Love in Birthday party!-2-
赤司邸に、赤司征臣、赤司の父が戻って来た。
一時滞在とは言え、見付からない様に準備を進めるのが大変だった。
「何だか、厨房の方が賑やかだな?」
「ええ。料理人の子供が手伝いに来ております。…お呼びしましょうか?」
「いや、いい。それよりも、次の旅支度を進めてくれ」
「畏まりました」
黒子君は、元来の影の薄さから目に付かなかったらしい。
青峰君、根武谷さんは裏方で力仕事、私と玲央さんは厨房での手伝い、小太郎君は外で材料の調達。
そして黄瀬君は。
「おい、お前」
「はいっス!!」
「…?お前は新しいメイドか? 女にしては頭が…いや、背が高いな?」
「あー…育ち過ぎてしまったんス」
「…それに声が男みたいだな。…それより、どこかで見たような…?」
「きっ、気のせいっスよ!?よくモデルと間違われるんス! あ、料理長が呼んでる!!失礼しまっス!!!」
『黄瀬君、さっきのは…赤司パパ…?』
「あー…びっくりしたっス!! でも、俺の完璧なメイド姿に騙されたみたいっス!!」
『……なら、良いんだけど。赤司君のパパなら、見破られても不思議ではないよね?』
「…怖い事言わないで欲しいっス…」
(征十郎の仕業か…?帰りもしないのに、何を考えている…??)と、
実は赤司父が不審がっていた事は、私達は知らない。
※※※
そして、慌ただしく準備して、赤司君の誕生日12/20当日になった。
赤司君は、洛山の方々が連れて来てくれるらしい。
私は、誕生日パーティの準備に気を取られていて、青峰君とは碌に話もしていなかった。
意識して避けていた訳では無いけど、別れの決心が鈍らない様に、無意識に避けてはいたのかもしれない。
彼を見る度、私は、自分がバスケに関して何にも出来ないのを、思い知らされて辛いから。
こうなると、二軍で辞めた事が悔やまれる。
「おい、名前」
機嫌の悪い氷点下の青峰君の声に、私はビクッとする。
『な、何?…今は準備が未だ済んで無いんだけど』
「ちょっと顔貸せ」
青峰君は私の手を掴んで、ぐいぐいと引っ張って行った。
そして私は、赤司邸の裏手に連れて行かれる。
「おめー…最近、俺の事避けてねぇか?」
『な、何で?忙しくて話す時間が無いだけじゃない?…どうしてそう思うの?』
「避けてねぇっつんなら、ちゃんと俺の目見て話せよ。…おめー、確か赤司が好きだったよな?
ヤツが今日戻るから、乗り換える事にしたんじゃねーのか?」
私は愕然とした。…そんな風に思われていたんだろうか?
『違うよっ!!…でも、大輝の彼女に私は相応しくない…っ!!だから…っ!?』
私は、壁を背に勢い良く押し付けられた。
青峰君の両腕が、私の顔の横に突かれた。
青峰君が上から不機嫌に私を睨み下ろす。
「だから…何だ? おめー、俺と別れるつもりなのかよ?」
『私じゃ、バスケが好きな大輝の支えにならない。別れた方が大輝の為なのよ!』
「俺の為…だと? 納得できねーな! おめー…俺の事が嫌いになったのか?」
『…っ!!嫌いな訳ないよ!!大好きだよ!!…でも、私じゃ…っ!!!』
「ふざけんなっ!!」
青峰君は、私の顎に手をかけ、噛み付く様なキスをした。
『…んっ…だ…大輝…?』
「てめーは俺のもんだ。…例え、おめーが赤司が好きでも、奴にくれてやるつもりはねぇよ!!」
青峰君は、私をきつく抱きしめた。
私は涙が零れそうになった。
そんなに思っていてくれたなんて。…でも、だからこそ身を引かなければならない。
ごめんね、大輝。
私は大輝が大好きだからこそ、輝いて欲しいよ。
でも、それは…私が横にいちゃダメだ。
……私がいたら、きっと楽な方へと流れてしまう。
今まで、そんな付き合いしかして来なかったから。
…でも、今から変えられたら…と気持ちがグラつく。
私は頭を彼のお腹に当て、腕を回して抱き締めた。
私を包む、無駄のない筋肉質の大きな身体。
これは、彼が鍛え上げ磨き上げたバスケをする為の身体。…私が好きな。
入口の方が騒がしくなった。
それに気を取られたのか青峰君の腕が緩んだ。
私は、するりと抜け出して彼に『ごめんね。先に戻ってる』と言い、入口の方へ駆けた。
※※※
赤司君が居間に入った。
「Happy Birthday!!征十郎〜!!!」
暗かった居間に、一斉に灯りが点き、クラッカーが破裂する。
赤司君も流石に驚いた様だった。
「…これは…!?玲央、一体どう言う事だい?」
「うふ。今日は、征ちゃんのお誕生日でしょ?驚いたかしら?」
「赤司ーっ!!誕生日おめでとー!!!ヒャッホー!!!!」
「おぅ。…今日は極上のステーキが食べられると聞いてな!」
「根武谷!!アンタ、自重しなさいよ!?今日は征ちゃんの為のパーティなんだから!!!」
赤司君は、黄瀬君と黒子君に目を止めると、驚いた様に目を瞠った。
「涼太にテツヤ。…その恰好はどうしたんだい?」
「あ、赤司っち!誕生日おめでとうっス! これは、その…カモ…うぐっ!?」
黒子君が、黄瀬君の横腹に素早くチョップをかました。
「ああ、赤司君。誕生日、おめでとうございます。これはその、余興ですよ。
それより、都合が付かなくて欠席した、緑間君と紫原君からプレゼントが届いています」
緑間君は、射手座のラッキーアイテムの栄養クリーム、紫原君からは、まいう棒の土瓶蒸し味。
黛さんからは、ライトノベルズ1セット。
赤司君はそれらを確認すると、私達へ目を向ける。私は初めて対面する赤司君に緊張した。
「大輝、久しぶりだね。…?そして彼女は?」
私は身を縮こまらせた。本来ここは、私なんかがいるべき場所じゃない。
でも青峰君は、逃げ腰の私の腕を掴んで強引に引き寄せた。
「あ?…こいつは俺の彼女」
『なっ…!!??』
「異論は認めねえ。例えおめーからでもな」
『何でいつも、そう強引なの!?』
「そーしなきゃ、おめー、逃げる気満々なんじゃねーのか?」
『私なんかより、桃井さんの方が大輝には似合いでしょ!?』
「てめー、俺の気持ち無視してんじゃねーよ!!俺は、てめーが良いつってんだよ!!!」
「…へぇ…?」
赤司君は、オッドアイを興味深げに煌めかせてクスクス笑った。
「ちょっとーあんた達っ!!痴話げんかなら外でやってくんない!? 今は、征ちゃんの誕生日祝ってんだから!!!」
玲央さんの声で、私達は我に返った。
『……あっ…』
「悪りぃ、赤司…」
青峰君は、気まり悪げに頬を掻いた。
赤司君は、私の前に立って微笑んだ。
「…君は苗字名前さん、だね? 誕生日パーティをありがとう」
赤司様が私に微笑みを向けてくれている。
中学時代に、夢にまで見た光景が現実化したのに、今の私には狼狽える事しか出来なかった。
『なっ…!?何で、私の名を知っているのですか!?』
「帝光の時に、僕を応援してくれてたろう?…君がマネージャーを辞めた時は残念だったよ」
『覚えていた…?なんて…嘘…っ!?』
「赤司…っ!」
青峰君が、私を抱き寄せて彼を睨んだ。
それに可笑しそうに赤司君は返す。
「大輝…心配しなくても、僕は、君の大切な人を奪ったりしないよ?」
そして、青峰君の腕の中にいる私に、穏やかな視線を向けた。
「大輝を頼むよ。名前」
『は、はい!!……えっ!??』
青峰君は嬉しそうに笑い、私を抱き締める腕の力を強めた。
「名前、今"はい"つったな。これでおめーは俺のもんだぜ!」
END
※※※
松本 翠様
楽しんでいただけたでしょうか?
「赤司のサプライズ誕生日会の話・青峰の彼女設定」とのリクエストをいただきました。
(黒子・黄瀬のメイドコス、洛山メンバー、赤司と初対面と)色々な要素満載のリクでした。
全て入れたつもりでしたけど、構成上の都合で、微妙に変えてある所もあります。
赤司の誕生日はWC直前なので、洛山メンバーが前乗りしている捏造設定にしました。
要素を満たす夢主とか話の構成とか、考えるのが難しかったけど、書いていて新鮮でした。
リクエスト、ありがとうございました!