ラッキーアイテムは猫
おは朝観ながら朝食を食べるのは、最早毎日の日課となりつつある。
何だかんだ言っても、緑間君の影響を受けているなぁ。
「今日の10位は蟹座!ラッキーアイテムは猫!
ラッキーパーソンは、蟹座の異性!…」
私はオムレツの欠片をポロリと落とした。
『猫…??』
なんじゃそりゃ? 大体猫って、アイテムと言って良いのか???
おは朝の熱烈信者の彼…これはどうするつもりなのかな? やはり人事を尽くして用意するんだろうか?
※※※
登校途中、公園の脇を通ったら、上から猫の鳴き声が聞こえた。
『…?なんで上?』
見上げたら、木の上から、子猫が降りられなくなっていたのが見えた。
『ありゃ〜』
なんか、放って行くのは可哀想な気がする。
まだ、時間の余裕はあるし…あそこなら枝を伝って登れそうかも?
私は周りを見回した。誰もいない。制服姿で登っているのは見られたくないからね。
『よっこらせ』何とか登りきり、猫に手を差し伸べる。『おいで〜』
猫は一声鳴いて、私の肩に飛び乗った。
私はゆっくり降りはじめる。
最後の一枝に足を乗せようとしたら、足を滑らせた。『わっっ!?』
猫はそのまま着地、私は背中から落ちた。
『痛た…』打ち身以外の怪我はなさそうだったので、取りあえず立ち上がって、制服の泥をはたく。
制服、汚れちゃったなぁ…どこが「ラッキーアイテム」なんだコラ。足に身体を擦り付けて誤魔化すな。
そのまま私は学校へ足を向けた。
「ニャー」
…?鳴き声がついて来る。
足元を見ると、先程の子猫が私の横を歩いていた。
『おまえ〜、どこの子? 学校まではついて来なさんなよ?』
途中でどこかに行ってしまうと思いきや、結局学校までついて来てしまった…
どーしようか…?
途方に暮れながら校門を入り、校庭に足を踏み入れる。
猫は構わずに私の横をついて来ていた。…もう知らんわ。
下駄箱で靴を履き替えていると、「おはよー」と声がかかった。
私は、流石に猫を放っておく事が出来なくなって、抱き上げた所だった。
私は向き直って、挨拶を返した。『おはよー、高尾君。今日も朝練?』
高尾君は目を丸くした。
「苗字ちゃん、何その猫!?どーしたの!??」
『いや、それがね…』
高尾君の後ろから、緑間君が現れた。
「苗字か。今日は一日俺と一緒にいるのだよ」
私を見た緑間君が固まった。
『緑間君、おはよう。今日のおは朝占いでしょ?
丁度いいわ。ラッキーアイテムもゲットして来たよー☆ほらっっ♪』
あれ?緑間君、心なしか青ざめている様な?
「…ち…近寄るな…!」彼は後ずさった。
どうしたんだろう???
高尾君も緑間君の反応に驚いているみたいだ。
「真ちゃん…??」
※※※
-所変わって教室-
「真ちゃんが猫苦手だってーwwww!?似合わねーwww」
高尾君、笑い過ぎ。
「昔、ひっかかれた事があるのだよ」
緑間君はむすっと答えた。
ちなみにこの猫は、私の膝の上で大人しくしている。
猫好きなクラスメイト達が、好奇心満々で覗きに来ていたりする。
白黒斑の猫なので、私は某ファンタジー小説に出て来る猫と同じ名前を付けた。
『ホイスカーズは大人しいよ?』
「もう名前、つけたんだ?」
苦手な人がいるのは分かるけど、まさか緑間君が猫が嫌いだとは思わなかった。
大きな男子高生が、子猫に怯える図って、かなりシュールなんだけどw
『まぁ、教室に猫持って来ちゃった事は悪いと思うけど、放っておくのは可哀想だしさ』
「苗字の制服に泥が付いているのは、それでなのか?」
『え?』
「髪にも葉っぱが付いているのだよ」
緑間君は、丁寧に私の髪から葉っぱを取ってくれた。
『…あ、ありがとう』
猫は私の膝の上で、伸びをした。
緑間君は、びくっと手を引っ込めた。
高尾君「で〜?真ちゃんはどーするのさ?」
「何がなのだよ?」
「今日は蟹座は10位で、ラッキーアイテムとラッキーパーソンがセットになっているんだぜ?
苦手〜とか言ってる場合じゃないんじゃないの?」
「…ぐ…」
詰まる緑間君に、更に私が追い打ちをかけてみる。
『人事を尽くそうとしている緑間君に、せっかくラッキーアイテム貸そうと思ったのになー
この子は何もしていないのに、嫌われちゃって可哀想だなー』
「…う…」
「分かったのだよ! 今日は一日付き合ってもらうのだよ!!」
半ば自棄な緑間君の声が響いた。