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未来の君に会いに行く-1-




Riq.no10 (緑間長編夢主、タイムスリップして未来の自分と入れ替り、緑間と会う)

*夢主設定
Rhapsody in Green夢主 帝光中時代

※※※

目が覚めた時、真っ先に目に飛び込んで来た自室の様子に、違和感を感じて私は起き上った。
『………???』

寝ぼけているのか?と、自分自身を訝しく思っていたが、その違和感の正体が判明した。
部屋の片隅のハンガーにかかっている、学校の制服。
『これって…何で? 秀徳高校のセーラー服じゃね?』

気が早いなぁ。まだ、願書すら提出していないのに、いつの間に買ったんだ??

そう思いながらベッドから出た私は、部屋の気温が思いの外低いのに驚いて、ぶるりと身を震わせた。
『さ…寒っ!!???』
慌てて暖房を点け、私はクローゼットを漁って帝光中学の制服を探した。

何故か奥に仕舞われていた帝光の制服を身に着けると、また微妙な違和感を感じた。
『…少しきつい。……まさか、私太った!?』
着れない事はないけど、ちょっとショックを受ける。

身支度が済み、私は階下へと降りて行った。

『あれっ?…何で誰もいないの?…お母さん?…お兄ちゃん??』
リビングにも台所にも、人の気配すらない。
起き立ての私の部屋と同じく、冷え冷えとしていた。

訳が分からないままに、私はお湯を沸かし、簡単な朝食の支度をする。
幸いにも冷蔵庫には、先日の残り物らしい料理が入っている。

食事と支度を終えて、鍵をかけて玄関を出る。
自分以外の家族がどこにいるのかも分からず、私は内心で困惑していた。

思った通り、外は10月半ばとは思えない位、寒かった。
街路樹の葉は全て落ち、枝だけの骨張った木々が通りを連ねている。
『…紅葉、見損ねちゃったな。冬来るのが早い』

この寒さは完全に真冬だ。
私は制服のセーターの上に、学校指定のコートを羽織り、マフラーを首に巻き付けた。

そして、いつもの道を辿って中学校に向かう。
後ろから、ガラガラガラ…と何か転がす様な音が聞こえて来た。

最初に目に入ったのは自転車。
私を抜かして行ったその自転車には、リヤカーが付いていた。

『……!?』
私は余りのシュールさに、目が点になった。

自転車に引かれている、そのリヤカーの中には、緑の頭と細長い木彫りの面が覗いていた。
あれって…トーテムポール、だよね…?
漫画で見た時は、ただ笑ってはいたが、直接実物を目にしてしまうと中々の破壊力だ。

見てはいけないものを目撃してしまった、と動揺し、そ知らぬ顔して出来るだけ離れて歩く。
しかし、それは私の努力を嘲笑うかの様に、数メートル前でピタリと止まった。

「名前ちゃん?」
真ん中分け黒髪のつり目の少年が、振り向いて私を見るなり驚いた声をかける。

…あれって…もしや…高尾和成?

「名前、何故お前は帝光の制服を着ている?どこに行くつもりなのだよ?」

リヤカーの中で、トーテムポールを抱えた緑間君が、私に尋ねた。

あまりにも自然で、当たり前の様に声をかけられたので、私もつられて普通に返す。
『どこ…って。学校に決まってるでしょ』
「学校だと?秀徳は方向が反対なのだよ」
『秀徳じゃないし』
「待て!!」

緑間君は、私の手首を掴んだ。
私は吃驚して振り払った。

怪しい人には関わっちゃいけません、と私は小さい頃から叩き込まれている。
緑間君は一応知ってる人だけど、対面で話すの初めてだし、リヤカーとトーテムポールのコラボレーションに、私は引きまくっていた。
事情は分かるけど、この絵面はちょっと…無いわーwww

「ちょっと!!??名前ちゃん!!待って!!!」

何で高尾君は、私の名前を知ってるの? 初めて会ったのに。
益々怪しい!

三十八計逃げるにしかず!
私は逃げ出した。

「おいっ!?名前っ!!??待つのだよ!!」
緑間君の怒号を背に、私は走り続けた。

私の後ろから、ガラガラと車輪の音が続く。
追いかけて来てる!?
それは私の横を並走した。
「名前ちゃん、何で逃げるの? 久しぶりに会えたってのにさ。振り払ったりして、真ちゃん可哀想じゃん」
可哀想って何。

チャリアカーはスピードを落とし、緑間君は縁に手を着き、ひらりとリヤカーを飛び越えた。
その綺麗な身ごなしに、私は目を瞠った。
そして私は、それ以上逃げる事が叶わなかった。

後ろから腕を緑間君に掴まれ、そのままギュッと抱き締める様に羽交い絞めにされる。
「どこに行くつもりかは知らんが、今は冬休みなのだよ」

私は、頭の上から響く彼の声を聞き、愕然として動きを止めた。
冬休み???
昨日まで、私は中学三年の10月を過ごしていた筈なのに。

※※※

公園のベンチで、私は座り込んでいた。
彼等は私を挟む様に、左右に腰かけている。
いくら蟹座のラッキーアイテムだからって、トーテムポール持って来んな。

「先ずは、これでも飲んで落ち着くのだよ」
緑間君は、私に温かい缶入りのお汁粉をくれて、頭を撫でた。
彼の手は温かくて、撫でられてると何故か落ち着いてくる。…?でも、何だか凄く親し気だ。とても、あの緑間君とは思えない。

私は、彼にお礼を言ってお汁粉を飲んだ。中からも温められて、私は初めてほっとした。

「…で?名前ちゃんは、何で俺達を見て逃げたの?」
高尾君は目を細めた。私を見定めようとしている様だ。

『妙なもの見たら、つい逃げたくなるものでしょ。何だか怖いし』
「えーっ?そりゃないっしょー。名前ちゃん、何度これに乗ったんよ!?」
『乗った!?これにっ!!!???無いよ、絶対にない!!!』
「覚えてないとかwww酷いわー」

高尾君の嘆きを余所に、私は緑間君に向き直った。
『…緑間君って、双子とか…そっくりさんはいない、…よね?』
「……一体、何の話をしているのだよ? 俺は妹はいるが、双子はいないのだよ」
『いや…何か、随分思ったより懐っこい人だなと。…もしかして、別人のそっくりさんかな?と思って』

私の言葉に、頭を撫でていた彼の手がピタリと止まった。
「懐っこい…だと? この俺が…???」

緑間君の困惑した台詞を聞いた高尾君が吹き出した。
「ぶはっ!?真ちゃんが懐っこいーwww!? まぁ、そりゃツンデレだけど、名前ちゃん限定で懐っこいよなー!?」
その時、緑間君の拳骨が高尾君の頭に飛んだ。
「ってーな!!何も殴る事ないっしょ!!?」
「煩いのだよ、高尾っ!!!」緑間君が真っ赤になって怒っている。

「…で、何故名前は帝光の服を着ている?」
『だって、私、帝光生だし』
「何を言ってる。お前は秀徳生だろう」
『はぁ?何で? 私は帝光中卒業してないし、まだ受験すらしてないし』
「えっ?」
『…え?』

※※※

「あー…えーと。話を要約してみると、名前ちゃんは中学三年以降の事は、全く覚えていないんだね?」
高尾君は何とも言えない表情で、こめかみを揉んだ。

緑間君は困惑している。
「…それは、記憶喪失、なのか?」
『…と言うより、私からすると未来へ時間を飛び越してしまった、的な?』
「中身だけタイムスリップってかー?」
高尾君は、ぎゃははと笑う。私にとっては笑い事じゃないんだけど。
緑間君はあくまで真面目に考察している。

「量子論的見地から言うと、未来に向かってのタイムトラベルは可能だが、過去に向かってのは否定される。
多次元世界理論では、枝分かれした時空は物理的に孤立し、交わる事はない」
「…分かりやすく言うと?」
「つまり、時間を飛び越してしまった場合ならば、理論的には戻る事は不可能なのだよ」

ちょ…待て。
なら、私は、ここ一年程の記憶が抜け落ちたまま、元に戻らない、と言う事なのか…?

『やだよ、そんなの! 私の青春丸々一年分返せ!!』
まだ三年の修学旅行も運動会もやってないぞ!!…受験は飛び越しても良いけど!
大体、卒業式もやってないのに、高校生とか、実感が沸かないわ。

『そう言えば…私の家族も、いなくなっちゃったんだよねぇ…』
私は心細くなって、しょんぼりと俯く。

「お前の家族なら、仕事で全員海外にいると、前にお前が言ってたと思ったが」
『本当!?』
「ああ」
『良かったー…いるんだ?…起きた時、誰もいなくて…どうしようかと思ったんだ』
私は安心して、へらりと笑った。
緑間君は真剣な表情で、眼鏡のブリッジを上げた。

「…困った事があれば、何でも俺に言うのだよ。…家族がいなくても、その分俺が支えてやる」

『……!!!』

…今の言葉、まるでプロポーズかと思った。
『あ、ありがとう。…緑間君って、親切なんだね!』

くしゅん!
私は小さくくしゃみをした。
「ずっと外で話していると冷えてしまうな」
「…ねえ、真ちゃん。続きはマジバでやらね?」




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