Rhapsody in Green


拉致る筈が拉致られる


明日は7月7日。緑間君の誕生日だ。
今日は日曜日なので、ゆっくりとケーキを焼いた。
うん、上出来だ。

プレゼントも用意したし、後は渡すだけなんだけど…
でも、きっと明日もバスケ部の練習、あるんだろうな…
渡すだけなら、きっと大した時間はかからないと思うけど。

私は、高尾君に電話してみる。

『…和成君、折り入っての相談事があるんだけど…』
《なになに?名前ちゃん?》
『明日、真太郎君の誕生日じゃん?
…祝いたいと思うんだけど、平日だし、部活もあるでしょ?
…で、何とかどこかで彼を拉致ること出来ないかな〜って』

高尾君は思案している。
《う〜ん…部活サボらせたら、真ちゃんと先輩達には俺が殺される…》
『ですよねー…部活終わってからは?』
《個人練習したら遅くなるけど、その時ならイケるかもしれねー》
『じゃあ、その時にサプライズで祝いたいんだけど、いいかな?』
《良いねー、俺もやりたい!俺も一口、乗せてくれよ!》

※※※

翌日 -学校-

緑間君は、笹を持って来ていた。

『…そー言えば、今日のおは朝の占いでは、蟹座のラッキーアイテムが[笹]だったっけね…』
「そう言うお前は、何で持って来てないのだよ?」
『…持って来ているのが当然の様に言わないで』

笹抱えて来るとか、どこのパンダなんだよ!?
大体、机の横に立てかけて置くとか邪魔だろ。後ろの席の人が見えないだろ!?
教室の後ろに置かせようとしても、ラッキーアイテムは手元にないと嫌だとか抜かしやがって。この我儘男は。

『まぁ…季節感は満載だけどさ…』
クラスメイトは、もうこの変人の所業に慣れたものだ。
私は、友人に頼まれて、色紙と紐を美術準備室から持って来た。
何をやっているかというと、カッターで切って、短冊を作っているのだ。
「俺にもくれよ」「私にもちょーだい!」
みるみるうちに、作る先から短冊が無くなっていく。

私の手元の短冊が減るのと反比例するかのように、緑間君の笹が彩りを加えていく。
私は手を止めて、何気なく飾られた短冊を読んでいく。

[成績が上がりますように]
[彼氏が出来ますように]
[モテるようになりたい]
[ダイエットが成功しますように]

ん…?何だか変な短冊もある…
[彼女がいっぱい欲しい] いっぱいって…w
[二次元に行きたい] …ははははは…www
[テストなんか世界から滅亡してしまえ!!] 気持ちはよく分かるよ。

[頭にふさふさの毛が生えますように。あと、給料が増えますように] 誰だ?……先生まで書いているのか?切実だなw

[おなかすいた。お菓子くれ] 紫原かよ。
[カボチャになりたい] …カボチャ…? ジャック・オー・ランタンにでもなるつもりなのか???

ストレートな願い事って…カオスなんだな…
つか誰だ、一人で10枚も持って行ったヤツ、単語帳でも作るつもりなのか? 欲張り過ぎだ!!!

高尾君が手元を覗き込んだ。
「名前ちゃんは、何か願い事ないの〜?」
『さーね…なくもないけど、これに書ける様な事じゃないなー。和成君、短冊いる?』
「ありがとー名前ちゃん、貰うよ!」
高尾君は、[真ちゃんと一緒に、秀徳バスケ部WC優勝!!!]と、書いていた。

緑間君は「当然だ。人事を尽くす!!」と、返していたけど、やはり自分の願い事は書いていない。
『真太郎君は、書かないの?』短冊を渡そうとするが、返された。
「一つは当然、バスケで優勝する事なのだよ。…でも、もう一つは、お前と同じ…ここに書ける様な事ではないのだよ」

※※※

-放課後-

「あー、いたいた!名前ちゃん!!」
高尾君に呼び止められた。
緑間君も一緒だ。
『どーしたの?二人して』
「あのさー、ちょっと付いて来て欲しいんだけど」
『何? 時間がかかる事なの?』
緑間君は、片手で眼鏡を上げた。「…時間がかかるかは、お前次第なのだよ」

私は二人に挟まれて、両腕をがっし!!と掴まれた。
ちょっと待て。私は「行く」と一言も言っていない。

『ちょっと!?どこへ連れてく気!?』
私は二人にガッチリ脇をホールドされて、軽く両方から持ち上げられる。
小柄な私は、男二人に抵抗出来る筈もなく、あっけなく連行された。

※※※

着いたのは体育館。
私は、今日真ちゃんを拉致ろうとしたのに、なんで自分が拉致られてしまっているのだ?
さては裏切ったか、和成っっ!?

周りには、大柄な秀徳バスケ部の面々に囲まれてしまっている。
…もしや、悪巧みがバレたのだろうか?
背中に嫌な汗が伝う。

その中から、大坪キャプテンが進み出た。
「苗字さん、手荒な真似をさせてすまない。実は頼みたい事があるのだが、聞いてくれないか?」

キャプテンが直々に私に頼みだと?

『…内容によります』
うっかり答えない様に、慎重に予防線を張ってみた。
「臨時でいいから、WC終わるまでバスケ部のマネージャーをやってほしい」

…は?何ですと?

『えっ…私、一応美術部に入っていて、夏〜秋は文化祭の作品を描かなくてはいけないのですけど…』
ここの強豪校のマネージャーになってしまったら、絵を描く時間なんて取れなくなってしまう。
「練習は毎日で、朝練もあるけど、特に忙しい時だけ手伝ってくれるだけでも有難いのだが」
『うーん…』 私は考え込んだ。

『秀徳なら、他にもマネージャーとか候補になる人は、いるのではないのですか?』
「今までは、二軍の選手が交替でやっていたのだ。女子マネは…トラブルの元になる事があるから、入れてなかったが」

じゃあ何で、私に白羽の矢が立ったのだろう?
「名前は、俺達が推薦したのだよ」

真 太 郎 ・・・ お 前 か! ! !

「だって他の女子みたいに、変に色目使わないし、それに料理の腕も良いしね!!」
高尾君も補足する。

『…で、料理が何の関係があるの?』

大坪先輩は、軽く咳払いした。
「…夏休みにだな、秀徳は一軍のレギュラーだけで調整合宿するのだ。で、そこの宿は自炊しなくてはならなくてな…」
『…なるほど。それに賄いが必要なのですね?』
「理解が早くて助かるな。…頼まれてくれるか?」
『…そうですね…時間をある程度自由にさせてくれるのなら』

今日の悪巧みを成功させる取引材料にしてやろうっと。

『でも私、バスケは初心者ですよ?』
「スコアシートの書き方とかは教える。これから少しずつ覚えていけば良い。それでは中谷監督にも紹介しよう」
中谷監督にも紹介された。

私は一旦、教室に戻って、荷物を持って来てからジャージに着替える。

早速、私はドリンクの作り方から、スコアシートの書き方やら教わった。
と言っても、ルールとかは授業でやった基本しか知らないから、そこから覚えなければならない。
何だかんだで、あっという間に時間が経ってしまった。


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