青色狂騒曲-1-
夏休み始まって間もない頃、青峰君からメールが来た。
[デートするから、空いてる日を教えろ]
一連のやり取りをして、部活の無い日にしてもらった。
※※※
その前日の夏休みの練習日。
「えっ!?名前ちゃん、明日青峰とデートするの!?」
『しーっ!和成君、声大きいよ!!!』
「明日…だと!?…で、どこに行くのか決まったのか?」
緑間君まで聞きつけて来た。
『ジョイシティランドに行く事になった』
遊園地と言っても前回とは違う、遊園地的なアミューズメントパークだ。
「ジョイシティランドって、確か全天候型の大掛かりなゲームセンターとかあるんだよな」
「あそこは、オリジナルのアイテムが充実しているのだよ…」
『他にも綺麗な公園や遊歩道が敷設されていて、散歩コースとしても良いんだよね』
高尾君が意味あり気に私の顔を覗き込んだ。
「…待ち合わせは、ジョイシティランドで? 時間は?」
なんで時間を聞いて来るかな? と、疑問に思いつつも答える。
『そうだね。開園時間の辺りが沢山遊べて良いんじゃないかと…10:00AM辺りで』
※※※
デート当日
待ち合わせは入口のそば。
青峰君は、時間通りにやって来た。
「おーす!名前…くぁ〜眠っみーわ…」
『おはよ大輝君。朝弱いの?』
「おー、昨日まで練習だったんだよ」
『お疲れー』
「ずっと教室で寝てたけどな!」
『…寝てたんかい…』
「今時分の屋上は暑いからな! 風は通るけど、直射日光でコンクリがフライパンなんだぜ」
夏休みに学校に行っただけマシなんだろうか?
桃ちゃん…苦労しているんだな……
私はそっと、心の中で桃井さんにエールを送る。
※※※
中に入って、中央広場に佇む。
夏休みに入ったせいか、親子連れやらカップルやら客が多い。
…何か…周りに熊とか猫とか、色々な着ぐるみがうろうろしているんだけど、このキャラ達って、ここのキャラでは無かったと思うんだけど…?
夏休み企画でコラボとかしたんだろうか…?
「…で、どこに行くんだ?」
青峰君に問われて、私はパンフレットのマップを見ながら考える。
『そーだねー…この、バーチャルシューティングやってみたいな!』
「おっ、それ面白そうだな!!」
このバーチャルシューティングは、車両に乗って、専用の3Dゴーグルを着けて、光線銃(?)で出て来た敵を打ち抜く、と言うもの。
二人で乗り込んで係員が安全を確認すると、乗り物が動き出して、バーチャル未来都市に入って行く。
「おー出て来たぞ!」
青峰君は、正確に的を打ち抜く。
さすが! 動体視力も並じゃない。
『キャー気持ち悪ーい!こっちに来ないでーーーっっっ!!!』
私は襲って来るクリーチャーが気持ち悪くて、消えて欲しい一心で銃を撃ち続ける。
「お前…キャーキャー言いながら全滅させてんじゃん。すげーわw」
半ばパニック気味に撃ってる私は、横で感心してるらしい青峰君の言葉も耳に入って来ない。
ぜえぜえ息を切らしながら泣き言を言う。
『こ…怖いよぉ〜』
青峰君は、横で爆笑している。
「名前…お前、やってる事と言ってる事が違い過ぎてウケるわーwww」
私は涙目で、横にいる青峰君を睨んだ。
他人が怖がっているのを笑うとは…覚えてろ。
一時的に攻撃が途切れた。
後ろが騒がしいので、ふと振り向いた私は目を剥いた。
ええっ!?着ぐるみがゲームしてるよ!!!???
つかアレ、スタッフじゃないのか? …それにしてもシュールだ。
ゴーグルは、中で着けているんだろうなぁ…やっぱり。
…でも、着ぐるみが動きを妨げているのか、撃っても全然当たってないみたいだけど。
「…何だありゃ?」
青峰君もポカンとしている。
そのまま私達は、次のステージに進んで行った。
また更に、グロさがパワーアップしたクリーチャーが襲い掛かって来る。
「おりゃっっ!!やったぜ!また一匹撃破っ!!!」
『邪神はルルイエにお帰りーーーっっっ!!!』
「…お前の叫びは、意味分かんねえ…」
『だって、グロさがそっくりそのままのイメージなんだもんっ!!キャーッ!!深きものどもはインスマスにお戻りー!!!』
いきなり前に、perfect!!!の光文字が浮かび上がる。
それと共に、bonus stageが現れる。
「ボス戦だぜ。名前、覚悟はいいか?」
『全然良くないよ〜』
もう、クリーチャーデザインしたの誰だよ!
「うっわー…これは俺でも引くな…」
『ぐっちゃぐちゃだね…全部倒したご褒美がこれって。嬉しくないわぁ』
「目を同時に狙えだとさ」
『…ぐちゃぐちゃ過ぎて、何処に目があるか分からないよ』
「あの、二か所光ってる所がそうだろーな…よし、名前行くぞ!せーの!!!」
『グロいのグロいの飛んで行けーーーっっっ!!!』
合図と同時に引き金を引く。
見事、同時に目を撃ち抜いた。
Game clear!!の文字が光ると共に、レベルアップしたかの様な軽快な電子音が鳴る。
「ぃやったぜ!最高得点っっ!!」
青峰君は、ガッツポーズを取って、私の肩にガッチリと腕を回した。
「名前、お前って最っ高ー!!!すっげー楽しいわ!」
青峰君の屈託のない笑顔に、嬉しくなった私も思わず満面の笑みで返す。
『大輝君、凄いね!私も最高得点取れるとは思わなかったよ!』
こんなに無心に遊んだのって、久しぶりだ。
※※※
『次はどうしようか…?』
「そーだなー…」青峰君が私の持ってるマップを覗き込む。
必然的に顔が近くに寄るので、少しドギマギしてしまう。
「次は…このゴーカートなんかどうだ?」
『どこにあるの?』
「ほら、ここ…」
指を指している。更に顔が近付いて来る。もう少しで息がかかりそうな距離…
突然後ろから、もこもこした感触の物が体当たりして来た。
『わっ!?』
「名前!?何だ、どうしたんだ!??」
外見おファンシーなクマの着ぐるみが、私を担いで走り出す。
『えっ!?何?何なの??』
私は何が何やら分からず、混乱したまま担がれていた。
下手に暴れると落ちてしまう。
この着ぐるみ、背が高いな!!しかも足が速い!
後ろからは青峰君が「名前ーっ!!こらークマ野郎!!テメーどこへ連れて行く気だー!?」と怒鳴りながら追って来る。
アミューズメントパークで疾走する着ぐるみに担がれてる私…そして、それを最高速度で追いかける青峰君。
否が応でも周りの注目を集めてしまっている。恥ずかしいったらない。
『ちょっ…下ろしてーーーっ!!!』
ワンフロア抜けて、辿り付いたのはゴーカート入口。
そのまま着ぐるみ達は、私を下して、あっさりと踵を返して去って行く。
…もしかして、連れて来てくれたのだろうか…?
それにしては、些かサービス過剰な気もするが…?
『あ…ありがとう…?』
私は、茫然と見送りながら礼を言う。
猫の方の着ぐるみさんは、振り向いて手を振った。
青峰君が追い付いて来た。
「名前、無事か? …ったく…何だありゃ?」
『あ…案内してくれたみたいだね…?』
「にしてもよー、いきなり担ぐとかありなのかよ?…びっくりしたぜ」
『…わ、私もだよ…』
※※※
ゴーカートは、二人乗りと一人乗り用があったが、私達はせっかくだから二人乗り用に乗った。
左右並んで、ハンドルが付いているタイプだ。
「んじゃ、出発しよーぜ!」
『ラジャ〜!!』
青峰君が運転を始める。
『コース広いねー』
「こっちは、ファミリータイプより難易度高いロングコースだからな!運転のし甲斐があるぜ!!」
かなりのハイスピードでコースを飛ばす。気持ちが良い。自然と私もハイテンションになる。
『私も運転したい!!』
「お前…出来んのかよ? じゃ、替わってやるよ。そっちのハンドル持て」
そして、私は運転をしだしたのだけど…
「だーーーーっっ!!こら、何やってんだ!?そっちじゃねーーー!!!」
『ああもう煩いっ!!耳元で叫ばないで!!!』
頑張ってハンドル持っているのに、何故だか蛇行してしまう。
コースアウトしそうになって、慌ててハンドルを反対側に回したら、今度は回ってしまう。
「貸せ!!やっぱり俺が運転する!!」
『もう少しやらせてってば!慣れたら出来る様になるから!!』
私は、自棄気味にアクセルを踏み込んだ。
「うおっっ!!?」
『ほらっ!ちゃんと前に進んでるじゃん!』
「前に進むのが普通なんだよ、威張るな!!つか、ちゃんと前見ろ!!!」
前はUターンコースになっていて、三角コーンの列に突っ込みそうになる。
私は、慌ててブレーキを目一杯踏み込んで、ハンドルを限界まで回した。
車はスピンして、横滑りしてコースアウトしてから、ようやく停止した。
「……あっぶねー…」
『痛っ…』
青峰君は、咄嗟に私に覆いかぶさってた。
そして、息を一つ吐く。
「…名前、大丈夫か?」
身体が押さえつけられてて重い…
目を開けたら顔が近い。至近距離で見つめられてて心臓が跳ねた。
『…ちょっと額をぶつけた』
「…どれ、見せてみろ。…ちょっと赤くなってるな。ここ出たら手当してやる」
『あ…ありがと…』
「今度は最後まで俺が運転する。…文句はねーな?」
ゴーカートを元のコースまで戻して、運転を再開した。
さすがに、派手にコースアウトまでしてしまった身としては、文句を言う事が出来ない。
下手したら、青峰君を怪我させてしまいかねない所だった。
さすがの私も無茶しすぎたと反省した。
「…おい」
『…ごめん…あの、大輝君は怪我とかしなかった?』
「俺は大丈夫だ。つか、湿気た面すんな。お前がバカなのは今更じゃねーだろ」
『…もうちょっと他に言い様はないの?』
あまりの言われ様に、私は些か腹を立てて抗議してみる。
「これでも慰めてやってんだぜー?お前といると、本っ当に退屈しなくていいわ!お前の運転、スリリングで面白過ぎwww」
運転で爆笑までされるとか、不覚過ぎる。
『…スリルを求めて運転したつもりはないんだけど…』
「悪い事は言わねえ。…お前は、運転免許は取らない方がいいぜ」
不本意な言われ様だが、自分でもそう思うよ…orz
…でも、真顔で言われると傷つくわ。