Two of us-1-
Riq.no9 (緑間のギャグ甘夢。 幼なじみ設定・合宿)
*夢主設定
誠凛高校一年生(黒子・火神と同じクラス)
緑間とは幼馴染、帝光バスケ部のマネ経験あり。料理は得意。
※※※
「苗字!!頼むっっ!!この通りだ!!!」
火神君が私に拝み倒す様に、パンッと両手を打ち合わせた。
私は頭を振った。
『…ごめんね。その日は…無理っ!』
「…苗字さん。どうしても…駄目、ですか?」
黒子君が、じっと私を見つめた。その目には弱い。けど、今回ばかりは引けない理由があった。
『…うん。実は先約があって。丸々日程が被っているんだ…』
「苗字…」
火神君が泣きそうな目で私を見る。
罪悪感が沸々と湧き起って来る…が、私は目を逸らして耐えた。
やがて黒子君が火神君の肩を軽く叩く。
「…諦めましょう。カントクの料理を何とかした方が、まだ建設的だと思います」
「そ、そうだな。…いざとなれば、俺と水戸部先輩達とで作る…か」
『…ご免ね。力になれなくて』
「こちらこそ、無理を言ってすみません」
実は、つい先日に幼馴染の真太郎から連絡があった。
「名前、夏休みだが…一緒に海に行かないか? 三泊四日の旅行なのだよ」
いつもバスケと勉強に明け暮れている真太郎が、こんな事言うなんて…どんな風の吹き回しなのか…?
「交通費と宿泊費は格安、食事付きだ」
確かに真太郎が告げた金額は破格だった。そんな優良物件、どこから探して来たんだろう?
幼い頃から真太郎が好きな私は、二つ返事で了承した。
私は中学の時、帝光バスケ部のマネージャーをやっていた。
そして、真太郎と同じ秀徳高校へ行くべく、沢山勉強して、真太郎にも勉強を見てもらって…
万全の体勢で受験に臨んだ筈だったのに、不運にも失敗して、今は誠凛高校に通っている。
黒子君に誘われたけど、バスケ部には入ってない。
私が誠凛のバスケ部に入ったら、真太郎と対戦する事になってしまうからだ。
合宿だけでも手伝ってくれ!!と、懇願された時は聞いてあげたかったが、好きな人との先約を反故にする事は出来なかった。
誠凛の皆には悪いとは思っている。
けど、真太郎と一緒に久しぶりに旅行出来るなんて、私は浮き浮きした気分が止まらなかった。
※※※
そして、約束の日の朝、家に真太郎が迎えに来た。
「名前、支度は出来たか?」
『うん!バッチリよ』
真太郎はオレンジ色のジャージを着て、大きなスポーツバッグを抱えていた。
『……???』
海に旅行に行くとは思えない。…もう少し、遊びっぽい格好するとか…でも、真太郎だしな……
真太郎は、私の母に礼儀正しく挨拶をして、私の前を歩き出す。そして私は彼の後を着いて行った。
そして着いたのは……
『……!!!???何で秀徳高校なのっ!!!???』
校門前にはバスが停まっていて、その周りには、見知らぬ男子高生達が、真太郎と同じジャージを着て集まっていた。
「おぅ緑間、連れて来たか。ご苦労だったな」
「はい。こいつです」
『??????』
厳つい男子が出て来て、真太郎と話している。
私は訳が分からず、話について行けなかった。その時、
「君が苗字名前ちゃん? 俺、高尾和成ってんだ。よろしくなー♪♪」
つり目の男子に、いきなり肩に手を回され、ガッチリとホールドされる。
『えっ?えっ?えっ?』
「高尾! 名前にちょっかいかけるな!! さっさと乗り込むのだよ。間もなく出発するぞ」
『ちょっと待って!!何で真太郎と二人で旅行するって話が、こんな事になっているの?』
私の質問に、彼等は一斉に私と真太郎を見た。
「…何だ、お前。ちゃんと話して無かったのか?」
高尾君が吹き出し始める。
「ぷぷっww真ちゃんって罪な男だねーwww」
真太郎は眼鏡を上げると、私にとって絶望的な一言を、さらりと言ってのけた。
「……? 俺は"二人で"旅行する、とは一言も言った覚えは無いが?」
『〜〜〜っっっの馬鹿っ!!!』
私の罵倒に真太郎は目を吊り上げた。
「馬鹿、とは何なのだよ!!?? 秀徳を落ちた、お前には言われたくないのだよ!!」
それを今ここで言うか!?
『真太郎の鈍チン!!朴念仁っ!!帰るっっ!!!』
私は涙目で駆け戻ろうとしたが、その手を掴まれてしまった。
「あー、待って待って!!…えーっと、名前ちゃん?」
私の手を掴んだのは高尾君。
「ごめんね? 真ちゃんに誘われて来てくれたんだよね? …期待に反してわりーけど、少しだけ俺達の話を聞いて?…ねっ?」
私は怒っていたけど、高尾君が済まなそうに宥めてくれたので、怒りは幾分和らいだ。
その時、真太郎の怒号と共に、高尾君の手を剥された。
「高尾!いつまで名前の手を掴んでいる気だ!離すのだよ!!」
「緑間…落ち着け。元はと言えば、お前の説明不足が招いた事だぞ?」
「……む」
蜂蜜色の髪の、やや童顔の男子高生が窘める。
どうやら私は、秀徳バスケ部の合宿のマネージャー兼賄い係として呼ばれたと言う話だった。
「…別に俺の説明は、間違ってないのだよ」
『全っ然足りないわ!!つか、紛らわしい説明すんな!!!』
「すまなかったね。緑間の説明が不十分だった様で」
中年の男性が出て来て軽く頭を下げた。彼は中谷さん。顧問兼監督らしい。
納得が行った訳では無かったが、彼等の執り成しで、私は渋々だが結局合宿に参加する事にした。
※※※
合宿の宿舎は「波切荘」と言う名の民宿だった。
「げぇっボッロー…」
高尾君は正直過ぎる感想を述べる。
『…はぁ』
もう出発の騒動で、期待なんて跡形も無く粉砕されてたから、今更ボロでもどーでも良いわ。
最低限の清潔さと雨風防げれば十分よ。
彼等に続いて荷物を持って入った。
「なぜここにいるのだよっっ!?」
真太郎の声だ。珍しく取り乱しているな。…どーしたんだろう?
『…あ』
彼等を認めた途端、やべっ、と首を竦めたが、見付かってしまった。
「あーーーっ!!??おまっ!?苗字っ!?」
「苗字さん、お早うございます」
『…お、おはよう!黒子君、火神君!!』
「僕達を追いかけて来てくれた…訳ではありませんよね? 何故秀徳の人達と一緒なんです?」
き、気まずい…
『えっと、それは…』私は言い淀み、目を泳がせた。
「…名前、火神を知っているのか?」
『同じクラスだよ』
「聞いてないのだよ!」
『そりゃ言ってないからね』
ここまでの経緯が経緯なので、私はやさぐれてフォローする気も起きない。
火神君が黒子君に耳打ちする。
「苗字は緑間とも知り合いなのか?」
『幼馴染です。帝光バスケ部にいましたし』
「なっ……!!!???」
真太郎と火神君が睨み合い、間に火花が散った様な気がした。
それを中断させたのは、血塗れ(?)エプロンに身を包み、包丁を持って来た相田先輩だった。
そのスプラッターと見紛う外見に、私達全員が恐怖のあまり凍り付いてしまった。
※※※
「頼むっ!!お願いだ、俺達の命がかかっているんだ!!!」
『あ、あの。…お願いですから、頭を上げてください!』
今、私は日向先輩に頭を下げられている。もう半泣きで、土下座せんばかりの勢いだ。
相田先輩は、料理の腕が壊滅的と聞いている。…黒子君から、さつきちゃんと張るレベルと聞いて、私は戦慄した。
…これなら、真太郎の誘いで断る事無く、誠凛に協力しても良かったな…
私は溜息を一つ吐いた後、彼等のおさんどんも一緒に引き受ける事にした。
真太郎は超不機嫌だった。
練習の合間に、下ごしらえしている私の元に来て、苦虫を噛み潰した様な顔をして立っている。
『もー、何仏頂面してんのよ!?』
「この顔は生まれつきなのだよ!…名前、誠凛の食事まで引き受けたんだってな?」
『まーね…元々それ断って真太郎の話に乗ったんだもん。場所とやる事が一緒なら、引き受けたっていいじゃない?』
「名前は、人が好過ぎるのだよ!」
……あれ?何だか怒っているポイントが…?
『…もしかして、心配してくれてるの?』
「誰が心配など…っ!!!」真っ赤になっている。図星かな? ツンデレさん、いただきました!!!
「おーす!、苗字!頼まれたモン、買って来たぞ!!」
言い合いを中断したのは、火神君の明るい声だった。
彼は、勝手口を開けて、品物を置いてくれた。
『あー、ありがとー!助かるよ!…って、凄い汗だねー?』
「あっちーわ。なに、いいって事よ!飲みもん買って来るついでだ。俺達の分も頼んじゃってるしな!」
そして、彼が中を覗き込み、真太郎がいるのに気が付く。
「…っ!緑間!!?お前、練習はどうした? こんな所で休んでるなんて余裕だな!?」
「当然なのだよ。俺がどこで休もうと、お前などに遅れは取らん」
「言ってくれんじゃねーか…後で吠え面かくなよ!?」
じゃな!と火神君は、私に向かってにっと笑い、髪を軽く撫でてから出て行った。
火神君が現れてから、真太郎の機嫌は更に急降下した。
『全く…真太郎は、何でそんなに火神君と仲が悪いのかなぁ…?』
「俺を負かした相手になど寛容にはなれないのだよ!……更に、また気に喰わない要素が一つ加わった!」
『…は…?』