もう一つの帝光祭
(*公式小説がネタ元[Welcome to 帝光祭]より一部引用有り☆
未読の方はネタバレ注意!細かい時間軸は無視!)
※※※
私は、桃井さんと同じクラスだ。
文化祭では、クレープ屋をやる事になった。
それで、今、ひと騒ぎが持ち上がっている。
桃井さんが張り切って、裏方でクレープ焼こうとして…調理場に、無残な黒こげの残骸が積み上がっていた。
『…和泉ちゃん、何これ?どーしたの』
「さつきがクレープ焼こうとして…」
あ…☆さいでっか。
『…分かった…皆まで言うな』
「それで、さつきに合うサイズのウェイトレスの服は用意してないし…今は出て行ってもらってるけど、正直裏方の手が足りないの。
苗字さん、確か料理部だったよね。クレープ焼ける?」
『…一応は。前にミルクレープ作った事あるからね。ちょっとやってみてもいい?』
薄く均等に火を通すのは、慣れないと少し難しい。
『……これでどうかな?』
「あ!美味しいよ!!薄さも丁度いいし、焼き色も綺麗」
『良かった。じゃあ、私は焼き係やるね』
「名前ちゃんのクレープ、評判良いよ!」
『それは嬉しい…けど、時間早い割には、お客多くね?』
「クレープの評判が広がって、順番待ちが出来てるよ!」
『うおおお〜〜忙しいよーーー!!』
私は、次の交替が来るまで、せっせとクレープを焼き続けた。
※※※
『…は〜…やっと解放された…』
私は首をこきこきと鳴らしながら、廊下を歩いていた。
廊下は、文化祭で来た父兄やら、他校生やら、帝光の生徒やらで割とごった返している。
再び、自分の教室[クリーミィ☆クレープ]の近くを通りかかった時、聞き慣れた声がした。
「え〜、クレープ焼き係変わったのー?…じゃあ、綽名ちんはいつ来るのー?」
あの声は!!!
私はひたと足を止め、手前の柱の陰に身を潜める。
…紫原敦!
最近、私は彼に散々困らされている。
料理部でお菓子を作った時は、高確率で先ず私のが狙われる。
ったく、バスケ部には近付いていないのに、何の因果だよ。
私は軽く舌打ちして、回れ右をして教室を離れる。
君子危うきに近寄らず。
暫く歩いていると、行列が目に付いた。
『…縁日…?』
縁日なんて、行列する程のものか…?
私が首を捻っていると、理由はすぐに判明した。
綺羅綺羅しいフランス18世紀の将校風の衣装を纏った黄瀬君がいた。
ああ…相変わらず派手だなー…
遠くから見る分には、目の保養になる。モデルやってるだけに、凄く恰好良い。
でも、彼が私の近くを通り過ぎた時、独り言の呟きが聞こえてしまった。
「…全く紫っちは、評判のクレープを食べ損ねたからって、俺に当たるのも大概にして欲しいっス」
マジでか。
…もしかして私は、完全にロックオンされているんだろうか…?
「見ーつけた!」
私の後ろから、のんびりとした声がする。
私は一瞬固まってから…ギギィっと振り向く。
『ギャーーーーーーーーッッッ!!!!!!』
紫原君の姿を見た私は絶叫した。
2m近い巨人が、レースフリルふんだんにあしらった重厚なドレスを身に纏っているのだ。
破壊力抜群である。
「な、なんっスか!?」
黄瀬君が慌てるのに目をやってる余裕等はない。
私は駆け出した。
後を見ると、ドレス姿の紫原君が追っかけて来ている!
「綽名ちん、クレープ焼いて〜!!」
『その姿で追っかけて来るな!!!怖すぎるわーっっっ!!!!』
まるでフリルとリボンをつけた戦車に追われてる気分だ。
私は、そんなに足は速くない。
そして紫原君は、あの巨体と口調に似合わず俊敏で手足のリーチが長い。
走り難いドレスを着てても、普段なら、私はあっという間に捕えられてしまう。
でも校舎の中は、文化祭で色々な看板やら障害物やらが多く、人が沢山歩いている為に、巨体な上に更に嵩増しのドレスを着ている紫原君は、中々前に進めない。
小柄な私は、人や障害物をすり抜けて、校舎を出て校庭を横切り、また異なる校舎に入った。
これで撒けてればいいんだけど。
※※※
私は目に付いた教室に飛び込んだ。
そこは、占星術研究会の教室だった。
確か、占星術研究会の副会長が私の知己だったはず。
『清水君!』
幸運にも、その彼はいた。
「何だ?どうしたの、苗字さん!?」
『追われてるの、匿って!!』
「あ…ああ!?…まぁ入って」
私は、ブースの中に入れて貰って、フード付きコートを被せられた。
「俺のだけど着ていろ」
『ありがとー、恩に着る!』
「恩に着るなら、ついでに占い係やってくれよ」
『いいけど…人使い荒いなぁ。なら、タロットと解説本貸してちょーだい』
そこへ緑間君が入って来て、私の隣のブースに腰を掛けた。
咄嗟に、私は目深にフードを被る。
何故か彼の机の上には、占い用アイテムと思しき物はなく、照明器具と法螺貝だけが置いてある。
法螺貝占い…とかあるんだろうか…?
法螺貝鳴らして、その音で吉凶を占う…とか???
そこまで考えて、私はある事を思い出した。
そうだ、[おは朝]だ!
確か、今日の蟹座のラッキーアイテムだった筈だ。つか、よくそんなもん持ってたな! 小泉八雲かよ!!?
(※小泉八雲は、女中を呼ぶのに法螺貝を使っていたw)
彼は幸いに私に気が付いてない。
このまま大人しくしているか…と思っていたら、外が何やら騒がしくなり、紫の巨人がずかずかと入って来た。
「あー、ミドチン〜」
「なんて恰好をしているのだよ!?紫原!!!ここには菓子はないぞ!?」
緑間君は、悲鳴に近い声で突っ込んだ。
「えー、ドレスだけどー?それより、綽名ちん見なかった?」
「…それは誰の事だ?」
「んー、苗字名前って名前の人〜」
「…そいつなら、来ていないのだよ」
…即答した。緑間君は、私の名前を知ってるのかな?
私は息を詰めて、二人のやり取りを窺っている。
「ん〜じゃあ、ここじゃないのかなぁ?この校舎に入るのを見たんだけどー…ミドチン、もし綽名ちん見付けたら教えてね〜」
紫の巨人は、ドレスを翻して、風を起こしながら去って行った。
緑間君に気付かれる前に、ここを出て行きたいけど、匿われた交換条件を出された手前、暫く占い師を努めなければならない。
でも、今はまだそんなに客は来てない。
私は、タロットカードの解説本をつらつらと読みながら時間を潰していた。
占星術なら、本来はホロスコープ使って占うものだが、タロットと占星術は関連性があるので、用意しておいたのだろう。
「やっほー、ミードリン!」
これまた聞き覚えのある声だった。今度は桃井さんだ。
桃井さんは緑間君の対面の席に座って、話し出した。
聞くとも無しに聞いていると、どうやら緑間君は会長に頼まれて、おは朝グッズに釣られて助っ人をしてるらしい。
そして、その流れで緑間君は桃井さんを占う事にしたらしく、私の着用しているのと同じ、フード付きのコートを羽織った。
緑間君がそれを着ると、すっごく怪しい雰囲気になるwww
私はフードの下で密かに笑いを噛み殺した。
しかし、占うのに[おは朝]を使うのか。
それってもう、占い師じゃねーしw
そして緑間君は、占おうと思ったら、何やら思い出した事があるらしく、桃井さんと口論を始めた。
理由は……桃井さんが牡牛座だと言う事だ。
[おは朝]によると、今日は蟹座と牡牛座は相性が悪く、関わり合いになりたくないと、緑間君が彼女を追い出しにかかった。
緑間君のあまりの理不尽な対応に、さすがの桃井さんもキレた。
「もう、ミドリンがやるって言ったんじゃない!いいわよーだ!!私は違う人に占ってもらうもん!!」
桃井さんは勢いよく言うと、緑間君の席を立って、私の前にどっかと座った。
「貴女でいいわ!占ってちょーだい!?」
他人事だと暢気に構えていたら、とんだ巻き添えである。