Rhapsody in Green


Birthday in Wonderland!-2-


城の近くまで来た。
下は、土産物などを売るショッピングモールになって、Cエリアまで突き抜けている。
そのまま下を通り抜けしようとしたのだけど…

『あれ…大輝君じゃない?』
「そのまま行ったら見付かるのだよ…」
『でも、ここを通らないと和成君と合流出来ないよ?』
緑間君は、園内図を見ながら暫し考え込む。
「これは…あまり褒められたやり方ではないが、背に腹は代えられないのだよ。名前、こっちだ」

緑間君に手を引かれ、連れて行かれたのは城の入り口…
だが、それは従業員専用の通路だった。
『ここ…入っていいの?』
「勿論、良くはないのだよ」
優等生の緑間君が、こんな事やるなんて…信じられない。
「なるべく見付からず…邪魔にならないように…するのだよ」

確かに、彼等にここを見付からずに通り抜けするには、この通路を通る事が一番確実で安全だ。
城を避けて大回りするとなると、下手をすると閉演時間までに合流出来なくなる可能性もある。
何より、私の体力が保たない。

通路は、閑散としていた。
このまま、誰にも会わずに通り抜け出来るかと思っていたが、それは甘かった様だ。

「あっ!?君達!!?」係員に見付かった。
ヤバいと思い、反射的に『すみません!迷っちゃって』と謝ってしまう。
「君達はこっちじゃないでしょ!!時間がないよ、その通路を右に行って、突き当りを左に曲がりなさい。急いで!!」
係員に示された通りの通路を進む。

……あれ?

着いた場所は、中庭みたいになってて、沢山のキャラクターに扮装した人達が並んでスタンバイしている。
何だここ?? どーなってんの?

「君達は、ここに乗って!」
『???』
係員に指示された通りに、私達はフロート車に乗り込む。

まもなく軽快な音楽と共に、列は進みだした。
『ってー!?ちょっ…待っ…!?これって、パレードの列じゃん!!』
「名前、今更降りるなんて事は出来ないのだよ!」
『どーすんの?これ!?ここまで目立つ場所にいたら、見付かってしまうんじゃ…!?』
「…奴等が、俺達の変装を気付かないでいてくれるのを願うしかないのだよ…!」
緑間君は見付からないとか無理だろ…自分の容姿、自覚ないのか。

彼等に見付からない様に下を向いていたら、横にいたトランプの兵隊から叱られた。
「ほらアリス、下なんか向いてないで、お客さんに笑顔で手を振って!!」
マズいよーーwwwと、引きつりながら、作り笑顔を浮かべつつ、観客に向かって手を振ってみる。
緑間君も、仏頂面怒られているけど……笑顔浮かべて手を振る、なんて芸当が出来るのかなぁ…?

仏頂面は直らないけど、一応手は振っているみたい…
…選挙カーか街頭演説でも、もっとにこやかだよ。…しかも、帽子屋だしwww

もう、どうにでもなれだ!
自棄くそになった私は、引きつり笑いしながら手を振り続けた。
…でも、これ…ずーっと手を振り続けるのは意外と疲れるな。

あ、高尾君だ!
驚きのあまり、口をあんぐりと開けたまま、こっちを見て固まっている…w
ヤケになった私は、半ば苦笑いしながら、三月ウサギ姿の高尾君に大きく手を振ってやった。
正気に戻ってカメラ構えてんじゃねー!!つか、撮るな!!!

桃井さんと青峰君も、こっちを見ている…
えーと…こっちを指さして何か言ってるみたいだけど…

私は小声で、隣で機械的に手を振り続けてる緑間君に話しかけた。
『…もしかして、桃ちゃんや大輝君達に気付かれたかも…?』
「……気のせいではないのか?」
『…明らかに指…こっちを指してますけど…?』

近くまで来た。
「ミドリーーーン!!!、名前ちゃーん!!!」

…ああ…やっぱり。見付かってやがった。

そして私は、忙しい毎日に紛れて、すっかり忘れ去っていた事を不意に思い出した。
『…そー言えば、以前、桃ちゃんから、お礼のメールが来てたんだよね〜』
「……まさか…!?」
そう。
『……大輝君、全科目平均点以上だったって』
「……最悪なのだよ…」

※※※

辺りは暗くなっていた。
観客達は、まだちらほらいたが、閉演時間が近付いていた。

パレードが終わって、私達はようやく解放された。
私は、さすがに疲れて足が少しふらついた。
「名前、大丈夫か!?」
緑間君は、そんな私を腕を掴んで支えてくれた。
『ありがとう。…何とか大丈夫』
「…まさかあんな事になるとは思わなかったのだよ。すまなかったな。もうすぐ高尾と合流するから…
遅くなってしまったが、この衣装を返して帰るのだよ」
『ははっ!謝らなくていいよ!凄く楽しくて滅多に経験できない、忘れられない誕生日になったのは、真太郎君と和成君のおかげだよ』

緑間君は、嬉しそうに笑みを閃かせた。
「名前が喜んでくれたのなら、良かったのだよ」
私は、彼の優しい言葉と満面の笑みに、ドキリとした。

「真ちゃーん!!名前ちゃーん!!!」
三月ウサギ姿の高尾君が私達を見付けて、駆け寄って来た。
「ホラ見て!!!」
駆け寄って来るなり、デジカメの画面を見せる。
画面には、私達がパレードで手を振っていた画像が写し出されていた。

「動画も撮ったんだぜー♪ほらっ!!」
『ちょっ…!?動画まで…!?』
「記念に後で焼いてやるからなー♪♪」
「消すのだよ!!!高尾!!」
「やだぴょーん!」

笑いながら、そんな彼らのじゃれ合いを眺めていたら、不意に肩に重みがかかった。
「よぉアリス!」
『わっ!?大輝君!!』
青峰君は、後ろから私の肩に腕を置いて、軽く体重をかけていた。
『大輝君、重いよ!』私はふらついた。
「青峰!名前を離すのだよ!」

「大ちゃん、速いよ〜!」
桃井さんも駆け寄って来た。
「わぁ、三人とも可愛い〜!」
「はは…どーも!」高尾君が片手を上げて挨拶する。

青峰君は、私から腕をどけた。
「名前…俺、全科目平均点以上取ったから、今度デートに付き合えよ?…緑間も文句ねーよな?」
「…約束だからな。仕方ないのだよ」
緑間君は忌々しげにため息を吐いた。

「それにしても、三人ともそんな恰好でどうしたの?」
桃井さんがきらきらした目で、私達に尋ねる。
「…今日は名前の誕生日で、付き合ってたら、こんな恰好にさせられたのだよ」
「へー、今日なんだ?名前ちゃん、誕生日おめでとう!!」
『ありがとう!』

「でもさー、まさか真ちゃんと名前ちゃんがパレードに紛れ込んでいるとは、びっくりしたよね!!」
高尾君は完全に面白がっている。
「…色々と事情があったのだよ」
「ったく…どんな事情だよ?www」
苦虫を噛み潰した表情の緑間君に、突っ込みを入れながら苦笑している青峰君。

青峰君と桃井さんから逃げて、こんな事になった…とは、当人がいる前ではとても言えないよねwww

青峰君が、私をじっと見ている。
『…なに?』
「…いや…お前、その衣装似合うな…なんつーか、人形みてぇ」
心なしか、青峰君の顔が赤みを帯びている様な気がする…

「今度、俺とのデートの時にも、それ着て来い」
『これは、ここで借りた衣装だよ!?』
「なら、またここでデートするか?」
『大輝君もアリスの衣装を着るならいいよ!
何にする? 白ウサギ?…それともチェシャキャット?』

「はーい!大ちゃんは、ハンプティダンプティが良いと思いまーす!!」
桃井さんが、手を上げて発言した。
「ぶっは!!ハンプティダンプティって…玉子じゃんwww」
高尾君は横で吹き出した。
「さつき、てめえ!!!」
「青峰なら、凶暴なところでハートの女王も似合いそうなのだよ」
「真ちゃん、ガングロ女王って…怖すぎだろー!?破壊力パネェよ!!!www」
高尾君は、笑い過ぎて息も絶え絶えだ。
「てめーら、面白がってんじゃねーよ!!!」
青峰君の怒声が、夜空に響いた。

衣装レンタルの場所に着いて、元通りに着替えて、衣装を返却する。
青峰君と桃井さんとは、遊園地の出口で分かれた。
「今度、連絡するからな!」と、青峰君に、しっかりデートの確約されて。
そんな私達の様子を不安気に見ていた緑間君は、彼等が帰って行くのを見届けて、ほっと息を吐いた。

「全く…とんだ一日だったのだよ」
『いやぁ…リアルにワンダーランドな一日だったねー』
「俺もすっごく面白かった!!…でも、途中ではぐれた時は焦ったなー…何度かけても真ちゃんと名前ちゃんの携帯には繋がらないし」
『ごめんねー、和成君。でも私も、とても楽しい一日だったよ!ありがとうね!!』
「どういたしましてー…ところで真ちゃん、名前ちゃんと二人きりの逃避行はどうだったのよ?」
「…何の事なのだよ!?」
「とぼけちゃってー、…俺が鷹の目で見えてないとでも思った?」

緑間君は真っ赤になった。
「高尾っ!?」
くくくっと含む様に高尾君は笑った。
「これが、今日俺が二人にあげた最高のプレゼントなんだけど、活用してくれたみたいで良かったよ〜!」

『もしかして…途中ではぐれたのはわざとなの!?』
「いや…成り行きだけど…その後、見付けても合流せずに様子は見てたよ」

じゃ、壁ドンを見られていた、と言う事か!?
私も真っ赤になった。

「ふふっ…名前ちゃん、HappyBirthdy!!」
高尾君は、私を抱き込むと、頬に二回目のキスをした。
「高尾っっ!!」
「これくらいいいじゃん!今回は、真ちゃんは役得だったんだからさー!」

『ありがとう、二人とも。大好きだよ!!』
私は二人に抱き付いた。

2度目の16才の誕生日の夜は、賑やかに更けて往った。


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