12月の妖精-1-
Riq.no.20 (紫原落ち 黒子幼馴染で紫原が黒子に嫉妬)
※夢主設定 帝光一年生 男子バスケ部三軍マネ 黒子の幼馴染
図書委員 趣味は、お菓子の新商品開拓とお菓子作り
※※※
『えっ!? 居残り練?』
「はい。…それで、これから名前さんとは、一緒に帰れなくなります」
私の幼馴染の黒子テツヤは、いつも私と一緒だった。
保育園から小学校、そして今は同じ帝光中の一年生だ。
クラスも同じで、委員も同じで…バスケ部も一緒。
彼は三軍の部員で、私は三軍のマネ。
「もう、付き合っちゃいなよ」と友人達には笑われるけど、私とテツヤはそんな仲ではない。
強いて言えば…姉弟みたいな感じかな。
『居残り練習か…なら、私も残ろうかな?』
「……そこまで僕に付き合わなくていいですよ?」
『私ね、頑張っている人見るの好きなんだ。何だかわくわくするんだよね。…邪魔なら帰るけど』
テツヤは、私の言葉に微笑んだ。
「邪魔じゃないですよ。…むしろ手伝ってくれたら有難いです」
『なら、決まりだね!』
それから私は、ほぼ毎日の様にテツヤの練習に付き合った。
『今日は、私が日誌を書く当番なんだ。テッちゃんは先に練習してて』
「分かりました。先に行ってます」
テツヤは幼い頃は、私の事は"名前ちゃん"と呼んでいたが、長じるにつれ"名前さん"と呼ぶ様になっていった。
私は、テツヤや荻原君と一緒に遊んだりしているうちに、バスケを観るのが好きになった。
私は日誌を書き上げた後、急いで第四体育館に足を向けた。
「うわぁーーーっ!!!」
突如、体育館から悲鳴が聞こえた。
『なっ…何っ!?』
私は慌てて飛び込んだ。
『あれ…は…青峰君……?』
目に飛び込んたのは、しゃがんで頭抱えて、涙目で震えている青峰君だった。
彼は、初っ端から一軍に行った有名人の一人。何で彼がこんな所に…??
青峰君とテツヤは、すぐに意気投合した。
それからは、私とテツヤと青峰君とで居残り練習を続ける事になった。
※※※
今日は学校も練習もお休み。
『今日はまいう棒の新作、ビーフストロガノフ味が出る筈なんだー!』
私は、お菓子の新商品を試すのが大好きで、よく新商品を仕入れている最寄りのコンビニに立ち寄っている。
今日もそれで足を向けたはいいが……
『え……っ!?』
その新商品は売り切れていた。
私は、慌てて他所のコンビニを周るが、どこも売り切れていた。
どうやら、アイドルと提携した企画の応募券が付いていて、ファン達が買占めに走った後らしかった。
『……楽しみにしていたのに』
私は仕方なく、かなり離れたコンビニまで足を運んだ。
『…っ!!!あった!!!』
残っていたのは、最後の一袋。
私は、それに手を伸ばしたが、同時に、その袋をわし掴んだ大きな手があった。
『……えっ!?』
その手の持ち主を見た私は絶句した。
『む…紫原君!?』
彼は私を見て、のんびりとした口調で尋ねる。
「……これ、買うのー?」
『………あっ!?』
私は慌てて手を離した。
彼は、そのままその袋をレジに持って行った。
私は一つ溜息を吐き、諦めて別の店を探すべく店の外に出た。
この近辺、全滅だぁ…
私は悄然と肩を落として歩いていた。
「……ねぇ」
『……』
「ねぇってば!」
私は後ろから肩を掴まれ、驚いて振り向く。
「……食べるー?」
彼は、私に一本のまいう棒を差し出していた。
それが、私と紫原敦との出会いだった。
『紫原君、いるかなー?』
私は、紫原君のクラスの教室を覘いた。
彼は目立つからすぐ見付かるかと思ったら
『……いない…?』
「誰がいないってー?」
頭の上から、のんびりとした声が降って来た。
「あれ〜…君……まいう棒の…」
『あっ!?紫原君!??』
彼は丁度私の真後ろにいた。
「何〜?」
『あっ、あの…っ! これ…!!』
私は彼に手作りのカップケーキを差し出した。
彼は嬉しそうに目を輝かせた。
「くれるのー? ありがとー」
『…っ、まいう棒のお礼だから…っ! じゃ』
私は逃げる様に踵を返した。
※※※
今日は、秋季昇格試験の発表の日だ。
私は、この日は日直で少し遅れて体育館に着いた。
テツヤはいなかった。
彼は割と影が薄い子だから、見落としたのかと探しても、三軍の中にはいなかった。
……もしや、昇格出来て二軍に行ったのだろうか?
それでも、私には何の連絡もないのが不自然に思われた。
私が体育館に一人残っていたら、青峰君が来た。
彼に聞いたら、二軍の体育館には明かりも消えて、誰も残ってないとの事だった。私は胸騒ぎがした。
「……すみません」
か細い声に振り向いたら、テツヤがいた。でも、彼はいつもの練習着ではなく、制服姿だった。
彼は、私達にバスケ部を止める事を告げた。
青峰君はテツヤを引き止めようと説得していた。
「諦めなければ、必ず出来る様になるとは言わねぇ。けど諦めたなら何も残んねぇ」
「青峰」
突然かけられた声に驚いて、私は振り向いた。
赤司君と緑間君、そして…紫原君が立っていた。
赤司君に人払いをされ、私と青峰君はテツヤを置いて体育館を出た。
「ねえ、君もバスケ部なの〜?」
紫原君から声をかけられる。私は頷いた。
『うん。三軍のマネやってるよ』
「……三軍のマネやってて、面白い?」
『うん。頑張ってる皆を支えるのは遣り甲斐があるよ』
「試合には出られないのに? 一軍のマネになりたい、とか思わないの〜?」
『そうだね、テッちゃんがいなくなるのは少し寂しいかな。でも、私は今のままでも十分』
私は自分の力量が平凡だと分かっている。努力はするけど、高望みはしない。
そんな私に、彼はフーンと鼻を鳴らすと、私の名前を聞いて来た。
そう言えば…碌に名乗ってなかったっけ。
青峰君は、私達をきょとんとした顔で見つめていた。
「おめーら…って、知り合い?」
『新作のまいう棒くれた』
「カップケーキ貰った」
「…お菓子繋がりかよ!?…まぁ、らしいっちゃらしいけどな」
※※※
テツヤは冬に昇格試験に合格し、一軍に上がった。
私は休日にも関わらず、一軍の練習をしている第一体育館に来ていた。
実は、テツヤのお母さんから忘れ物を届ける様に頼まれたのだ。
『…すみませーん…』
恐る恐る戸口近くの人に声をかける。丁度近くにいた青峰君が振り向いた。
「おっ、名前じゃん。どーした?」
『あの、青峰君、テツヤに忘れ物届けに来たんだけど』
「テツー! 忘れもんだってよー!」
「聞こえています。すみません、名前さん。ありがとうございます」
『お弁当、いくら小食でも食べないと保たないよ。テッちゃんはもっと身体作らないと。おばさん心配してたよ』
「違ぇねー…おま、その弁当のサイズ…!? 小さくね? 女子かよ!」
「僕には、これで丁度いいんです」
『…テッちゃんは私よりも食べないもんねー…』
青峰君は、私の胸をしげしげと見る。
「……おめーは、もっと別の所が育った方がいーんじゃね?」
『青峰君っ!!どこ見てんのよ!?』
虹村主将から「おめーら、いつまで駄弁ってる!? 練習に戻れ!」と怒られ、青峰君は「やべっ」と呟いて肩を竦める。
そんな私達を紫原君はじっと見ていたが、私達は気が付かなかった。
※※※
四時限目の授業が終わり、私は教室でテツヤとお昼を食べていた。
私達は、最近読んだ本の情報を交換しながら食事をしていた。
両方とも本好きなので、本談義にも熱が入る。
ガタン!
不意に横から聞こえて来た音に顔を上げると、紫原君が机を付けて座ろうとしていた。
「……綽名ちんと黒ちんってさー、仲良いよねー?」
「幼馴染ですから」
『青峰君と桃井さんみたいなもんよ』
「フーン…ところでさ、地域限定のまいう棒貰ったんだけど、いる〜?」
『えっ…!?どこの?』
「秋田のいぶりがっこ味ー」
「……それ、美味しいんですか?」
「黒ちんは別に要らないでしょ〜?」
『食べてみたいっ!!』
私の喰い付きに気を良くしたらしい紫原君は、ならあげる〜と、私にいぶりがっこ味をくれた。
珍しいお菓子に大喜びした私に、紫原君は満足したらしく、何故か頭を撫でて来た。
テツヤは、そんな私達をじっと見つめていた。
※※※
『よいしょ…っと!』
私は、本の束を抱えて階段を下りていた。
社会科の資料で使った本を図書室に返す様に、教師から頼まれていた物だ。
それにしても、この本は数が多いし、とても重い。
私は足下が覚束ない状態で、恐る恐る降りて行く。
『うわっ!?』
本で視界が塞がり、階段を踏み外し、あわや転げ落ちるかと思った時、不意に両脇を後ろから抱えられた。
「大丈夫〜?」
紫原君だった。彼は、私の両脇を抱え上げたまま、階段を降りて行った。
『ちょ…っ!? 本拾わなきゃ…下ろして!?』
「え〜? 拾うの面倒くさー」
『いや…だから私を下ろしてくれれば拾うから!?』
やっと下ろされた私は、散らばった本を回収する。と、それは丸ごと紫原君に取り上げられた。
『…あの?…ありがとう』
「綽名ちん、ヤジロべーみたいで面白いけど、また落ちるよー?」
『……ヤジロべー…って』もっと他に言い方ないのか?…彼なりの親切なんだろうけど。
「また、綽名ちんのお菓子、食べたい〜」と強請られて嬉しくなり、また作るよ、とつい約束してしまった。
お菓子目当てでも嬉しいなんて…私も大概彼に甘い。
「ね〜、今度の休日、何か予定あるのー?」
私は、彼の質問の真意が分からなくて、首を傾げた。
頭の中でスケジュール表を広げてみる。…そう言えば、クリスマスが近い。
買い物に行かなきゃ。紫原君にも世話になってるし、クリスマスプレゼントを渡せたら良いな。
『予定は…入ってるね』
そう答えると、彼はむっつりと不機嫌になり、黙り込んだ。
『……???』
何か悪い事、言っちゃったかな?
彼は、そのまま無言で図書室まで歩いていった。
私はその間、落ち着かなかった。……休日の予定の話しただけだけど。…何で?
それでも、彼に運んでくれたお礼を言うと、「別にー偶々暇だっただけだしー」と、顔をふいっと背けられてしまった。
※※※
久しぶりの休日、私はテツヤに頼んで、一緒にショッピングモールに行った。
私は、まだ紫原君の事が良く分かってないので、私よりは詳しいテツヤに相談したかったのだ。
「紫原君なら、名前さんの手作りケーキでも、あげれば喜ぶんじゃないですか?」
『手作りケーキは勿論だけど、それ以外にも何かあげたいっつーか…』
「……随分、彼に肩入れしますね」
『えっ、そうかな? 結構色々親切にして貰ったから。でも、テッちゃんと青峰君にも勿論あげるよ!』
「それは…ありがとうございます。青峰君もきっと喜びますよ」