隠された真実
私は、何気なくテレビを点けた。
この朝の時間は、このチャンネルは決まって「おは朝」をやっている。
良く当たると評判の占いだ。
[…今日の9番目は蟹座!隠された所の真実に注目してみて!!…ラッキーアイテムは、ネッシーの縫いぐるみ♪]
私は、自分の星座の占いを聞いて、嘆息した。
9番目って、ビミョーwww
言ってる意味も、よく分からないし…
大体、何だよ、ネッシーの縫いぐるみって。そんなの、そこらにある訳ないじゃん。
おは朝のラッキーアイテムって、大抵無茶振りばかりだな。
さてと、そろそろ行くかな。
私はテレビを消して、玄関を出た。
誰もいないけど、『行って来ます!』と声をかけた。
家族はいるけど、外国で商売している。だから私は実質一人暮らしだ。
※※※
学校 -休み時間-
体育を終えて、グラウンドから教室に戻る途中、校庭の片隅で妙な物を見付けた。
…これは…どう見ても。
ネッシー…???
灰色の首長竜の形をした物体、いや縫いぐるみだった。
何でこんな所に?
ここで否応無しに、私の頭に浮かんだ一人の人物がいる。
ネッシーの縫いぐるみと言えば、おは朝なのだよ。
帝光で、おは朝の蟹座のラッキーアイテムと言えば。
『……緑間真太郎…?だよな、やっぱり』
ここ、黒バスの世界だし…超有名なバスケ部のキセキの一人じゃん。
出来れば関わり合いになりたくないなぁ…だって、きっと面倒な予感しかしないもん。
今まで多少、リアルに知り合ったキセキの連中も、原作通りに一癖も二癖もある奴等ばかり。
緑間君は、今までクラスも違っているし、すれ違う位はあるが、特に関わり合いにはなっていない。
それだけに、下手な親切心で自分から関わり合いになるのは躊躇われた。
…まぁ、あの変人っぷりは、遠くから見ている分には面白いんだけどねw
でもなぁ…彼は、おは朝信者で有名なくらいで。
っつー事は、これはきっと落して困っているんだろうし…蟹座、微妙に良くない順位だし。
いくら関わりたくなくても、相手が誰でも、知ってて困っているのを見過ごすのも、寝覚めが悪い。
私は、ネッシーを拾い上げて、ちょこっと付いた土を払って矯めつ眇めつ観察した。
『うーん…』
よく見ると、少し綻びて中の綿が出ている箇所があるな。
私は、それをそのまま教室に持って帰った。
三時間目の休み時間に、ソーイングセットを持ち出して、縫いぐるみの綻びを繕った。
縫い物は、どちらかと言うと苦手だけど、昔マスコット位は自作した事はあるので、これ位の芸当なら何とかなる。
昼休みに、私はネッシーを持って緑間君のクラスに行った。
教室を覗いてみたら、緑頭はいなかった。
どこか別の所で食べているのかな?
私は近くにいた男子生徒に、緑間君の席の場所を聞いた。
そして、教えて貰った席の机の上に、ネッシーをそっと置いて教室を出た。
※※※
放課後 -バスケ部の部室-
-赤司side-
真太郎の手には、今日のラッキーアイテムのネッシーの縫いぐるみがあった。
確か、朝練の後に、無くして探していた筈だ。
「真太郎、ラッキーアイテムは見付かったのか」
「…昼、教室に戻ったら、机の上に置いてあったのだよ」
涼太も興味深そうに話に加わる。
「へー、誰かが持って来てくれたんスかね?」
「…それが、持って来たのが別のクラスの女子みたいなのだが、誰なのか皆目分からないのだよ」
「伝言も、名乗りもしなかったのかい?」
「俺の席を聞いて、置いてそのまま戻ったらしい…しかも、これが丁寧に繕ってあるのだよ」
「…奇特な人もいるもんスね」
「せめて礼くらいはしたいのだが。奥ゆかしい女子もいるものなのだよ」
真太郎の言葉に、俺はふと、とある光景を思い出した。
(そう言えば…俺のクラスで、休み時間にソーイングセットを出して、これとよく似た縫いぐるみを繕っていた女子がいたな…)
「…苗字名前…?」
「赤司?」
真太郎は、思わず呟いた俺を不思議そうに見る。
「いや、何でもない」
確証はないから、断言はできない。
でも、俺は何となく彼女ではないかと確信していた。
成績が俺の次に良くて、マイペースで、俺の誘いにも乗らない女生徒。
「…やはり、一軍のマネージャーに欲しいな…苗字…」
※※※
-美術室-
-名前side-
カシャーン
「苗字さん、どうしたの?」
私は、絵筆を取り落した。
…何だろう…?
今、寒気が背筋を走って行った様な気がした。
『や、何でもない!』
私は取り落した筆を拾って、再び絵を描き出した。
放課後、見かけた緑間君は、ネッシーの縫いぐるみをしっかりと抱えていた。
無事に持ち主の元に戻った様で、私は人知れず安堵した。
次の日、何故か赤司君が私の席にまで来た。
彼は私を見ると、緋色の猫みたいなオッドアイを楽しそうに煌めかせた。
そして「真太郎が、ラッキーアイテムを直して、届けてくれた人に礼を言いたいそうだよ」
と、一言だけ言い残して去って行った。
周りはキャーキャー騒いでいるけど、私は呆然と固まった。
『どこまで知ってんの…?』
赤司征十郎、恐るべし。