見て、蠍座のラッキーアイテムを持って来ようかなー?」
「…ここは譲らないのだよ!」

※※※

-緑間side-


それにしても…疲れたのだよ。
ただ勉強しただけでは、こんなに疲れたりしない。

青峰の奴…
あいつの名前に対する執着を見ると、案外平均点以上取るかもしれないのだよ。
全く…油断できん奴だ。

若松って奴も、名前を気に入ってたみたいだし。
…やはり一人で行かせないで正解だったのだよ。

そんな事を考えながら、リヤカーに揺られていたら、不意に肩に重みがかかった。

名前?

名前は俺に寄りかかって眠っていた。

「…疲れたのだな…」
無理もないのだよ。
あれだけの濃い面子に揉まれながら勉強を教えていたのだ。
…しかし、こいつは自分の試験勉強もあるというのに…人が良いにも程があるのだよ。

俺は、名前の方に向かって身体を回して、彼女の反対側の肩に腕を回して支えた。
これで、多少の振動では倒れたりしないだろう。

「真ちゃん、次の信号でさ…」と言いながら振り返った高尾は、ぎょっとした顔をした。

俺は人差し指を唇に当てた。
「高尾…静かにするのだよ」
「いーな…真ちゃんばっかり役得で…ずりぃ〜」
「人事を尽くした結果なのだよ」

「じゃんけんなんかしたら、起こしちゃうよね?…ったく、名前ちゃんったら可愛い顔して寝ちゃって…」
仕方無しに高尾はそのまま漕ぎ続けた。

俺は腕の中で、すやすやと寝ている名前を見た。
男の前で眠るなんて、無防備なのだよ…

名前の小さな身体からは、優しく甘い匂いがする。

「名前…」
俺は小声で呼んでみる。
「…しん…た…ろ…」
応えがあるとは思わなかった。俺は軽く目を瞠った。
もしも、俺の夢を見てくれてたなら、嬉しいのだが。

俺はそっと彼女の髪をかき分けて、額に唇を寄せて、軽く触れさせた。

今は俺が守ってやるから。
「いい夢を…見るのだよ。名前…」


page / index

|



ALICE+