バスケの時間です
球技大会が開催される。
全校生徒は、必ず何か一つの競技に出なくてはいけない。
ただ、球技系クラブに入部してる生徒は、同じ競技は除外される。
うぁー、体育苦手なんだよなぁ…
HRで決まった私の球技は…なんと[バスケ]だった。
私は机に突っ伏した。
「おーい、名前ちゃん、どーしたの? 大丈夫かー??」
横から高尾君が突っついてくる。
「いーな、バスケだって。羨ましー」
高尾君はサッカー、緑間君はテニスだとか。
『あの…私はバスケ部じゃないからね? つか、運動全般苦手だっつーのに!!』
緑間君は鼻で笑った。
「苦手なら、何をやっても同じなのだよ」
喧しいわ!!そこを突かれると痛いからやめろ。
それでも、何も出来ないのも癪な話だ。
付け焼刃でも、練習の一つでも…でも場所がないかなぁ。
秀徳の体育館なんて恐れ多くて論外だし、ストリートでも、こんな下手くそが独占するのも悪いしな…
『せめてシュートの練習でも出来れば…』私はため息をついた。
「……練習するなら、教えてやらない事もないのだよ」
マジか!?
秀徳のエース様直々に教えてくれるなら心強い!!
『いいの!?』
「調理実習の時の礼なのだよ」
『ありがとうっっ!』
私は感激して、緑間君の両手をがっちり掴んだ。
緑間君はびっくりして…あれ?顔が少し赤い?
※※※
部活が終わってからの自由練習の時間、少しだけ体育館の片隅で練習をさせてもらった。
「まずはフォームを整えることから始めるのだよ」
緑間君は、見本に一発スリーポイントを打って見せてくれる。
以前、練習の時に見ているけど、何度見ても見惚れる。
あまりの美しさに、私は息を飲む。
帝光時代に、バスケの試合をもっと観ておけば良かった。
そんな後悔が私の心を走る。
緑間君は、懇切丁寧に教えてくれる。
最初はボールすら持たずにコートに立つ。
リングに対して真直ぐに身体を向けて…足は軽く肩幅くらいに開いて、軸足を少しだけ出す。
「膝は軽く…力むな、曲げすぎない様に…」
緑間君は、後ろから軽く私の身体に触れて、一つずつチェックする。
力むなと言っても、身体が近くて…意識したら緊張してしまう。
「よし…ではボールを持つのだよ。入るイメージを持て」
ボールは手を広げて、手のひらを付けない。力まない。
うう…中々難しいな。
「もっと肩の力を抜くのだよ…苗字は、手が小さいのだな」
そう、私は女子の中でも、特に手が小さい方だ。
バスケットボールを持つのも手に余る。
がこん!!
ボールはリングに弾かれた。
「何度も練習すれば、入る様になるのだよ。身体を楽にして…フォームは崩すな。リズムを掴め」
『うん!』
緑間君は、これを何度も何度もやり続けていたのか…
不思議な気持ちになっていく。
続けているうちに、いつの間にかリングしか目に入らなくなった。
左手は添えるだけ。ボールを構えて、身体を伸ばすと同時に腕を上げる、手首を素早く反してボールをリングに放る。
一連の流れ、一連の動き。
シュッ!…ダン!!
あ…あれっ!? 入った!??
「苗字、入ったのだよ!!!その動きを忘れるな!」
息を切らして返事が出来ない私の頭をくしゃっと撫でる。
私よりも嬉しそうなんだけど…
『ありがとう緑間君、私も頑張るね!』
「人事を尽くすのだよ。慣れたら少しずつ距離を取って投げてみろ」
優しい瞳に、胸が高鳴る。
これを確実に体得する為に、また練習を続ける。
結局、時間ギリギリまで練習してしまった。
入ると俄然、面白くなる。
今度、ストリートでも練習してみよう。
「体力を向上させる為に、基礎練もするといいのだよ」
『…デスヨネー』
「何故そこで棒読みになるのだよ?」
横では高尾君が笑っている。くっそー、覚えてろ。
※※※
球技大会当日は、練習の甲斐あって、まずまずの活躍が出来た。
二人からの応援も受けたおかげで、点も入れられた。
そして二人とも、それぞれの球技でも格好良かった。
緑間君のテニスは、どこかの王子様みたいだし(笑)、高尾君のサッカーは[鷹の目]が大活躍した。