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小さな約束




Riq.no7 (1日だけ預かる事になった親戚の幼児を、夢主と緑間が一緒に面倒を見る)

*設定 秀徳高校一年 緑間と付き合っている。
オリキャラが出張ります。

※※※

『…ごめんね、真太郎。折角時間取ってくれたのに』

私は、携帯電話で相手に謝っていた。
《ああ、気にするな。またの機会があるのだよ》

次の機会には必ず、と確約をして電話を切り、私は溜息を吐いた。

居間では、母と父方の叔母が楽しそうにお喋りをしている。
私が居間に入って行くと、叔母が申し訳なさそうに眉を下げた。

「名前ちゃん、ご免なさいね」
母と叔母は、一緒に舞台を観に行く事になっていた。
それで、彼女の五才の子供…従弟の真也君の面倒を見る様に、と母と彼女から頼まれたのだった。

真也君は、今まで何回かは家に来た事があって、私とよく遊んでいた。
そのせいか、私には良く懐いていた。

でも、彼はやんちゃ盛り。悪戯しまくるので、片時も目が離せない。

※※※

「お姉ちゃん、お外で遊ぼうよ!! 僕、ボール持って来たんだよ!」
『真ちゃん、道路走っちゃ駄目よ!車来るから気を付けて」
「お姉ちゃんが遅いんだよ!」

真也君は燥ぎながら、私の手を引っ張る。
近くの公園の、ストバスが併設されている所で遊び出した。

でも、まだ5才の彼には、バスケットゴールは高過ぎた。
「あっ!?」
ボールは届かず、落ちてバウンドしながら転がって行った。

真也君は、ボールを走りながら追いかけて行く。
そして転がったボールは、こつんと誰かの足元に当たる。
拾い上げたその人は、テディベアとボールを持って前に立った。

「…これはお前のか?」
『あっ、真太郎!?来てくれたの?』

私の反応に、真也君はあからさまに不審そうな顔をする。
「…お姉ちゃん、誰?こいつ」
『お姉ちゃんのお友達だよ? さ、ご挨拶なさい』
「…苗字真也、五歳。名前姉ちゃんの従弟です」
「俺は緑間真太郎。名前の恋人だ」

真太郎は、大真面目に私との仲を、ぼかす事無く表現した。
思わず私は赤面し、真也君は目を剥いた。

「お、お姉ちゃん!?恋人って!!?こいつと付き合っているの!!??」
直球表現に耐えられなくて、私は思わず目を逸らす。
『あ…うん。こいつ、って言うのは失礼だから言っちゃダメだよ、真ちゃん』

「真ちゃん…?」
真太郎が困惑した様に呟く。
あ、そう言えば真太郎も"真ちゃん"と、高尾君から呼ばれていたんだった。

『ごめん!真ちゃんって、真也君の呼び名だからね? もうずっとそう呼んでいるから』
真太郎は複雑そうな顔をした。
「…そうなのか。バスケをしているのだな。…俺も一緒していいか?」
『うん。喜んで! 真ちゃん、この人バスケ選手で凄く上手なんだよ?
真ちゃんもバスケ好きでしょう?教えて貰いなよ』
「やだ…っ!!」

『真ちゃん!?』
真也君は、真太郎に駆け寄り、彼の手からテディベアを奪った。
「何をするのだよ!?返せ!!!」
「こんな…っ、大きな男のくせに、テディベア持ってるなんて変なヤツが、
お姉ちゃんのこっ…恋人なんて認めないぞ!!!」
真也君は、駆け出した。

『真ちゃんっ!!!』
「待て!!!!」

真太郎は追いかけた。
本来なら、彼の足は速いから、真也君を捕まえるのは造作もない事だ。
だが、真也君は振り向きざまにボールを投げつけ、コントロールが逸れて私に当たりそうになった。

『っ!!!』
真太郎は、咄嗟に向きを変えて走り、私の手前でボールを弾いた。
「…大丈夫か?名前」

『…ありがと、真太郎。でも、真ちゃんが…』
「…ああ。見失ってしまったのだよ」

※※※

私と真太郎は、広い公園内を探していた。
真太郎は、ぼそりと呟く。
「すまない、名前。子守の邪魔をしてしまったみたいなのだよ」
『ううん。こっちこそ、ごめんね。真太郎のラッキーアイテムだったんでしょ?…あのテディベア』

「お前の従弟は……」
『…ん?』
真太郎は眼鏡をかちゃりと上げた。
「…何でも無い」
『……どうしたの?何か変だよ?真太郎』

「…いや、随分と仲が良いのだな、と思っただけだ」
『小さな頃から遊んでいるからね。最近、かなり生意気になっちゃったけど、根は素直で良い子だよ』
「…そうか」

公園の外の通りを、パトカーがサイレンを鳴らして走り抜けた。

『何か騒がしいね』
「ああ。今朝のニュースで、現金輸送車が強盗に襲われた事件をやっていたのだよ。それでだろう」
『…物騒だね』
「全くだ。その事件の現場が近かったのもあって、気になって来てしまったのだよ」

心配してくれたんだ。
『…ありがとう。真太郎』
私が微笑んだら、真太郎は真っ赤になった。
「こっ、恋人を心配するのは、当たり前なのだよ!」

でも、今は別の心配事が出来てしまった。
『…真ちゃんは、何故あんな事言ったのかな?』
「俺への台詞か」
『うん。本来なら、やんちゃだけど優しい子なんだよ。…あんな事言うなんて』
「…それは恐らく、名前の事が好きだから、だろう。俺に取られる、と思ったのではないか?」
『まさか』
「とは言い切れまい。従弟なら、結婚も可能だ」

私は真太郎の言葉に唖然とした。…結婚って。
『私、十歳以上も年上なんだよ?あり得ないよ!』
「子供の十歳差は大きいが、大人になれば然程の事もあるまい。
…年上の女性に憧れるなど、子供の頃には、よくある話なのだよ」

『…真太郎もそんな事があったの?』
言葉に引っかかった私は、真太郎の顔を覗き込んだ。
真太郎は僅かに目を逸らす。

「何で俺にそんな話を振る?」
『だって、よくあるって言ったじゃない?』
「俺が言ったのは、あくまで一般論なのだよ」
と、言いながら心なしか真太郎の顔が赤い。

『…もし、そんな女性がいたなら、妬いちゃうな、私』
と、私が小声で呟いたら、真太郎が微かに返した声が聞き取れなかった。

『……?何か言った?真太郎??』
「…っ…別に何でもないのだよ」
(俺の方こそ、五歳児相手に妬いてるのだよ…!)

※※※

-真也side-

「はぁはぁはぁ…っ!」
僕は、ボールを投げ付け、後も見ないで走り続けた。

名前お姉ちゃんに恋人がいるなんて!!!
しかも…あんな変なヤツ。

お姉ちゃんは僕のだ。
あんなヤツ、認めない!!

僕は力の限り走った。
僕からお姉ちゃんを取るなんて!! 少しは困れば良いんだ!

もう少しで公園を抜ける、そう思った時だった。

ドン!!

通りを出た瞬間、いきなりぶつかった僕は尻餅をつく。
「いってぇーーーっ!!」
「うぉっ!?」
僕が叫んだと同時に、僕にぶつかった怖い顔したオジサンも転んだ。

そのオジサンは、僕をギョロリとした目で睨んだ。
「ひっ!?」
僕はびっくりして、咄嗟に転がっていたテディベアを掴んで、また公園の方へ走り戻った。

「…何だアレ。変なの!」

そして、僕は手に持っているテディベアを見てぎょっとする。

それは、さっきまで僕が持っていたのとは違う物だった。
色とかは一見似ているけど、手触りも細かい所も全然違う。
さっき持っていた方は高級そうだったけど、こっちはあからさまに安い偽物って感じだ。

「何だこれ?…背中にチャックが付いてるぞ?」
僕はチャックを開け、中を手で探り、あった物を引き出す。
「…何かの鍵だ」
何だろう?

僕はワクワクした。これって、何かの宝箱の鍵かな?
昨日見た、冒険もののアニメと同じだ! アイツはきっと悪い海賊なんだ!!!
鍵をポケットに隠し、チャックを元通りに閉めた。

「…でも、これ…どうしよう?」
気に喰わないヤツのだけど、さっきのテディベア、姉ちゃんと仲良いアイツは大切そうにしていた。
こっちを返したりしたら怒られそうだな…姉ちゃんに。


「小僧!!待てっ!!!」
後から足音と怒鳴り声が聞こえた。やべっ!!

さっきのオジサンが追いかけて来た。一応、さっきのテディベアは持っているみたいだ。
でも、僕はオジサンの剣幕にビビって慌てて逃げ出した。

※※※

-名前side-

公園内は広いから、私と真太郎は手分けして探す事になった。
「さっきも言ったが、物騒な事件が起きているから、気を付けろ。何かあったら、すぐに連絡するのだよ」
と私に言い置いて。

『…でも本当に、どこに行っちゃったのかなぁ…?』
私は途方に暮れて一人呟いた。

真太郎とも別れて、一人ぽつねんといる公園内は、休日の割りに、人通りが少なくて閑散としている。
やっぱり事件の影響かなぁ?
子供連れで来る親が自粛しているのかもしれない。
それ程、危険だと言う事か。
『なら尚更、早く探さなきゃ』

私が周囲を見渡した時。
『……?』

今、何か聞こえた?

私は耳を澄ませた。
『………!!』
間違いない。
これは、男の怒鳴り声と子供の泣き声だ。

私は、聞こえた声の方角へ急いで足を動かしながら、真太郎に電話した。


駆け付けた私が見たのは、中年の人相の悪い男が、テディベアを振り回しながら、五歳児を追いかけている光景だった。
もう少しで追い付く、と言った所で、真也君が躓いて転んでしまった。
『…っ!!!真ちゃんっ!!!??』

男が真也君にかけようとした手を、私が中に飛び込んで無我夢中で振り払う。
「お姉ちゃん!!」

私は真也君を後ろに庇い、男をキッと睨み据えた。
『貴方、何なんですか?子供相手に乱暴するのは止めてください!!』
その男は恐ろしげな顔をしていたが、私を見ると手にしたテディベアを掲げた。

「その餓鬼はお前の連れか? なら丁度いい。その餓鬼の持ってる物と俺のこれが入れ替わったんで、返して貰おうとしただけだ」

私は男の言い分を聞いて、転んだ体勢から身体を起こした真也君を振り返る。
『…真ちゃん、それは、この人の物なんでしょ?…返しなさい』
真也君は無言で私に返し、私はそれをこの男に渡した。

「…始めから、そう素直に返せば追いかける必要はないんだよ」
男はそう言いながら、私にもう一方のテディベアを投げ返す。
私は真太郎のテディベアを受け取ってホッとした。
真也君の腕を引いて戻ろうとする。が、その男が叫んだ。

「てめぇ!!!鍵をどこにやった!?この餓鬼っ!!!」

『…えっ?』

瞬間、私はその男に喉を掴まれた。息が詰まる。
『く…っ!!』

「お姉ちゃんを離せ!!」
「小僧。お前のねーちゃんを殺されたくなければ、鍵を出せ」
「……っ!!」

真也君は渋々ポケットに手を突っ込み、鍵を取り出す。
それは、一見、どこにでもある様なコインロッカーの鍵だった。
男は鍵を手に入れて、私は解放されるかと思った。だが、男は更に力を入れて私の喉を絞め上げる。

『…ぐ…っ』
苦しい。身体中が酸素を求めて、心臓が悲鳴を上げている。
私は身体を捩ったが、力の差にビクともしない。
真也君は、泣きながら男を叩いた。
「何でだよ!!鍵も返したろ!姉ちゃんを離せよ!!」

「…通報されると面倒だ。悪く思うな」

男の言葉に秘められた意図を悟って、私は絶望的な気持ちになった。
まさか、この男は…!!!

今更の様に、真太郎の言葉が頭の中で蘇る。

現金輸送車が強盗に襲われた…事件。
気を付けろ、って言われたのに。

……ごめんね、真太郎。

私が意識を手放そうとした、その時。

男の頭に何かが直撃し、男は反射的に手を離した。

『げほっ!ごほっ!!』
私は、突然流れ込んで来た新鮮な空気を取り込むと同時に、激しく咳き込んだ。
地面に付いた私の手元に、転がって来たのは…バスケットボール。

「名前!!!」
飛び込んで来た真太郎は、叫ぶと同時に素早く男を引き倒した。
上から体重かけて押さえ込み、首をきつく絞め上げる。「…ぐっ!! は…っな、せ!!」
男は暴れたが、ビクともしなかった。

真太郎は、鋭く冷ややかな色を瞳に湛え、更に力を込めた。

「苦しいか? こいつもきっと同じ位には苦しかったのだよ。お前は現金輸送車の強盗だろう? こいつを…殺す気だったのか?」
「ぐ…!」
「答えろ。…最も、答えによっては只ではおかないのだよ!」

私は、真太郎の殺気と迫力に驚いて立ち竦んでしまった。
いつもの真太郎は、こんな荒事とは無縁なタイプだ。
喧嘩している所など、私は見た事は無かった。

私は驚いて固まっていたが、真也君が私の袖を引き、やっと気が付いた私は慌てて警察に通報した。

真太郎が、そのまま容赦無く押さえ込んでいたので、男は気絶してしまった。
真也君が男の懐を探って、鍵を取り出した。
それを見た、真太郎が目を瞠る。
「…それは、コインロッカーの鍵だな」
「こいつは、これをこの縫いぐるみの中に隠していたんだ! 返したのに、ヤツは姉ちゃんを…っ!」
真也君は悔しそうに呟いた。

「こいつは、今朝のニュースに出て来たヤツだ。…恐らく、これは奪った現金の隠した場所の鍵なのだよ」

※※※

駆け付けた警察官に鍵を渡して、事情聴取に応じた後、私達は長い一日を振り返った。

『…それにしても、大変な一日だったね』
「名前が無事で何よりなのだよ」

真也君が真太郎の袖を掴んだ。
「…何だ?」
向き直る真太郎に、真也君は口篭りながら「…縫いぐるみ奪って…変なヤツと言っちゃって、ご免なさい!」
と、頭を下げて謝った。
それに真太郎はテディベアを抱え、素っ気なく返事した。
「…別に。ラッキーアイテムが返って来たから問題ないのだよ」

更に真也君はおずおずと真太郎に言う。
「あ、あのさ…アンタ…じゃなかった、お兄ちゃん、強いね! どうしたら、お兄ちゃんみたいに強くなれるの?」
真太郎は、眼鏡をカチャリと上げて答える。

「…スポーツと勉強で身体と頭を鍛えるのだよ。人事を尽くす事だな」
「じんじ…?」
「おは朝を毎朝見て、その通りにするのだよ」
「おは朝って…?あの、朝のテレビ?」

首を傾げた真也君の頭を、真太郎は軽く撫でた。

「そうだ。好きな女を守れる位に強くなれ。努力を常に怠るな」

真太郎は柔らかく微笑んだ。
その顔は、女の私が見惚れる程に綺麗だった。

「うんっ!!僕、頑張るよ! そうだ!お兄ちゃん、バスケ選手なんでしょ?シュートのし方、教えてよ!!」
真也君は目を輝かせ、嬉しそうに頷いた。

『真ちゃん、お兄ちゃんと仲直り出来て良かったね!』
私も嬉しくなって言うと、真也君はにこっと笑った。
「うん!悪者やっつける時の、お兄ちゃん、とってもカッコ良かったもん。…でも」
真也君はチラリと真太郎を見上げ、悪戯めいた表情になると、私の腰にギュッと抱き付いた。

『あっ、コラ!?真ちゃん!!?』
「何をするのだよ!!?」

「お姉ちゃんは僕のだからね! お兄ちゃんにでもあげないよ!!!」
と、真也君はあかんべえをし、真太郎は真也君を引き剥がそうとした。
「離れろ! 俺も例え従弟だろうと、名前は譲る気は無いのだよっ!!!」


後日-

真也君が、おは朝を見出して、ラッキーアイテムを強請られて困った叔母が相談しに来た。
「ねぇ、名前ちゃん。真也が"じんじをつくす"って言ってるんだけど…意味分かって言ってるのかしら…?」

それを聞いた私は、思わずミルクティーを吹き出してしまった。
どうやら、おは朝信者がもう一人、誕生した様である。


END

※※※

光流様

楽しんでいただけたでしょうか?
「1日だけ預かる事になった親戚の幼児を、夢主と緑間が一緒に面倒を見る」との、お題をいただきました。

リクエストの都合上、オリキャラを出す事にしました。
黒子の世界に「親戚の幼児」に出来るキャラが存在しなかったもので…
「真ちゃん」呼びになったのはノリです。
呼び名が被ったら面白いかと。うっかり緑間が返事をしたりしてw

この類のリクなら、緑間が幼児を可愛がるシチュエーションになるかと思ったら…
夢主巡って幼児と張り合ってるし。大人げない緑間ですみません。

私の書く緑間は、どうやら信者を増殖させる傾向がある様ですw

オリキャラを出張らすのは初の試みで、これからもあまりしないと思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。

素敵なリクエスト、ありがとうございました!!




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