Rhapsody in Green


七夕への誘い


練習の時間は終わった。
そして、後は自由時間なだけ。
高尾君がにかっと笑って言う。「行くよ、名前ちゃん!!」
私は敬礼して返す。『ラジャー!!!』

二人で緑間君を羽交い絞めにする。
「何をする!?止めるのだよ!!!」
「真ちゃん!」『真太郎君!!』
「『Happy Birthday〜!!!』」

何事かと、戻って体育館を覗き込んだ先輩達がびっくりしている。
「何だ、緑間は今日が誕生日なのかよ!?」と、宮地さん。
「お祝いに…パイナップル持って来れば良かったな」と、木村さん。

私と高尾君は、それぞれプレゼントを渡した。
緑間君は「フン…今更誕生日など祝われる歳でもないのだよ」
とか言っているけど。

「真ちゃん、そんな嬉しそうに言っても、説得力ないぜ〜?」
高尾君の言う通り、緑間君は口元が緩んでいた。
ふふ…彼なりに喜んでくれた様で…良かった。

「名前ちゃん、ケーキ焼いたんだ? い〜な〜俺にもくれよ、真ちゃん!」
「イヤなのだよ! これは俺に名前が作ってくれた物なのだよ!」
「和成君の時にも、焼いてあげるから…」
「本当!?なら、約束だぜ、名前ちゃん!!」
「高尾になどやらなくていいのだよ!」
「真ちゃん、ひっでーよ!!」

それと、もう一つだけ。
私は、短冊にメッセージと願い事を書いて、こっそり緑間君の笹に結び付けておいた。

※※※

帰り道。
私は、緑間君と高尾君と一緒に帰っていた。

『七夕って、彦星と織姫の年に一回逢える日なんだよね…晴れて良かったね』
七夕って、何故か雨の日が多い気がする。
「一年に一回しか会えない恋人ってないわー。俺だったら、寂しくて死んじゃう」
『宇宙を又にかけた超長距離恋愛…会えないからこそ、会えた時がより大切な時間になるんだろうね。…でも私も年に一回はイヤだな…』

「あれ?真ちゃん、そっちはいつも行く道とは違うんじゃねーの?」
そっちは、そのまま私の家の方へ向かう道だけど。
「高尾…また、明日なのだよ」
「和成君、今日はありがとう! また明日ねー!」

高尾君と別れた後、
笹を担ぎながら歩いて行く緑間君が、私に話しかける。
「七夕を過ぎた笹がどうなるのか…知っているか?」
『…そう言えば…どうなるの?』
「昔は川に流したみたいなのだよ。送り雛みたいに」
『今は、それは無理なんじゃ…?」
「今では、それをすると不法投棄になるのだよ。ゴミとして出す場合もあるみたいだが…」
『…ゴミ…』私は俯いた。
そうだよね。でも、それは皆の願い事が書かれている。それをゴミとして出すなんて。

「ここだ。着いたぞ。」
そこは、七夕祭りで、いつもより遅くまで開いている神社だった。

「ここでお焚き上げしてもらうのだよ」
『ふふ…良いの?ラッキーアイテムなのに?』私は嬉しくなって、小さく笑った。
細やかな心配りをする緑間君って、やっぱり優しいんだなぁ。
「ラッキーアイテムを過ぎたからと言って、ゴミ捨て場に出す訳にはいかないからな」

お焚き上げしている煙がゆっくりと夜空に立ち上っていく。
私は緑間君と一緒に、その煙を眺めていた。

(真太郎君、誕生日おめでとう!
真太郎君にとって、これからの毎日がHappyでありますように!! by名前)

そんな、短冊に書いた私の小さな願いも、天の神様に聞き届けられますように…
私は、そっと手を合わせた。

※※※

緑間君は、その後、私を家まで送ってくれた。
そして、帰り際に「…名前、誕生日を祝ってくれて、ありがとうなのだよ」と言って、笑みを閃かせて、短冊を一枚ちらつかせる。

…その短冊には見覚えがあった。私は目を丸くした。
そう…それは、私が小さな願いを記した短冊だった。

「ラッキーアイテムはお焚き上げしてしまったから、これを代りのラッキーアイテムにするのだよ」
『ちょっ…!?いつから…?気付いていたの!?』
「当たり前だ。俺は名前のことは、いつも見ているのだよ」

は…?今、何か仰いましたか!?
私は、顔にじわじわと熱が集まるのを感じた。

「これからは、マネージャーとしても、よろしくなのだよ」
がっちりと大きな手で握手された私は、ぼーぜんと踵を返す緑間君を見ていた。

我に返って、彼に呼びかける。『…送ってくれて、ありがとう。真太郎君!!また明日ね!』
緑間君は、そのまま手を振って帰って行った。

『不意討ちだよ…』
私の呟きは宙に漂い、何処へともなく消えた。


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