それから


終わってしまった夏休み


(海常高校青春白書より。小説ネタバレ注意!)


今日は、夏休み最終日。部活はお休み。

明日からは新学期だけど、部活しながらでも、宿題や課題は毎日少しずつこなしているから大丈夫。
前世では、いつも慌てて終り頃に、提出日が近い課題から片付けていたっけな。
今では一人でやったり、真太郎と一緒にやったりしているから、慌てないで済んでいる。

そして、外国で仕事していた家族が、一時的だが久しぶりに帰っていた。
急に賑やかになった我が家。
家族達は、春から私が飼い始めた猫に驚いていたが、お互いにすぐ馴染んだ模様。

そして、母に用事を頼まれた。
横浜に馴染みのブティックがあるから、注文した物を取って来て欲しいと言うものだった。

私が出かける支度をしていた時、真太郎から電話がかかってきた。
《今日、これから一緒に出掛けないか?》
『お誘いは嬉しいけど、ゴメンね。今日は、母から頼まれた用事があるから…』
《なら、俺も一緒に行くのだよ。…それでお前に不都合がないのならな》
その嬉しい申し出に、私は快諾した。

※※※

『ゴメンね。…横浜まで用事に付き合せてしまって』
「俺が名前と一緒にいたいのだから、構わないのだよ」

もう、夕方になっている。
私達は他愛無い話をしながら、ゆっくりと繁華街を駅に向かって歩いていた。

その時、華やかな女性達の一群とすれ違った。
その中の一人には何となく見覚えがあった。
…確かモデル…だっけ? やっぱり美人だなぁ。

でも、その女性達は、不満タラタラなご様子。
「信じらんない!何アレ!?」
「合コンの意味、分かってんのかしらねー?」
「私達放置で、男達だけで盛り上がってさー。ありえない!キセリョまで…!」

…ん?…キセリョ?
どこかで聞いたよーな…?

私は思念に気を取られ、小首を傾げながら歩いていたので、些か前方不注意になっていたらしい。

どん!

真太郎が注意しようとしたが既に遅く、人にぶつかってしまった。
しかもぶつかった相手は…

『涼太君?』

黄瀬涼太だった。
彼は、海常高校のスタメン達と一緒にいたが、何か様子がおかしい。

「綽名っち…」
『どうしたの?』…彼らしくも無く、落ち込んでいるみたいに見える。
いや…黄瀬君だけじゃなく、そのメンバー全員が。

『…大丈夫?…何かあったの?』
私は首を傾げて黄瀬君を見上げた。
「う…綽名っち〜〜〜!!」黄瀬君は目を潤ませた。

いきなり腕を引かれ、私は黄瀬君に抱き付かれた。
『えっ…!?ちょっ…!』
私はジタバタと抗ったが、黄瀬君の力には敵わない。
がっしり抱え込まれてビクともしない。

「きっ黄瀬っ!!…何してるんだ!!!??ずるいぞお前ばっかり!!!俺にも名前ちゃんを…っ!」
「こら森山っ!!どさくさに紛れて何を言ってる!?」
笠松さんが真っ赤になりながら、森山さんを羽交い絞めにしている。

私は真太郎にぐいと掴まれて、黄瀬君から引き剥がされた。
真太郎は、声に怒気を含んでいた。
「黄瀬、名前に手を出すのは止めるのだよ!!」

「緑間っち…。何でこんな日に綽名っちと一緒にいるんスか?バスケ部の用事っスか?」

真太郎は、黄瀬君の胡乱な視線に対抗して、眼鏡のブリッジをくいと上げてフンと鼻で笑った。
「こいつの用事の付き合いがてらにデートしているのだよ」

「「「「「デートぉ〜!!!???」」」」」

「何と羨ましいっ!!!」
「落ち着け、森山!」
今度は小堀さんが押さえている…w
他には真っ赤になって、口をぱくぱくさせてるのが約二名。

「綽名っち…嘘でしょ?」黄瀬君が引きつりながら聞いて来る。
『いや、本当だよ?…私と真太郎は付き合ってるよ?』
「またまた〜…付き合ってるって、その用事にって意味っスよね?」
真太郎は、私の肩を抱いて自身に密着させた。
「名前と俺とは恋人同士なのだよ」

改めて真太郎の口から聞くと、照れてしまう。
私は顔を赤らめて肯いた。

「「「「「恋人同士だとーーーーーっ!!!????」」」」」

「なんて甘美な響きだ…!!!」
「俺達は合コンに失敗したと言うのに…!」
「緑間っちに負けたっスか…俺」
黄瀬君はがっくりと膝をついた。

「…それなら、成功体験者にアドバイスを貰うのはどうだろうか?」
小堀さんが提案した。
「そうだな…急ぎでなければ、お願い出来るだろうか?」
笠松さんにも頭を下げられた。

真太郎は戸惑いながらも私に聞いた。
「名前、時間は大丈夫か?」
『…あまり遅くなると、家族が心配するから…連絡して訊いてみるね』

母に連絡を取って許可を貰い、私達は近くのファミレスに移動した。

彼等の話を聞くと、合コンやって、失敗してしまったらしい。(しかも二度目)
原因は…女子達を放って、バスケ話に熱中し過ぎた事。
一回目の失敗は…笠松さんが何かやらかしたらしいのだけど、詳しくは教えて貰えなかった。

さすがの黄瀬君もフォロー出来なかったらしい。…所詮は海常バスケ部も、バスケ馬鹿の集まりか。

聞いた私は溜息を吐いた。
『…合コンって、お互いを知る為に親睦を図るのが目的だよねぇ…涼太君が付いていながら何やってんの?』
「…面目ないっス」

「それで、緑間君と苗字さんとの馴初めは? 先ずは出会いから教えてくれないか?」
小堀さんの質問に、真太郎が答える。
「こいつと俺とは、同じクラスで席が斜め前で近かったのだよ」

…………

「それだけ?」
「それだけだ」
「…何て手軽な…参考にならないっスね」
黄瀬君はがっかりした様に溜息を吐いた。
…参考にならない程手軽な出会いで悪かったな。私は黄瀬君を軽く睨んだ。

「それで、二人はどんな会話をしているんだ?…バスケ以外で」と、笠松さん。
「そうっす!お(れ)達はそ(れ)が知(り)たいっす!!!」
「緑間っちは…女子ウケする話題には興味なさそうっスよね…話題、あるんスか?」


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