真夏の夜の夢・二夜目-1-
私は突然目が覚めた。
あれ?ここってどこだっけ…?
最初に目に入ったのは見慣れない天井。
ああそうだ。私は、バスケ部の合宿に来たのだった、と思い出す。
そして、誠凛の監督の相田リコさんと同じ部屋で… で…
左を向いた私は固まった。
え…?
何で和成君が寝ているの??
寝ている高尾君は、元々顔が整っている上に、普段の鋭い目つきが閉じているので、案外あどけなく可愛く見える。
もしや反対側に寝てる人って……
ああやっぱり真太郎君だっっ!!?
しかも、ナイトキャップ被ってるwww可愛い〜!
うわぁ睫毛長っっ!眼鏡外して寝てると、更に美人顔が際立つな、この人は…
私は身体を起こそうとした。
が、右手が固く握られている…緑間君に。
…もしかして、寝ている間は、ずっとこの状態だったんだろうか?
私は顔が真っ赤になった。
「し、真太郎君!手を離して…」
私は寝ている緑間君に、布団に入ったまま囁く。
緑間君は、眠りながら秀麗な顔を少し顰め、微かな声で何か言おうとしている。
私は、その言葉を聞き取る為に、彼の口元に耳を寄せる。
「…イヤなのだよ!」
ええっっ…!?
抗議する暇もなく、私はそのまま抱き込まれた。
緑間君は完全に寝ぼけて、私を抱き枕状態にして寝ている。
布団の中の密着状態に、私は心臓が爆発しそうになった。動悸が激しい。
私は、緑間君の大きな身体にがっちり押さえられていて、身体を動かそうとしてもびくともしない。
うっわー!どうしよう!?恥ずかしいよ!
「…ん〜」
高尾君の方から声が聞こえた。
「ふぁ…よく寝た〜…って、名前ちゃん!?」
『助けて、和成君!』
「おいっ!?真ちゃん、なに名前ちゃん襲っちゃってんの!!??」
「…む?……名前…?」
ぱちりと目を覚ました緑間君は、一瞬きょとんとして、腕の中の私を見つめた。
「名前っっ!!??」
真っ赤になった緑間君は、私を離して飛び退った。
「真ちゃ〜ん…紳士協定はどうしたのー?」
「す…すまないのだよ。俺も寝ぼけていたのだよ!」
緑間君は眼鏡をかけて、狼狽えながら私に言う。
「名前ちゃん、真ちゃんにマッサージされて、そのまま寝ちゃったんだよ。覚えてないの?」
「…誠凛の監督は、もう就寝してるとの事だったので、そのままここに寝かせたのだよ」
『…あ〜…ごめん…二人とも』
やらかした…orz
でも、二人の寝顔を見れたのは、ちょっとラッキー☆…って、駄目だろ、私!!
※※※
私は慌てて起きて、部屋に戻り、身繕いした後に、朝食の支度をする為に台所に入った。
リコさんは疾うに朝食を作り始めている。
「おはよー苗字さん!」
『おはようございます!』
リコさんは、ふふふと含み笑いをした。
「よく寝れた?」
『…ええ。何とか』
「それは良かったわ。それで、苗字さんは夜中戻って来なかったけど、どこで寝てたの?」
『うっ…!それは…聞かないで…』
「若いって、いいわねー♪」
『…リコさんと一つしか違いませんよ…』
「今夜は、ちゃんとこっちの部屋で寝るのよね?」
『その…つもりです』
「夜に恋話聞かせてくれるわねっ!?」
目をキラキラさせて追求してくる。やはり彼女も女の子なのね…
『えーっと…ああ!リコさん、お鍋噴いてるっ!!』
「あっ!きゃあ!!」
『水かけちゃダメです!火を止めて!!!』
「…んー、ちょっと味噌汁が辛いわね…」
『だからって砂糖やジャムを入れちゃダメですよ。辛いなら、お湯で薄めてください。プロテインも入れないで…!』
今日の朝食は、スペイン風オムレツとソーセージのグリルとシーザーサラダと人参のポタージュスープ。
「お、いいな秀徳、あっちは美味そうだな!」
「あんた達はこっちよ!」
「残すなよ。最低三杯は食えよ!…特に黒子!」
選手に交じって食事していたら、誠凛のキャプテンの日向さんがやって来た。
「すみません。秀徳のマネージャーさんにお願いがあるのですが…」
『…何ですか?』
「誠凛の分のご飯も一緒に作ってくれませんか?…こちらのは監督が作ってはいますが、何分料理の経験が浅くて…
図々しいお願いで恐縮なんですけど、俺達も料理の出来る連中を手伝わせますから…
俺達の命がかかっているんです!お願いします!!!」
ああ…うーん…
あれは…大変だろーな…
聞くと、前もって練習したカレーライスや他何品かは作れる様になったんだとか。
でも、基本的な処理をしなかったり、材料を丸ごと使ったり、得体の知れない食材を突っ込んだり、火加減を間違えたり、油断するとサプリを入れたりしてしまうらしい。
私も一緒に料理してて、気が付いたヤツは何度か止めていたもんな…
大坪さんは私に聞いてくる。
「苗字…どうする? マネージャーが大変なら無理をしなくても…」
私は考え込んだ。
正直…今でも横で料理見てて、ハラハラしてるもんな。なら、いっそ一緒に作った方が気が楽かもしれない。
『…そうですね。料理出来る方にお手伝いしていただけて、同じメニューで良いなら一緒に作りますよ』
日向さんは涙を流さんばかりに喜んだ。
「あっ…!ありがとうございますっっ!!」
あ…誠凛の席の方で、万歳三唱が聞こえる…w いいのか…?