ときめき☆学園love・キセキ攻略編-2-
さて、今日は、好きなアニメのドラマCDが出る日だ。幸いにも練習も休み。
私は、ほくほくと画材店に寄った後に、アニメグッズの専門店に予約したCDを買いに行った。
でも、そこでばったりと、思わぬ人と出合わす。
『……!!!何で緑間君がいるの!?…実は隠れアニメオタクとか?』
「ちっ、違うっっ!!蟹座の明日のラッキーアイテムが、"アニメキャラのクリアファイル"なのだよ!!!」
『そ…そうか。びっくりした〜』
つか、一種類ずつ何枚買っているのよ?
緑間君は、眼鏡をかけ直しながら、逆に訊いて来る。
「苗字、お前こそ、この様な物が好きだったのか?…その様な話は全く聞かなかったが」
私は慌てて言い繕う。
『いや、従妹に頼まれてね。従妹ん家は田舎で、この様な物が中々手に入らないんだ。これ、通販だと特典が付かないんだって』
「そうなのか。でも、お前は絵は描くんだろう?」
緑間君の追及に私の顔が引きつる。
『…何でそう思うの?』
「その紙袋は、画材店のだ。絵を描く道具を買ったのではないのか?」
私は、先日の話し合いの内容を思い起こし、さり気なく紙袋を後ろ手に持ち替える。
『いやー…画材店ったって、他の物も売ってるじゃん? ファイルとか封筒とかの文房具だって』
「……そうか。苗字」
『え?』
私が緑間君を見た時、彼は携帯を構えていた。
『…何なの?』
「…今日出会った異性の友人の写メを撮れ、とおは朝で言ってたのだよ。そのままそこを動くな」
彼の携帯からシャッター音がし、ポカンとした私の間抜け顔が撮影されて納められた。
「今日の待ち受けにしとくのだよ」
『何それ…恥ずかしいから止めてよ。…彼女でもないのに』
私は這う這うの体で、その店を後にした。
でも私は、緑間君がその足を、さっき寄った画材店に向けた事には気が付かなかった。
※※※
-数日後、私は再びミーティングルームに呼び出された。
赤司君は、全員の顔を見渡すと、ゆっくりと口を開いた。
「皆を呼び出したのは他でもない。…例のゲームに関して、先ずは皆の調査結果を聞こうか」
私はびくりと肩を震わせた。
私は、赤司君から言いつけられた、ゲームの内容はまだ全て書き出してはいない。
大まかな基本ルートも、最初だけで、あまり手を付けていなかった。
消極的なサボタージュ、と言うヤツである。
最初に口火を切ったのは黄瀬君だった。
「あー…赤司っち。ゲームを教えてくれたファンの子に聞いて、それから辿ろうとしたんスけど、
三人目の子がどうにも口が堅くて…教えられない、との一点張りだったっス」
「役に立たねーな。…黄瀬の色仕掛けでもダメだったのかよ?」
「…人聞き悪い事言わないで欲しいっス、青峰っち。その子は、別に俺のファンじゃなかったっスからね」
私は内心でホッとした。
続編を希望する女子は意外に多く、その為の箝口令が広まっているみたいだった。
って、それ、作らなきゃ駄目って事か!?
「まぁ…さつきのヤツも、あまり調査に乗り気じゃなかったみてーだからな 」
桃井さん、存外に黒瀬(子)ルートが気に入ったんだな。…彼女を敵に回さなくて済んで良かった。
「…乙女ゲーマーの敵、とまで言われてしまったっス…」
黄瀬君はしょんぼりと肩を落とす。
私以外にも、二次元>三次元が帝光にいるんだな。ありがとう!同好の士!!!
私は笑いを噛み殺した。
緑間君の報告が始まった。
「赤司、帝光中学の生徒のは、漫研、アニメ同好会、美術部、文学部を回って、リストを作成した。
それと、その部以外でも、絵が描ける生徒と関係者をファイルにしておいた」
ノートパソコンにメモリーカードを差し、ファイルを表示させる。
「特に少女漫画、アニメ系のゲームに近い絵柄を持つ者、女生徒を中心に絞った結果がこれだ」
私は、何気なく横で見ていて、スクロールしたある場所を見て凍り付く。
「苗字名前…?」
何で…?私の名前が入ってるの??
私は愕然として緑間君を見た。
彼も私を見ていた。視線が真っ向から絡み合う。
「苗字、お前とアニメグッズ専門店で会った日、確か画材店の袋を持っていたな」
あの時、私は誤魔化したけど、彼には通用しなかったのか。私は渋々認めた。
『……持ってたけど』
「あの後、その画材店に行き、お前が買った物を聞いたが、上質紙とペン先と漫画用のインクと面相筆と、多色水性ペンのセットだった。…説明してもらおうか?」
その時、脳裏に閃いたもの。
『…まさか、あの時、私の写真を撮ったのは…!?』
「それを画材店の店員に見せて聞いたのだよ。絵を描くのか、と聞いた時に、何故否定した?」
確か、あの時、私は、はっきりとは否定しなかった筈だ。
『私は、絵を描かない、描けないとは、一言も言った覚えはないけど?』
「確かにな。でも、俺の質問にも答えなかったな。何故だ?」
私は、緑間君の追求に、苛立って睨みつけた。
『こうなる事が分かっていたからよ。…私の立ち位置、絵を描く事…貴方達の情報だって、比較的手に入れやすい。
考えてみれば、私ほど条件が整っている人物はいないわ。
誰が、怪しまれる事を承知の上で、全てを曝け出せるものですか』
「それでも、お前は候補の一人でしかない。…黙っていた事で、可能性は増したがな」
それまで黙っていた赤司君が、初めて口を開いた。
「皆、これを見てくれ」
赤司君がノートパソコンに出したのは、アプリケーションソフトだった。
「何だこれ…?乙女ゲームつくーれ……??」
青峰君が興味深々で覗き込む。
赤司君が出したのは、私がゲームを作るのに使用した、乙女ゲーム専用のプログラム作成ソフト。
何で彼がこれを…?
「このゲームは、これを使って作成されたものだ。俺は、さる所からユーザー情報を手に入れたんだが…
このユーザーの中で、一人だけ帝光生がいた」
「えっ!?…まさか!?」
そこにいる皆が、私を一斉に見た。
紫原君ですら、お菓子を食べる手を止めてしまっている。
ユーザー情報には、住所、氏名、生年月日、メルアドが表示されていた。
即ち、苗字名前の名前が。
『………っ!!!』
私は、席を立ち上がった。
瞬時に出口に向かって走り出す。
だが、瞬発力では部内一、全国屈指の青峰君に回り込まれ、行く先を塞がれた。
「逃がすかよ!!」
さっきまで退屈そうにしてたのに、身体使う時は生き生きとしている。
私は方向を変え、のんびりとお菓子を齧っている紫原君の横をすり抜けようとした。
が、通りすがりに紫原君に素早く腕を掴まれ、強引に引き寄せられたかと思うと、ぐんっ!と視線が床を向く。
「綽名ちん捕まえた〜」
『やだ!!離してっ!!!』
私は、紫原君の肩に担ぎ上げられていた。
多少暴れても、腕にガッチリ押さえつけられて、びくともしない。
「俺達から、逃げられると思っているのか? 無駄な事はよせ」
緑間君が、さり気なく私の後ろに立つ。
「それでは、話を聞かせて貰えるかい?苗字さん」
赤司君の、柔らかだが迫力のある微笑に、私はこれ以上の抵抗を断念した。
※※※
『ご…ご免なさいっ!!だから、鋏をちらつかせるのは止めてくださいっ!!!』
「…鋏は冗談だ。苗字、君は、うちの系列のゲーム会社の企画に、シナリオ作家として加わる気はないかい?」
『……!?はぁ!???』
私は、突拍子も無い提案に耳を疑った。
ゲーム会社まであんのか?…赤司財閥、恐るべし。
「これ、意外と面白えなw…うげっ、黄和田のイベントが出たぞー!?」
「イヤそうに言うのは酷いっス、青峰っち!!…赤城の次は、緑川を攻略するっス!!」
「止めろ、気色悪いっっ!!!」
「まぁ、そう言わずに、緑間もやってみろよw 食わず嫌いは良くねーぞ?」
「……む」
「主人公の名前を入力してあげるっス!真太郎の名前を取って…真子、なんてどうっスか?」
「……(怒)」
「気に入らないなら、真美、にでもするっスか?」
「そんなこっちゃないのだよっ!!!」
「俺、敦子にする〜」
気が付いたら、青峰君と黄瀬君が「ときめき☆学園love」やっている……って、紫原君まで!!??
あああ…何!?、この羞恥プレイ!??
私は机に突っ伏した。…もう、どうにでもしてください…
そんな私に、緑間君が近寄って来て声をかける。
「……苗字」
『何…緑間君?』
私はもう、疲れたよ…
彼はクイっと眼鏡を上げて、鋭く目を光らせ、画面を指し示した。
「……ここの、隠しキャラの出し方が、どうしても分からないのだよ…っ!」
緑間、お前もかっ…!!?
END
※※※
のこぴの様
お楽しみいただけましたでしょうか?
「キセキの皆と謎解き」(探し物的な)と言うテーマをいただきました。
でも、これでは夢主が謎そのものになってしまいましたね。
刑事コロンボの犯人役的な感じ…?
思ったのと全く違ってしまったら、すみません。(って、まず違うと思う…)
話のアイデアと構成が難しかったけど、書いていてとても楽しかったです。
楽しいリクエストを、ありがとうございました!!