真夏の夜の夢・一夜目-2-
お風呂上がって廊下を歩いていたら、火神君に出くわした。
彼も風呂上りらしい。
たったさっき砂浜ランニングから戻ったばかりなんだそうだ。
「それで飯もまだでよー…ああ腹減った!」
『お疲れー…デザート作ったんだけど、食べる?』
「サンキュー!勿論食うぜっ♪」
火神君は誠凛の残りを全部平らげた。
「苗字ー、俺まだ腹減ってんだけど、そっちに何かないか?」
『ええー!?まだ食べんの!?しょーがないなぁ…じゃあ、荷物持ってもらった分のお礼ね!』
私は、残りの材料で簡単な料理を作った。
「おっ、苗字は料理、うめぇな!」
『ありがとー…そう言えば、火神君も料理得意なんだよね? 料理得意な男性って良いよねー♪』
「…そ、そうか?」
ちょっと照れ気味な火神君が少し可愛く思えて、私もふっと微笑んだ。
和やかな空気が流れる。
「名前」
後ろから声をかけられて、振り返る。
緑間君が立っていた。
「大坪先輩がお前を呼んでいるぞ」
『あっ、そう言えば、マッサージ頼まれているんだった!じゃーね、火神君!…ゴメン真太郎君、すぐ行くね!!』
緑間君は、火神君を睨みつけると、私の手首を掴んで歩いて行く。
…何だか微妙に機嫌が悪い。
…どうしたんだろ?
仲悪い火神君を見たからかな?
※※※
私は、部員達の部屋に行って、マッサージをした。
流石に何人もやっていると、へとへとになる。
最後に緑間君と高尾君の部屋に周る。
「大丈夫?名前ちゃん?」
『…まー何とか!ここで終わりだし。横になって』
「あー名前ちゃんのマッサージは気持ち良いわー。次は真ちゃんの番ね!」
緑間君で最後…
私は全身の力を振り絞って、マッサージに集中した。
「…楽になったのだよ。ありがとう」
やっと終わったー……
私は、後は自室に戻って寝るだけ…と立ち上がろうとした。
が、緑間君が私の手首を掴んで離さない。
『真太郎君、どーしたの?』
「お前も身体が疲れているのだよ。マッサージするから横になれ」
『ええっ!?』
確かに私は少しフラフラしている。
『ああ…うん、じゃお言葉に甘えて…』
彼の手が、私の疲れ切った身体を優しく解していく。
温かい手が、とても気持ちいい…… … …
いつの間にか、私は睡魔に身を委ねていた。
※※※
緑間side
「…名前…名前!…完全に寝てしまったのだよ」
「…真ちゃん…どーすんのコレ…?揺さぶっても全然起きないよ?」
「名前は、誠凛の監督と同じ部屋だったな。だが時間も遅い。高尾、起きてるか見て来るのだよ」
「俺が!?」
「名前を、この部屋に一人で、置き去りにする訳にはいかないのだよ!万が一、誰かが来ないとも限らないのだよ」
「監督サンの部屋に、寝たままの名前ちゃんを連れて行っても、もし監督サンが寝てたらマズいもんなー…
分かったよ、行ってくる。真ちゃん、名前ちゃんに変な事するなよ!!」
「変な事とは何なのだよ!?」
「そんなに真っ赤になっちゃうと、何想像してんのかな〜ってwww」
「高尾っっ!!」
部屋のドアがドンっと叩かれ、俺達は慌てて名前に布団を被せて隠す。
「テメーら!!夜中に騒いでいるんじゃねえ!!!轢くぞ!!さっさと寝ろっっ!!!」
ドアを開けて、宮地先輩の怒号が飛ぶ。
「すいませんっ!」
高尾の悲鳴の様な声が響いた。
「うわったー…びっくりした…!!」
小声に変えて、高尾が呟く。
「見付かったら、ただではすまないのだよ…」
俺も肝を冷やして呟いた。
暫くして、様子を見に出た高尾が戻って来た。
「真ちゃん…やっぱりダメだわ。」
「寝てたか?」
「名前ちゃんは、やっぱり起きない?」
「さっきから、呼んだり揺すってみても、反応がないのだよ」
「しょーがねーな…じゃ、いっその事、ここで寝させちゃう?」
「…そうだな…やむを得ないのだよ」
ため息を吐いた俺は、押入れを開けて、新たな布団を一組取り出した。
二人で散々小声で揉めた結果、広さの都合もあり、名前は、二人の間に敷いた布団に寝かせる事になった。
勿論、お互いに紳士協定を結んで。
「では、明かりを消すのだよ」
俺は部屋の明かりのスイッチを切った。
自分の蒲団に戻る時、闇の中で蹴躓いて名前の上に倒れ込んでしまった。
「わっ!?」
「真ちゃん!…名前ちゃんを潰すなよ!」
「分かって…いるのだよ!」
言いながら、身体を起こす為についた手は、名前の身体の上にあった。
布団越しに手に伝わる柔らかな感触に、俺は顔が赤くなるのを感じた。
俺は慌てて名前の上から手を退けた。…心臓に悪いのだよ!
俺は、まだ煩い心臓を宥めながら布団に潜り込んだ。
手には、まだ柔らかな感触が残っている。
言い交してもいない年頃の男女が同じ部屋で寝るとか、破廉恥意外の何物でもないが…この場合は仕方ないのだよ。
…しかし、名前が横で寝てる事を意識すると、寝るに寝られない…
高尾はどうなんだろう?眠れたのだろうか?
そんな事を考えている内に、俺も疲れが出たのか…いつの間にか眠りに落ちて行った。