Rhapsody in Green


俺達の事情[高尾side]-1-


夏休みに入ってからも、秀徳バスケ部は練習を続けている。
そこで聞いた衝撃の事実。

名前ちゃんが、期末テストで平均点以上を取った青峰と、約束通りデートする事になった。

※※※

……あ〜あ。
さっきから真ちゃんが不機嫌でしょーがない。
つか、名前ちゃんがデートする切っ掛けって、真ちゃんが余計な事言ったからじゃないか。
こっちに八つ当たりするのも大概にして欲しいよなー。

「…真ちゃん。そんなに気になるんならさ…明日休みだし、いっその事デートについて行っちゃえばいいんじゃね?」
「何を言う高尾。…そんな事が出来る筈がないのだよ」
「…明日・ジョイシティランド入口・10:00AMに待ち合わせしてるってよw」
ピクリと我がエース様の肩が揺らいだ。

「気になるんでしょ〜?名前ちゃんの事…
青峰とヤバい事にならないように、言い出した責任もあるし、見守ってやるだけならいいんじゃねーの?」
「………」
真ちゃんは、黙って眼鏡のフレームを上げて、諦めた様に息を吐いた。
「…仕方がないのだよ…付き合え、高尾」
「アイサー!」
さーてと、面白くなりそうだぞっと♪


※※※

次の日・ジョイシティランド入口
9:45AM

俺は今日もジャンケンに負け続けた。
本当に何なんだ? 真ちゃんのジャンケンの強さは!?
…いや…もしかして、俺が弱過ぎるのか?

俺はチャリアカーを漕いで、やっと目的地に着いた。
暑い中漕いでたんで、汗だくになってしまってる。

今回は、真ちゃんの乗ってるリヤカーの中には、二人分の着ぐるみが用意されている。
…今日の蟹座のラッキーアイテムは、クマの縫いぐるみなんだと。
で、蠍座は、猫に関係する物なんだと。

…にしても着ぐるみとか、縫いぐるみにしてはデカ過ぎだろ。
真ちゃん曰く、大きい方がご利益があるそうなんだけど。
…全く…毎度の事ながら、このエース様のマメさには感心するぜ。

「もう時間が迫っている。早くこの着ぐるみを着けるのだよ高尾」
「はいはい…」
俺達は、急いで着ぐるみを着た。
と言っても、頭にはまだ被っていない。

だって、この暑さだぜ?
被り物とか冗談じゃないぜ。

とか言ってたら、後ろから聞いた事ある声に呼び止められた。
「あっ!!?ミドリーン!!!何それ〜二人とも可愛いー!!!」
「…げっ」よりによって、あいつ等に見つかった。

桃井ちゃんと…犬を抱えた黒子、そして。

「なぜ火神がここにいるのだよ!?」
「…それはこっちのセリフだ! つか、何だよ緑間、その恰好!?」

あーあ…早速いがみ合いし始めたぜ。
「真ちゃーん、早くしないと、あいつ等来ちゃうぜ?」
「…そ、そうだったのだよ。お前ら、邪魔するなよ?」

火神はきょとんとしている。
「…邪魔? お前ら、何をするつもりなんだ?」
「あんた達は、遊びに来たんだろ?」
俺は口を挿んだ。
「ああ…黒子に誘われてよ」
「僕は桃井さんに誘われました」

桃井ちゃんは、キラキラした目で言う。
「私は、大ちゃんと名前ちゃんとのデートをテツ君と見届けに来たの!」
火神はその発言に目を剥いた。
「何だと!?俺はそんな話は聞いてねえ!!」
「僕は聞いてました」

「なら話は早いわ。俺達は変装して近くで監視してるから、あいつ等の前では知らん振りしててくれ」
「分かりました。青峰君が変な事をしない様に見張るのですね」
「…そういう事なのだよ」
「おい、来たぞ、あいつ等!」
火神が見付けて警告する。

俺と真ちゃんは慌てて被り物を着けた。

「僕達も隠れましょう!!」
「ワクワクするわね!大ちゃん、頑張ってー♪」

…何か一人だけ目的が違うのがいるけど、取りあえず協力してくれるみたいだし…まぁいっか。

※※※

青峰と名前ちゃんが何か話している。
かなり砕けた雰囲気だ。

俺達も後を追って中に入る。

中に入ってすぐの所は、広場になっている。
そこから各場所に通じる通路が通っている。

名前ちゃん達は、どこに行くのか…?
俺と真ちゃんは耳をすまして、会話を聞き取るのに全神経を集中させる。

「バーチャルシューティングだってさ」
「…聞こえているのだよ」
「つか、俺達も入るの?この恰好で??」
「当然だ。行くぞ、高尾!」

………俺は、ある意味尊敬するよ。エース様のこのぶれなさ加減半端ねぇ。

※※※

ほらやっぱり。
係員がきょどってるぞ。

「…お客様…?…ですよね?」
「早くゴーグルを渡すのだよ」
「…失礼いたしました」

俺は係員に同情するよ。
ここのキャラクターじゃない着ぐるみ着た男二人の客とか、不審者以外の何者でもないもんな。

更に後ろの車には、黒子達が乗って来ている。
俺達は、一旦被り物を外してからゴーグルを装着して、また被り直した。
あ、ちなみに真ちゃんは、眼鏡の上にゴーグルを装着してるw

「じゃ、行っくぜーーー! Let's go!!!」

車は勢いよく滑り出した。

しかし…

着ぐるみで動きを妨げられているのと、被り物の視界が狭いのとで、撃っても全然当たらねえ!
俺、本来なら、この手のゲーム得意なのに…
当たらないから、フラストレーションが溜まりまくりだ。

それに引き換え。
「前の奴等は、撃墜しまくってんじゃん!」
「人事を尽くすのだよ!」
「…真ちゃん、これ、ゲームだぜ?」
まぁ、でも。
「せっかく来たんだもんな。楽しまなきゃ損だぜ。おりゃーーーっ!!!三段撃ち!!!」
「でかいのが出て来たのだよ!!」
「ちょっ…真ちゃん、銃投げちゃダメだぜ!? つか、本来の使い方をしろよwww!!!」

一方、名前ちゃんと青峰は、高得点を叩き出している様だ。
「…名前ちゃん…キャーキャー言いながら一匹残らず撃墜してるぜ…すげえwww」


あっちゃー…

途中で進路が分かれて、前の車と俺達は違うルートを走る。
前の車は、斜め右の扉に吸い込まれた。
「…何故、行先が違うのだよ!?」
「連中、成績パーフェクトだったからな。ボーナスステージにでも進んだんじゃねーの?」
「俺達も行くのだよ!!」
「真ちゃん、無理だって!車から降りたら危ねーから!!!」
「高尾、離すのだよ!!!」

俺が真ちゃんを羽交い絞めしてるうちに、俺達の車は扉を抜け、出口へ辿り着いた。

「お疲れ様でしたー」
係員が車の扉を開けて、ぎょっとした顔をする。
「あ」
そりゃそうだ。
中で、クマとネコの着ぐるみが羽交い絞めとかしてたら、びっくりするわな。

※※※

降りた後、名前ちゃん達が降りて来るのを待つ。
「クマちゃーん、遊んでえ」
「ネコちゃんもぉー」
「…何だか、子供に纏わり付かれてるのだよ」
「しょーがねーなぁ…」
時間潰しに、適当に子供の相手をしてやる。

「降りて来たのだよ!」
「クマちゃーん、行かないでー」
「こら、尻尾を引っ張るのは止めるのだよ!」
「クマちゃんは、今、忙しいからな?ネコちゃんではイヤかな?」
「クマちゃんがいいのぉー」

うーん…困ったな。あ、二人共降りて来た。
名前ちゃんと青峰が、仲良さ気に頭突き合わせてパンフレットを見ている。
真ちゃん…怒りのオーラがだた漏れだぜ…?

あ、更に二人の顔が近付いている…!

「クマちゃんは、悪いオオカミから赤ずきんを助けなければならないのだよ!!!…高尾、後は頼むぞ!!」
「ちょっ…!?真ちゃん!!??」

真ちゃんクマは俺に子供を押し付けるなり、名前ちゃん達のいる方へ全力疾走を開始した。
何する気だよ!? つか着ぐるみで、よくそんなに走れるな!!?

子供達に「ゴメンな?ネコちゃんも、クマちゃんを助けに行かなくちゃならなくなったよ!」と謝りつつ、俺も真ちゃんの後を追って走り出す。

真ちゃんは、名前ちゃんに軽く体当たりをかました後、勢いでよろけた名前ちゃんを担いで走り出した。
俺は追っかけながら唖然とする。真ちゃん!?正気か!?

後ろからは、青峰が怒りながら追っかけて来る。
「名前ーっ!! こらークマ野郎!!テメーどこへ連れて行く気だー!?」

先頭には、名前ちゃん担いだクマの着ぐるみ男、次は真ちゃんを追いかけてる着ぐるみネコ姿の俺、最後は恐ろしい形相の本気モードで追いかけて来る青峰。
しかも、全員足が速い。

夏の休日の、のんびりと遊ぶ家族連れで賑わうアミューズメント施設で、世にもシュールな追っかけっこが展開されている。
あ、黒子や火神達も茫然と見ている…w

…だけど、何で俺まで青峰に追いかけ回されてんだろうな?


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