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比翼連理のカミングアウト-1-




Riq.no16  (他の人には秘密に高尾とつきあう)

*夢主は秀徳高校一年・緑間&高尾と同じクラス

※※※

「あの…っ! 俺、苗字さんの事、好きなんだけど。…つ、付き合ってく、ください!!」

ある日の放課後、私は呼び出されて、屋上で高尾和成君に告白された。
実は私も、秘かに高尾君の事は好きだったので、とても嬉しかった。……けど、一つだけ気がかりな事があった。

『……ありがとう。…私も高尾君の事が好き、です』

私の返事を聞いた彼はガッツポーズを取る、が私が続けた言葉は、彼にとって少々残酷なものだったかもしれない。

『…でも、他の人達に内緒にしてくれるなら、お付き合いします』


中学の時、私は、人気者の男子から交際を申し込まれた時があった。
その時、私もやはり彼の事が好きだったので、喜んでOKして付き合ったのだ。
だが、私はかなり浮かれ過ぎていて、周りに対する配慮を怠ってしまった。

その結果、私は女子達から仲間外れにされ、辛い仕打ちを受け、結局彼と別れる事になってしまった。
その事が私を臆病にさせ、高校になっても、中々他人と打ち解ける事が難しくなっていた。

高尾君は、クラスの人気者で、一年にして緑間君と並ぶバスケ部のレギュラー部員で勿論モテる。
私は憧れて遠くから彼を見ているだけだった。
それでも、彼の明るさを見るだけで、元気を貰っていた。

内気な私は、積極的に話しには行けなかった。
けど、一つの切っ掛けがあって、彼とは親しくなっていった。


それは、海常高校に行った時の事。

私は、友人が海常高校のバスケ部にいるので、誠凛との練習試合を観に来ないか?との連絡を貰った。
それで、一人で海常高校に向かっている時に、それと遭遇した。

「ちょ、緑間ぁ!!!てめー、どこに行くんだよ!?」
聞き覚えのある怒鳴り声がした。
「このままでは試合が終わってしまうのだよ! 俺は先に行く」
「置いて行くんじゃねーよっ!!コラーーーーッ!!!これ、どーすんだよ!?」
「お前は後から来い、高尾!」

大通りで渋滞に紛れて、異様に人目を引いているリヤカー……
そこから緑髪の彼は、さっさと降りて、お汁粉缶とカエルの玩具を手に歩道を歩き出して行く。

私は目を丸くして、そのシュールな光景を眺めていた。
他の通行人達の注目も一斉に浴びていた。

高尾君は顔を顰めていた。
「くっそー!!何で俺だけこんな目に…っ!!緑間め、覚えてろ!!!」


それは渋滞していたので、私が歩く速度とあまり変わらないか、少し遅い速度で進んでいた。
…あのままの進み具合なら、着いてもギリギリになるかも…?
そう同情しながら横目に見て歩いていたら、更なる異変に気が付いた。

……あれ、パンクしてる…??
これは泣きっ面に蜂とでも言うのだろうか。
私は、思わず高尾君に駆け寄った。


「っはー。ありがとな、苗字さん。助かったわー」
私は彼と協力して、リヤカーを一時的に路肩に寄せて、自転車のタイヤを近くの店で直した。
……それで試合には完全に間に合わなくなってしまった。

再びリヤカーに自転車を付け直し、高尾君の薦めで私はリヤカーに乗せられた。
「ゴメンなー。結局、苗字さん巻き込んじまってー…試合観れなくなっちまったな…」
『ううん。仕方ないよ。でも高尾君の役に立てたなら、良かったよ!』
私の言葉に高尾君は嬉しそうに、にかっと笑った。
「おう!苗字さんって、良い人だな! この礼はぜってー返すぜ!!」

それから、私は何かと高尾君に声をかけられる様になった。
彼は、どの人とでもすぐに仲良くなってしまえる人で、それは私も例外では無かった。

彼に告られ、両想いなのが分かって、私はとても嬉しかったけど、恋人らしいデートとかは中々出来なかった。

彼は、バスケ部強豪高校のレギュラー。
この秀徳高校は進学校で、勉強もハイレベルだ。
自分から言い出した事だけど、かてて加えて、私と彼は表立って付き合う事は出来ない。

下校は、主に彼は部の人達と一緒で、私と帰るとなると緑間君に知れてしまう。
彼は口は堅い方だし、恋愛事には疎い方なので、あまり心配はしなくても大丈夫と高尾君は言っていたけど。

私は短い時間でも一緒にいたいので、朝練の時間に合わせて、途中まで一緒に登校する様にした。

朝、早く起きなきゃならなくなったけど、これ位は我慢しなくちゃ。自分で言い出した事なんだから。

※※※

「はよー、名前っ!」
『高尾君!』
私は駆け寄って声をかけると、彼は躊躇いがちに手を繋いだ。
繋いだ手から伝わって来る体温と気持ちが温かい。

「…あのよ、俺はもう、名前の事、彼女だと思ってんだからよ…」
『うん…?』
「名前も俺の事、名前で呼んでくんね?」
あー…そうか。……そうよね。
『……和成…和君…で、良いかな…?』
私はこくりと頷くと、隣の彼を見上げた。
こうしていると、何だか照れる。
彼も顔が真っ赤になっていた。

「やべ…っ!可愛い……っ!!」と、声が聞こえたと同時に、私はその手を引かれ、彼に抱き締められた。
『か、ず君…!?』
突然の抱擁に驚き、思わず身を固くしてしまう。
そのまま頭を彼の胸に押し付けると、どくどくと早い鼓動が伝わって来た。

和君も…ドキドキしてくれているんだ…
嬉しさのあまり、私はおずおずと彼の背中に腕を回し、ギュッとしがみついた。
ずーっと、こうしていられたらいいのに…

学校の近くになると、他の生徒達も朝練で登校して来るのがちらほらいるので、私は高尾君と離れなくてはならなくなった。
それでも、偶然を装って一緒にいられる限りは一緒に歩いた。
流石に毎朝やると、バレてしまいそうだけど。

それでも、私は幸せだった。…でも。

「高尾君、3組の前田さんに告られたって」
「えっ!? 前田さんって…あの美人!? で、どーなの!?高尾君は?」
「…それが"好きな子がいるから"って、断られたってー」
「マジか!? …で、誰よ? その好きな子って?」
「それが教えてくれなかったってー」

私の席のすぐ近くで、派手な子達が噂話をしている。

そうだ。周りに内緒にしている、って、こう言う事なんだ。
私は、和君を盗らないで!って、言う事が出来ないんだなぁ。

私は、思わずシャーペンを強く握り締めた。ノートに押し付けられたシャーペンの芯が軽い音を立てて折れた。

「…苗字」
緑間君が私の上から覗き込む。
『えっ、な…何っ?』
「そこは使う式を間違えているのだよ」

緑間君のテーピングに包まれた指が、私のノートの一点を指し示す。
「そこは複素数になるのだよ。四則演算の除法を使え」
『…あっ、ありがとう!』

緑間君はカチャリと眼鏡を直し、暫く私をじっと見つめていた。
私は何だか落ち着かなくて、顔を上げた。
『…何?』
「……いや。…お前は高尾とは最近仲が良いのだな」
『うん。高尾君、優しいから』
「……それだけではない様な気もするが。まあいい。もし、もっと成績を上げたければ、良い参考書を教えてやるのだよ」
私は驚いて彼のエメラルドグリーンの瞳を見つめた。彼は不審気に眉を寄せる。
「…何なのだよ?」
『緑間君も良い人だね! ありがとう!』
私が嬉しくなって笑顔で返すと、彼はフッと口の端を上げ、微かに笑った。


「名前!」
『あ、和君!』
「最近、真ちゃんとやけに仲が良いねー!」と、拗ねた様に軽く頬を膨らませる。

仲が良いって言うのかな…? でも。
『気にかけては貰っているみたいだね。和君と良く話す様になったからじゃない?
さっきも和君と仲が良いな、って言われたから」
「……ふーん」

高尾君は不満気だ。
『…どうしたの?』
「名前は可愛いからなー! 例え真ちゃんでも他の男が近付くのは、彼氏としては面白くねーのよ」
かっ…彼氏…!!嬉しいけど…っ

『和君、声が大きい…っ!』
「まぁ、名前のたっての頼みだから、仕方ねーけどぉ?」
そして、高尾君は私を引き寄せ、耳元で囁く。
「俺としては、正々堂々と名前の彼氏を名乗りてーな!って思うわけよ」
私は俯いた。
『…ゴメンね。…私だって、和君が他の子に告られるのとか辛いよ。だって和君は私の彼氏だもん』
断ってくれるのは分かっているけど、言い寄る子を止められないのは悔しいよ。

『……でも、怖いの。和君人気者だから…』
高尾君は真剣な目をして、私の紡ぐ言葉を聞いてくれる。
「…辛い過去があるって事は聞いたけど。今度は俺が守ってやるって言ってもダメ?」
私は首をふるふると振った。
『和君の事は信頼しているよ。……でも』
あの時の冷たい視線の数々を思い出すと、どうしても身が竦んでしまう。

高尾君は溜息を吐いた。
「…俺も…少し焦り過ぎたかもしんねーな。安心しろよ、名前の嫌がる事はしねーから」
『うん、ありがとう。私も…少しずつ克服する様にする』

私が顔を上げると高尾君は破顔した。
そして、再び私に囁く。
「今度、デートしような!」

私は頬が熱くなるのを自覚しながら頷いた。

※※※

『ええっとー…参考書、参考書…』

今、私は大型書店にいる。
以前、緑間君から聞いた参考書を探していた。
『あった!』
…けど、高い場所にある。が、背伸びすれば届きそうだ。

『よいせ…っ!』
私は背伸びをし、目一杯腕を伸ばす。
その時、伸ばした足の筋にビキッと痛みが走った。
『……っ!!!』

私は、よろけた拍子に本棚にぶつかり、バランスを崩して危うく倒れそうになる。
その時、誰かが素早く駆け付けて、私の肩を支えてくれた。
「大丈夫か?苗字」
『緑間君!?』

「…どうやら、足を痛めた様だな。…立てるか?」
立とうとしたが、足に力が入らなかった。
『…痛い』
緑間君は、はぁ、と溜息を吐き、私に手を差し伸べた。
「掴まれ。病院に連れてってやるのだよ」




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