Tip off!


遊園地にて


と、言う訳でやって来ました遊園地。

「じゃ、先ずはジェットコースター乗ろーぜ!」
「私、テツ君と一緒に乗るー!!」

桃井さんは、黒子君の腕に抱き付いた。
…良いなぁ…あんな風に私も可愛ければ少しは積極的になれるのに。
私は二人を眩しい想いで見やる。

「名前ちゃんは青峰っちの隣っスよ!」
『…え、あの』
「ほら、早く乗るっス!」

私は黄瀬君に急かされ、慌ててコースターに乗った。
私の位置は、桃井さんと黒子君の後ろの席で、青峰君と黄瀬君とに挟まれている。
あっ…青峰君の隣だなんて…! ろくに話した事も無いのに…緊張する。…どうしよう?

安全装置を下ろされた後もおたおたしていたら、青峰君に声をかけられてしまった。
「…大丈夫か? おめー…ひょっとしてこう言う絶叫系、苦手?」
『あの…っ、正直あまり得意では…ない、です』
「マジかよー? ちびんなよ?w」
「青峰っち! 女子相手にデリカシー無さ過ぎっス!!」
『…ち、ちびらない様に、き、気を付けますっ!!』
「名前ちゃんも、一々真に受けなくて良いっス!!」

私の返事に青峰君は爆笑し始めた。
「ちょ、おめー…苗字だっけ? 面白ぇ女だな!?」
『……は、どうも…?』
「駄目だ、面白過ぎる…!!www 黄瀬にしては良い趣味だぜ!」
「ちょ、青峰っち、それ、どー言う意味っスか!?」

彼は益々長身を折って笑い出した。
私…そんな可笑しな事言ったかな…? つか、これって褒められているの…だろうか?

でも、私も彼がそんな風だから、幾らか緊張も解れて、気が付いた時にはコースターは走り出していた。

ゆっくり上がっている時に、黄瀬君は私の耳に口を寄せて囁いた。
「勢いが付いた時に、青峰っちに抱き付いてみると良いっスよ!」
『そんな…っ!? 無理言わないで! 青峰君に迷惑じゃない?』
「胸を押し付けてみるのをお勧めするっス!」
『止ーめーてー!!!無理無理無理〜っ!!!!』
「おめーら、何こそこそ言ってやがる?」

青峰君の不審げな視線に、私達は苦笑いで返した。
「…何でも無いっス」

結果から言えば、勢いが付いた時は、私は手元のバーにしがみついていて、
とてもじゃないけど隣の彼に抱き付くなどの芸当は無理だった。
…桃井さんは、ちゃんと可愛く悲鳴を上げながら、黒子君に抱き付いていた。……凄い。

黄瀬君は苦笑しながら彼等をこっそり指を指す。
「……ああするんスよ!」

私は首を左右に振った。…とてもあんな風には出来そうにない。
自分の恋愛偏差値が低いのはとても良く分かった…


しかし、そのコースターは当初思ったよりも怖かった。
私は後半はバーにしがみつきながらも半ば気を失いかけていた。

終わってからも、私は暫く立てなかった。

「青峰っち、俺はハンカチ冷やして来るから、彼女をヨロシクっス!」
「ったく…っ、しゃーねーな! ホラ、しっかりと掴まれ」

青峰君は私の背中に腕を回し、軽々と持ち上げて下ろした。
『…あ、ありがと…』
憧れの青峰君に抱えられているなんて…信じられない。
私は頭が真っ白だった。
「おー…テツも大丈夫かー?」

ふと見ると、黒子君も顔色が悪く、ふらふらしている。
桃井さんは心配そうに彼を支えていた。

私達は二人並べてベンチに座らされた。
「じゃ、俺は飲みもん買ってくるわ」

青峰君と入れ違いに黄瀬君が戻って来る。
「大丈夫っスか!?」

桃井さんも、黒子君を介抱している。

「……中々…凄かったですね…」
『うん。途中目が回って…まだ…クラクラする』

その時、ひやりと額にハンカチが当てられた。
「顔色が悪いっス。二人とも、少し休むっスよ」
『ありがとう、黄瀬君』
「どーいたしましてっス!」

「おい、テツー…と苗字!」
青峰君がペットボトルを首筋に当てる。
『ひゃっ…!?』
「冷たい…青峰君、ありがとうございます」
「おめーらの気分が治ったら、次はお化け屋敷行くぞ!」

私は顔を引き攣らせた。
『…お化け屋敷…?』
「名前ちゃん、チャンスっスよ! 今度こそ青峰っちをモノにするっス!!」
『えええええ…?』

※※※

「じゃ、私テツ君と行って来まーす♪」

桃井さんと黒子君は、私達の前にお化け屋敷に入って行った。

「次は、青峰っちと名前ちゃんっスね!」

黄瀬君の言葉に、青峰君は怪訝な表情を向ける。

「何でだよ? 黄瀬と苗字で入らなくて良いのか?」
『…あの、迷惑なら…っ』
「あ? そうは言ってねーだろ。俺とで良いのかって言ってんだよ」

黄瀬君は、巧みに助け舟を出してくれた。

「俺はこう言うの、一人で楽しみたい口なんスよ。
彼女を一人で入らせる訳には行かないっしょ? だから青峰っちに頼んでいるんス」
「フーン…なら、別に良いけどよ」

私は青峰君にぺこりと頭を下げる。
『あの…っ、よろしくお願いします…!』

お化け屋敷の中は、暗く狭く通路が曲がりくねり、遮蔽物も多いので、足元すらもおぼつかない。
青峰君は、借りた懐中電灯の灯りを頼りに、無造作に見える足取りで私の前を進んで行く。
しかし私は……

ペシャッ!
『きゃっ!?』
「どーした?」
『…っ、何かが顔に当たって…!』

『あっ!?』
「おい、気を付けて歩け!」

私は足を引っかけて体勢を崩し、手近な井戸の縁に掴まる。
その瞬間、ドロドロドロと不気味な音と共に、井戸から逆さの髪の長い白い着物の女が、釣瓶と共に勢い良く引き上げられた。

「うわっ!?」
『キャーッキャーッキャーッ!!!』
「おい、落ち着け! 人形だよ!」
『…あ』

彼の言う通り、確かに人形だった。…でも怖い。

途中、小さな如何にもな祠を青峰君は通り過ぎ…私が通ろうとした所、不意に扉が開いた。
中に入っているモノが迫出して来て、私は悲鳴を上げてしまう。
『キャーッ!!』
「うぉ!? 何だぁ!?」

青峰君は戻って来てくれた。
「おー生首…w」
『もぉやだ…怖いっ!!』
「でも、これも作りもんだぜ? つかおめー…」
青峰君はくっくっと喉を震わせて笑う。
「さっきから、タイミングがすげー悪ぃのなw 全部引っ掛かってんじゃん?」
『そんな…っ』

私は怖い思いをした上に、好きな人にまで笑われてしまい涙目になっていた。
そして恐る恐るその生首に目をやる。

その生首の伏せていた目がカッと見開いた!
私は再び悲鳴を上げた。

※※※

-黄瀬side-

…何だか、さっきから前が凄く騒がしいっス。
通り過ぎると分かるんスけど、彼女、悉く脅かされているみたいっスね。

これで、可愛らしく青峰っちに抱き付いてしまえばいいんスけど…
それ位やってくれなきゃ、わざわざ俺が一人で歩いている甲斐が無いってもんスよ。

それにしても、かなり怖いっスね。俺も正直びくびくしてるっス。
一人だから余計にかもしれないスけど。

そろそろ終わり近くっスね。
こう言う時に、一番怖いのが仕掛けてあったりする筈なんだよな。

『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっっっっ!!!!!!』

俺はびくりと肩を揺らした。

一際大きい名前ちゃんの悲鳴っス!
青峰っち、頼んだっスよ! って…あれ??

「名前ちゃん!? 何でこっちに走って来るんスかー!!??」


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