Second stage-2-
『よし! …これで準備万端!!』
私は、朝早く起きて作った力作を携えて、いつもの通りに学校に行った。
放課後になってから、桐皇学園に行くので、バスケ部には許可を取ってある。
そして真太郎と高尾君と一緒に、お昼にお弁当を食べていたら、教室の入口付近が騒がしくなった。
真太郎は眉を顰めた。それに不思議そうに高尾君が首を傾げる。
「…ん? どったの、真ちゃん??」
「……何だか、騒がしいのだよ」
私はイヤな予感がした。
『……まさか…?』
「名前っっ!!!」
バン!!と、教室の扉が勢い良く開かれたかと思うと、またまた青峰君が立っていた。
「なっ…!? 青峰!!??」
「ええっ……また!??」
真太郎と高尾君が驚きのあまり絶句しているが、青峰君はお構いなしに、先日と同じく教室にずかずかと入って来た。
「キャラ弁持って付いて来い!!!」
青峰君は、茫然としてる私の腕を掴んで立たせる。
『ち、ちょっと…!?』
私は驚いて抗った。
青峰君は面倒だ、と言わんがばかりに舌打ちした。
「何だ、早くしろ」
『だって、勝負は放課後でしょ!?何で今、連れて行くの!??』
「……良のヤツが…」
『…うん?』
「おめーと決着をつけるまで、弁当は出せねえ、と言いやがった!」
『……はぁ!??』
「俺は腹が減ってんだよ!!! だから今すぐに桐皇に来い!!!」
『ちょ、横暴っ!!!』
「おめーが来ねーんなら、無理矢理にでもひっ担いで行くからな!!!!」
『分かった、すぐに行くから落ち着いて…!!』
私は、伸ばされた青峰君の手をすり抜け、慌てて真太郎の後ろに逃げ込んだ。
真太郎は、腕を広げて私を庇う様に前に出た。
「青峰!! 名前に手を出すな、と再三言った筈だが?」
「うっせーな! 俺は今、おめーに構っている余裕はねーんだよ!!!」
真太郎と青峰君はギン!と睨み合った。
空気がピンと張りつめる。教室にいた生徒達が固唾を飲んで成り行きを見守る。
その緊張は突如、破られた。
ぐーきゅるるる〜〜〜
…………
………………
真太郎は「はぁ」と溜息を吐くと、気の毒そうな視線を真っ赤になった青峰君に向けた。
「……事情は分かった。が、名前だけを連れて行かせる訳にはいかん。
俺達も一緒に行くのだよ。高尾! 笑ってないで、担任に許可を取って来い!」
※※※
そして、再び桐皇学園の体育館。
今度は、真太郎と高尾君が一緒だ。
許可済みとは言え、巻き込んで授業を休ませてしまって、申し訳なさが募る。
二人は、自分達の意思だから気に病まなくていい、と言ってくれてはいたけど。
「ああ、苗字さん。また昼にスマンなぁ、そこのお二人はんまで…」
「いいから、さっさと始めろ!」
「青峰っ…!!お前はまた…っ!!!」
若松さんを今吉さんが制止する。
「まぁまぁ…若松。青峰も腹の虫には勝てへんのや。怒らんとき」
「…はぁ、そうっすか…」
若松さんは不承不承仕方なさそうに頷く。
そこへ、桜井君が緊張した面持ちで弁当箱を持って来た。
彼等に示されたテーブルの上に、私も桜井君の弁当箱と並べて自分の弁当箱を置く。
審判は、桃井さんが務める事になった。
「では、勝負です…!!」
桜井君は弁当箱の蓋を取り払った。
体育館にどよめきが広がる。
桜井君のお弁当を見た一同は凍り付いていた。
青峰君がやっと、我に返って抗議をする。
「良っ!! てめー、こりゃ何だぁー!!??」
高尾君は床を叩いて笑い転げていた。
「ひーーーっ!? これ…っ、破壊力パねぇwww!!!」
……それは、青峰大輝の超絶リアルバージョンのキャラ弁。
炊き込み茶飯で上半身を超絶リアルに再現してある。…画力半端ねーw
桜井君はドヤ顔で解説している。
「髪の色には苦労しました。…何せ、おかずに出来る青色の食材は中々無いですから」
髪の色は茄子で形作ってあった。
「…で、目はブルーベリーです!」
…茶飯にブルーベリー…ここまで来ると、味は二の次だな…
それよりも……私は引きまくっている青峰君をチラリと見た。
自分にそっくりなキャラ弁って…食べられるんだろうか…???
『……共食い…?』
私がこそりと呟いたら、青峰君に「誰が共食いだと!?」と睨まれてしまった。
空腹時の野獣は手に負えない。
「こ、これはまた…予想外と言うか、予想以上と言うか…」
諏佐さんも引き攣りながら呟いた。
今吉さんは感心した様に頷いた。
「味は知らんが、クオリティはごっつええわ…さて、では苗字さんの方も拝見と行こうや」
私は、超絶リアルとは行かないかもしれない。
蓋を開けて、見える様に置いた。
「こ…これは…っ!?」
桜井君が驚いた様に呟く。
それよりも、桃井さんの喰い付きが良かった。
「きゃーーーーっ!!!!可愛い〜〜〜!!!テツ君に似たワンちゃんーーー!!!」
私が作ったのは、[テツヤ二号]がバスケボールを抱えているキャラ弁だった。…別に超絶リアル、と言う訳ではない。
私の方のは、水色の目だけが難関だった。
『…この目は、かき氷シロップに豆を浸しました』この際、豆の味は二の次だ。
「へー…ミートボールをバスケボールに見立ててあるんだな。……美味そうじゃね?」
青峰君が目を輝かして覗き込んだ。
真太郎は、眼鏡のブリッジに手をかけ、口の端で微笑んだ。
「……今日の蟹座のラッキーアイテムは[白黒の犬を模った物]なのだよ。名前は人事を尽くした」
そう言う真太郎は、しっかりと白黒の犬の縫いぐるみを抱えていた。
「さて…でも出来そのものは、桜井の方が上やと思うが…」と今吉さんが言った時。
「スミマセン!」
桜井君の声が響いた。
『……えっ?』
「…は!? 良、何やってんだ?」
青峰君もポカンとする。
「スミマセン!! あの時はボールをぶつけてスミマセン!!」
桜井君は、私の作った弁当の二号に向けて頭を下げまくっていた。
「スミマセン! 生きててスミマセン!! 羽虫でスミマセン!!!」
「うっぜーーーっっ!!!!」
「ウザくてスミマセーーーン!!!」
今吉さんが溜息交じりに言う。
「……今回は桃井の言によると、勝者は苗字さんや。…あざといのう。だが、そんな所が俺は好きやで」
『…え…っ?』
花宮に妖怪とまで言わせた今吉さんに"あざとい"と評価され、私は内心でかなりのショックを受ける。過大評価もいい所だ。
『いや滅相も無い…おは朝のお告げの通りにしただけですよ。あざといなんて…とてもとても……』
「おは朝やと?…ごっつ当たるっつー噂やな。……俺もチェックしてみよか」
今吉さんの言葉に青峰君は目を剥いた。
「はぁ…!? マジかよ!!???アンタまでラッキーアイテム持つんか!!?? シュール通り越してホラーだぜ!!
俺は、アンタが狸の信楽焼きとか持つのなんて見たくねーからなっ!!!」
そこへ真太郎がずいっと割り込んだ。
「…貴方の星座は?」
「六月三日の双子座や」
答えを聞いた真太郎は、眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせた。
「なら、今日の双子座のラッキーアイテムは……!」
「だぁーーーーっっっ!!!緑間、テメェいい加減にしろーーーーっっっ!!!!!」
長閑な昼下がり、体育館に青峰君の怒号と、高尾君の爆笑した声が響き渡って行った。
全てが終わって帰る時、桜井君は、私に声をかけた。
「苗字さん、僕は…間違ってました! …ただリアルにすれば良いと…思っていました。…でも」
そこまで言ってから、彼はフッと柔らかに微笑んだ。
「苗字さんが勝ったのは偶然なんかじゃなくて…桃井さんや、食べる青峰君の気持ちを汲んだから、だと思うんです。
だから僕も、人の心を打つ様なキャラ弁を目指して、もっともっと精進します!」
私は微笑んだ。
『あ…うん、頑張って…!』
桜井君なら、きっともっと凄いキャラ弁が作れる。
「次は負けません…!!」
『…え? は!? 次って…!??』
「僕の方が上手いもん!!!」
いきなり子供っぽい口調に唖然とした私に、からからと今吉さんが笑って付け加える。
「ははw 桜井は負けず嫌いだからのー」
……決着は、まだまだ付きそうにない。
END
※※※
杏梨様
楽しんでいただけたでしょうか?
「恐るべきキャラ弁の桐皇篇」とのお題をいただきました。
あのお話のラストがこの様な形で、また復活するとは…私もびっくりしています。
あのお話共々、この話も気に入ってくだされば嬉しいのですが。
謝りキノコ、もとい桜井は、アニメエンディング33話の差し替えシーンで、
二号にボールぶつけて謝っていたみたいなので、エピソードを入れてみました。
青峰の自由奔放さに、書きながら何度も振り回された感がありましたが、書いていて、とても楽しかったです。
楽しいリクエストを、ありがとうございました!!