Rhapsody in Green


Birthday in Wonderland!-1-


今日は、一学期も終わり。
終業式出たら帰宅で、明日から夏休み。

私の誕生日は、大体は終業式の日だが、今年は夏休み一日目になる。
…誕生日のプレゼントは、大体が成績表だ…嬉しくねぇ…
別に悪い評価ではないからいいけど。
だから今年は、学校側からのプレゼントは夏休みの宿題ってところか。…やっぱり嬉しくない…orz

終業式が終わって帰り支度していたら、緑間君と高尾君がやってきた。
「名前ちゃん、これ!!」
机に置かれたのは、遊園地のチケット三枚。

「明日、空けといてくれよな!!」
高尾君がウィンクして言う。
「明日は名前の誕生日だろう?…俺と高尾からのプレゼントなのだよ」
緑間君が眼鏡のブリッジを上げながら言う。

『わあ、覚えててくれたんだ!! ありがとう、二人とも!!!』
こんな形で誕生日を祝われるのは、とても嬉しい!

「俺も誕生日を祝ってもらったからな。…明日は部活も休みだし、日程的にも丁度いい。…等価交換なのだよ」
「…とか言っちゃって、名前ちゃんと一緒に遊びに行けるのが嬉しいんだろ? 真ちゃんも素直じゃねーなー」
「煩いのだよ、高尾!」
「あいたっ!!☆ひっでーよ!真ちゃん!」高尾君は緑間君に小突かれている。

※※※

-次の日-

遊園地

夏休みだからか、かなりの人出で賑わっている。

「今日は、夜にはパレードもやるんだってな!」
「一日中、楽しめそうなのだよ」
『あっ、見てあれ!』
私が指さす先には、[レンタル衣装]の看板。
要するに、コスプレしての写真撮影と、一日中衣装レンタル出来て園内を回れるらしい。

「今月は、[不思議の国のアリス]だって…面白そうじゃんwww」
「…気が進まないのだよ」
緑間君は渋い顔をしている。
「真ちゃん、今日のゲストは名前ちゃんだよ? 付き合うのも、俺達からのプレゼントなんだから」
「…仕方ないのだよ…」

衣装を借りて着て、撮影室に入る。
私はアリス、高尾君は三月ウサギ、緑間君は帽子屋の扮装だ。

「名前ちゃん、似合うね〜可っ愛いー!!」
『ありがとう。和成君も似合ってるー♪』
「…とても高校生には見えないのだよ」
「真ちゃん〜、もうちょっと他に言い様はないの〜!?」
『悪かったね!どーせ童顔ですよーだ!』
緑間君も似合って格好いいけど、憎まれ口叩くなら言ってやんない!

撮影所は、扮装が扮装なので、お茶会風にセットされたインテリアの中で、三人がソファに腰かけた。
私を真ん中にして、左右に緑間君と高尾君に挟まれる。

「はい、三人とも、もう少し寄り添ってー…ではチーズ!」
写真撮る人の掛け声と同時にシャッターを切る音がする。
と、同時に右側の頬に柔らかな感触を感じた。

出来た写真には、私の頬にキスをしている高尾君の姿が写っていた。
緑間君は、写真を見て怒り始めた。
「高尾!!お前は、何をふしだらな事をしているのだよ!?」
「へっへーん、やったもん勝ちだもんね!!真ちゃんも羨ましがってないで、やればいいのに〜」
「高尾〜〜〜!!!」
『まあまあ…二人ともその辺で…』

※※※

私達は、そのままの衣装で園内を巡る事にした。

何だかとっても楽しいな。
ジェットコースターや、コーヒーカップ…何に乗っても、二人と一緒だとテンションが上がる。
コスプレをしているせいか、自分達も非日常の遊園地の世界に溶け込んでる気がする。
こんな誕生日もいいね!

「あっ!?」
お昼に、野外のテーブルに着いて、バーガーセットを食べていたら、不意に高尾君が声を上げた。
そして、私と緑間君をテーブルの下に引っ張り込む。
「…どうしたのだよ?高尾」
「真ちゃん…あれ見て!」

高尾君が指を指した先には、かったるそうな青峰君と桃井さんが歩いていた。
「あの二人も来ていたのか」
『桃井さん…黒子君とじゃないのね』
「青峰は付き合わされたんだろうな」
「…で、どーすんの?真ちゃん、あの二人に声かけるの?」

緑間君は、私をチラリと見てから言う。
「青峰とは鉢合わせを避けたいのだよ」
「そーねー…今の名前ちゃんを見たら、青峰は狼になりかねないもんなぁ〜。じゃ、逃げるか!!」
「逃げるのだよ!」

食卓を慌てて片付けて、園内を見えない様に隠れながら移動する。
『出来れば、ここのエリアから離れた方がいいと思うのだけど』
高尾君もだけど、緑間君の帽子屋は更に目立つからなぁ。
「真ちゃん、こっち来るぞ!!」
「こう言う時に、高尾の目は便利なのだよ!」
ある意味、才能の無駄遣いではあるけどね〜

※※※

暫く園内を走り回った後に、後ろを確認する。
『…あれ?真太郎君、和成君はどこ?』
「…見当たらないな。はぐれたのだよ」
マジか。鷹の目はどうした?
『携帯は?』
「この遊園地…一部圏外になっている様だな」
『そんな所あるの!?』

『大輝君じゃない?…あれ』
「名前、こっちに来るのだよ!』
緑間君は、私の手を引いてミラーハウスの陰に逃げ込んだ。

道から見えなくする為に、緑間君は私を両腕の中に閉じ込めて、壁に押し付け、彼自身も身体を密着させた。
所謂、密着した壁ドン状態だ。緑間君が耳元で囁く。
「名前、暫くじっとしているのだよ」
まるで抱きしめられているみたい。

彼の体温が伝わって来る。
このままじっとしていると、ドキドキし過ぎて心臓が破裂しそう。
きっと今の私は、顔が真っ赤になっている。
暫くして、ようやっと緑間君が身体を離した。
「行ったか…?」

動悸は暫く治まりそうにない。

『このまま園内を逃げてるだけじゃ、遊園地に来た甲斐がないから、どこかに入らない?』
「…そうするか。で、名前はどこに入りたいのだよ?」
『うーん…そうね…手近な所で、あれはどうかな?』
私が指さした先は、お化け屋敷だった。
あそこなら、赤い顔も照明で誤魔化せる。

「名前は、ああ言うのは大丈夫なのか?」
『大丈夫!どーせ作り物でしょ〜』
とか強がったものの、中に入ったら中々本格的な造り。
正直、甘く見過ぎていたかも…

脅かし方も、出そうとびくびくしていた所ではなくて、通り過ぎた後ろからいきなり来るとか、意外に芸が細かい。
『きゃあっ!!』
私は前言撤回して、緑間君に抱き付いていた。
我ながら、女の子みたいな反応だな!?…いや、女の子だけど!!

「名前、作り物だから落ち着け!」
緑間君は、私の肩を優しく叩いて、手を差し出してくれた。
「手を繋げば、怖くないのだよ」
『真太郎君…ありがとう』
「どういたしましてなのだよ」

私は、緑間君の手の温かさに、ようやく落ち着きを取り戻した。
彼と一緒なら、確かに怖くない、と思った。
…それでも脅かされて、何度か抱き付いてしまったけど。
その度に、緑間君は優しく抱きしめてくれて、宥めてくれた。

※※※

お化け屋敷を出た後、
「さて…と、次はどこに行くのだよ?」と聞かれた私は、『そうだなー…観覧車とかどう?』と、提案してみた。
「観覧車か…上手く行けば、青峰達や高尾が見付かるかもしれないのだよ」
『ここのエリアから、少し離れる事も出来るしね』

観覧車のあるエリアまで、青峰君達には見付からずに、また、高尾君とも連絡が取れずに辿り着いた。
『…なんか…天気が不安定だねー。予報では、場所によっては夕方雨が降るかも〜とあったけど』
「心配ない。一応、傘は持って来たのだよ」

観覧車に並んで、順番に乗り込んだ。
ゆっくりと乗ったゴンドラが上に上がって行く。
『わぁ!良い眺め〜♪』
「…高尾はまだ見付からないのだよ」

天辺に来た時、天気が急変した。
いきなり雷雨が襲って来た。
ゴロゴロ…ピシャーン!!バリバリ
『わっ!?』

私は、思わず緑間君に抱き付いた。
「名前、大丈夫か?」
彼は私を受け止めてガッチリと抱きしめた。
同時に、ガコンと一揺れして、ゴンドラは停止した。
『…止まった…?』
「さっき落ちた雷が原因かもしれないのだよ」

アナウンスが流れた。
[お客様にお知らせします。只今、落雷の影響で、電気系統にトラブルが発生いたしました。
ご不便をおかけして、誠に申し訳ございませんが、もう少しそのままでお待ちくださいませ…]

『しばらくこのままだって…』
「そのようだな」
乗っている私達には、待つ以外はどうしようも出来ない。
やっと落ち着いた私は、緑間君から身体を離そうとしたが、緑間君が離してくれない。
私を抱きしめる腕に力が入ってくる。

「名前…」

どうしよう。動けない。
耳元で名前を甘く囁かれたら、力が抜けて、全身が溶けてしまいそうになる。
私は全身を、そのまま緑間君に預ける。
彼の鼓動と匂いに包まれてドキドキする。

いつの間にか。
電気系統のトラブルは解消したのか、またゆっくりとゴンドラが動き出した。
でも、私達は正直それどころじゃなくて、甘い感触に全身で浸りきっていた。

緑間君は、私の顔を覗き込んだ。
彼の翡翠色の強い瞳が、真直ぐに私を捉える。
私は、彼の瞳から目を離すことが出来なかった。

「……名前、俺は……」

緑間君が何か言いかけた時、ピリリリ…
緑間君の携帯が鳴り出した。

緑間君は、ディスプレイを確認して、一瞬顔を顰めると渋々電話に出た。
「…高尾、お前はどこにいるのだよ?」
あ、電話通じたんだ?
「Bエリアか…ここからは少し離れているな。…こちらは今は観覧車に乗っている。名前と一緒なのだよ。
…分かった、ここを降りたらそっちへ向かう」

会話を終えて、携帯を切った。
「名前、高尾から連絡が入った。ここから出たら、Bエリアに向かう」
ここはDエリア…Bに向かうには、Cを通り抜けしなければならない。

私は、さっきから気になっている事を質問しようとした。
『…で、真太郎君、さっきの…』

ガコン!ゴンドラが揺れた。
パタン 係員が扉を開いた。「お疲れ様でしたー!!」

……どうやら、一回りし終えたらしい。
微妙に間が悪いのは気のせいか…?
KYな係員を半ば恨めしく思いながら、エリア移動を開始する。

あれだけ降っていた雨は止んでいた。
『雨止んで良かったねー。パレード中止になるかと思ったよ』
「…疲れたか? ここからBエリアへ移動するには、あの城を突っ切ると早いのだよ」
『ううん、大丈夫!早く行こう』
正直、慣れない靴に疲れてはいたけど、そんな事も言ってられない。

結局、あの言いかけの言葉は何だったのか。あの後、気になっても聞けず仕舞いだった。


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