バスケ部と関わる-1-




桐皇学園 昼休み

私は良君とご飯を食べようとしていた。
2人で教室で机を付けて、お弁当の蓋を開けた。

私は思わず感嘆した。
『うわー…良君、いつも凄いね!』
桜井君のお弁当は、可愛いクマのキャラ弁だった。
ハンバーグはクマの顔、チーズを切って耳になってる。
他にも、ハート型の卵焼き、花型に巻いたハム等…可愛らしく華やかに、お弁当箱の中を彩っている。
以前に一部貰った事があるんだげど、すごく美味しいんだ。

しかもこれが母親とかではなく、自作なんだからびっくりだ。

…どーやったら、こんなに料理上手になれるんだろ?

不意に、良君の後ろから色黒の手が伸びて来て、良君のタコウィンナーを攫って行った。
「…青峰さん…」
良君は身体を縮こまらせて、後ろを振り返る。
「ん、うめ」
『大輝君!なに他人のお弁当奪ってんの!?自分のがあるでしょ!?』
「あー…腹減ってたから早弁で食ってしまったわ」
「あ…あの、青峰さん、これ…作って来ました」

桜井君は、もう一つ、別の弁当を出して渡した。
「おー、サンキュ。じゃ、名前行くぞ」
『…へ!?』

青峰君は、私の手を取って立たせ、お弁当と共に私を屋上まで引っ張って行った。

※※※

屋上の階段室の上に上り、青峰君が良君作のお弁当を出す。
私は、そのお弁当を見て目を剥いた。

……女の子の顔を模ったキャラ弁。
『……良君…凄い』
青峰君は目を輝かせた。
「おー、マイちゃん弁当!!すげーわ、良!」

…マイちゃんって、こんな顔しているんだ?
少し漫画ちっくな絵でデフォルメされている。

正直…似てるって言われているけど、ピンと来ないな。
この子の方が断然可愛いじゃん…

キャラ弁見て落ち込むとか、どうかしてるよ、私…

…良君は、絵の才能もあるみたい。

青峰君は、自分の弁当があるのに、私の出したお弁当から卵焼きを一欠片攫って、口の中に放り込んだ。
私は抗議した。
『大輝君!!良君が作ったお弁当あるのに、わざわざ私のから持って行く事しないでよ!!』
「んー、うめ。…あ?これはお前の母ちゃんが作ったのか?」
『一応自作よ!』

お弁当は、ある程度は、母作の夕飯の残りを使う事もあるが、それで足りない分は、自分で作って足し入れている。
その卵焼きは自作だ。

青峰君は、しげしげと私を見た。
『何よ?』
「いや…お前、本当に料理出来るんだな」
『何で?…前に言った事は嘘だと思っていたの?』
私は、顔を顰めて見せた。
「そーじゃねーけどよ…偶にいるだろ?自分で料理が出来ると思っているけど、実は…ってヤツ」

『?そんな人もいるんだ…?』
「まぁな。しかし、マイちゃんキャラ弁、冗談で言ったのに、本当に作って来るなんてすげーわ」

青峰君は曖昧な返事をした後に、良君力作のお弁当を食べだした。

※※※

桜井side

僕は、青峰さんが名前さんを連れて行くのを呆然と見送っていた。
「……」
一人になってしまった。
今日は、名前さんと食べる為に、バスケ部の人達と一緒のお昼は断ってしまったのに。

僕は仕方なく、しょんぼりとお弁当を包み直し、体育館に向かった。

※※※

体育館では、先輩達が一緒にお昼を食べていた。
今吉先輩が、僕を見付けて声をかける。

「おや、桜井。今日は教室で友人と食う筈やなかったん?」
「いえ…スミマセン。ここで食べて良いですか?」
「かまへんよ」
「スミマセン、ありがとうございます」

「それにしても、相変わらず凄い弁当だな」
諏佐さんが、僕の弁当を覗き込む。

「…どないしたん?自分、元気ないやん」
今吉さんが訊いてくる。
「ああ…いえ、スミマセン!」
若松さんが、大きい声で「どーした?彼女にフラれたか?」と聞くので、周り中の注目を浴びてしまった。
「彼女じゃないです。スミマセン!!」

名前さんは中学の時から優しくて…僕が一方的に想いを寄せているけど、フラれるのが怖くて告るなんて考える事も…って。
僕は何を考えているんだろう!?
スミマセン!!!僕はその場にいない彼女を、頭の中で想定して謝った。

その時、桃井さんが入って来た。
「すみません、青峰君、どちらに行ったか分かりますか?教室にいないのですけど」

僕は躊躇いながら言った。
「…屋上に行ったと…思います。苗字さんと」

言った途端、僕はしまったと思った。
そこにいるバスケ部の人達が、僕の事を興味深々で見ている。

始めに言葉を発したのは今吉さんだった。
「苗字さんって…誰の事や?」
「ああ…僕と青峰さんとのクラスメイトです。最近、青峰さんと仲良くしているみたいで」

言いながら、僕は落ち込む。…と言っても、彼等は別に付き合ってはいないのだけど。
だけど、彼女は以前、あんなに青峰さんの事を嫌っていたのに…何があったんだろう?

桃井さんが興味深げに訊いてくる。
「青峰君、その子とは付き合っているの?」
「…多分、付き合ってはいないと思います。だけど、さっき、青峰さんが苗字さんを引っ張って、教室を出て行くのを見ました」

「…そう言えば、最近青峰は部には出てへんけど、授業は始めから出席しているそうやな」
「でも、授業中は殆ど寝てます」
「ははw青峰らしいわ。桃井、その子の事を至急調べてくれな。頼むで」
「はい!桜井君、その子の事…出来るだけ詳しく教えてくれる?」

※※※

名前side

放課後、私は帰宅する準備をしていたら、桜井君に呼び止められた。

『どうしたの?今日も部活、あるんでしょ?』
「はい。でもその前に、ある人から名前さんを紹介して欲しいと頼まれました」
『……え?誰が?』
私は首を傾げた。

「私です。初めまして、苗字さん」
可愛らしい高音が、私の鼓膜を震わせた。

そこには、桃色の長い髪の美少女が立っていた。
「バスケ部マネージャーの桃井さつきさんです」
桜井君が紹介してくれた。

桃井…さつき。

…青峰君といつも一緒にいると言う…彼女ではないかとの噂の。
私は、胸が閊えた様な不快感を感じた。

こんなに可愛い人が、青峰君といつも一緒にいるんだ…

私は、何気なく下の方に目線を移して絶句した。

……胸が大きい…!!
見た所…Fはあるだろうか?…パットや補正下着を入れてるって事はないよね?

そう言えば…青峰君、いつも私の胸の事も言ってたっけ。
こんなに可愛くて、胸も立派に育っている彼女なんかに私が太刀打ち出来る訳ないじゃない。
いくらまだ成長期と言っても、私がこの子位まで大きくなるのは…豊胸手術しかない。無理だ。

「苗字さん?どうしたの?」
首を傾げた桃井さんに覗き込まれ、私ははっとした。

『…苗字名前です。よろしくお願いします』

私は挨拶を返しながらも、疑問が頭の中を渦巻いていた。
…どうして、彼女が私の所に来たんだろう?

…もしかして、私なんかを過大評価した結果の恋のライバル宣言とかだろうか?
それとも…彼女として牽制をしに来たんだろうか?

「あのね、苗字さん。ちょっと付き合って欲しいんだけど」

そう言いながら、彼女は私の腕を掴んだ。
私はイヤな予感がした。
…これはますます…
この可愛い人に…何を言われるんだろう?

『えっ…何っ!?』

私は、その腕を振り切ろうとした。
桃井さんは慌てて私の腕を掴み直す。
「あのっ…!別に変な事する訳じゃないから!!話したい人がいるってだけで…桜井君、手伝って!」

桜井君は、私の反対側の腕を掴むと、申し訳なさそうに眉を下げて私に謝罪した。
「あの…名前さん。これはキャプテン命令なので…スミマセン!」

その言葉で私は、ますますパニックになる。
キャプテン命令って何!?
私…何かやらかしたの!?

…もしかして…青峰君と仲良くなってはいけなかったとか!?
一緒に遊んでないで、クラブに行かせなくてはいけなかったのだろうか?
…私と一緒に放課後いたのは…どう考えても部をサボっている状態だ。

同じ部の桜井君はきっちり部活しているのに…
この桐皇のバスケ部は、とても力を入れていると聞く。
全国レベルの強者が揃っているとか…生徒会でも、ちょくちょく話が出ていた。

青峰君って…学校が推薦入学させた、バスケ部のエースなんだ。
私なんかと遊んでいて良い訳がない!

私は、今更ながらに後悔しながら、バスケ部に連行されて行くのだった。




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